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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

自分が放った刺客に左遷させられた信州松代藩の執政を描いた短編時代小説

江戸時代に信州松代藩という藩がありました。藩祖は真田幸村の兄の真田信之です。

江戸時代中期、松代藩の執政であった原八郎五郎邸に密かに呼び出された児玉虎之助は、恩田木工(おんだもく)の密使平山重六を斬り、懐中から密書を奪うように命じられます。

池波正太郎さんの「賊将」に収録されている短編小説「刺客」は、このような形で始まります。原八郎五郎は、なぜ、児玉虎之助に刺客を命じたのでしょうか?

逼迫した藩財政の立て直し

松代藩は、以前は裕福な藩でしたが、真田信安の代になった時には逼迫していました。

幕府は各藩に様々な工事を命じて、資金を貯め込むことを防止していました。もちろん、松代藩も同じように幕府から命じられた工事に多額の資金を使っていたので、藩の財政が傾いていました。

そんな中、原八郎五郎が殿さまの真田信安に進言して千曲川治水工事を行い、見事成功させます。工事の費用も、原が懸命に奔走し、幕府から借りることができたので、藩内での彼の評価は一気に上がりました。


それからの原八郎五郎は、倹約を主張する老臣たちをしり目に、信安とともに遊興三昧の日々を送ります。その羽振りの良さに尻尾を振って原に着いていく家臣たちが多くなりました。また、原は豪商たちと結びつき賄賂も盛んに横行するようになりました。

密使を暗殺し密書を奪う

原八郎五郎の金使いの荒さから、恩田木工は、帳簿のすべてを家老職一同に発表すべしと主張しますが、原は、それを突っぱねます。そういったことがあり、両者の関係は険悪になっていきました。


原が、児玉虎之助に恩田木工の密使平山重六を斬るように指示したのは、彼にとって不利な情報を江戸藩邸にいる藩主信安に告げ口されることを阻止するため。

虎之助は、他2名とともに平山重六の後を追い、彼を斬って密書を奪い取ります。しかし、平山の懐中には、密書の他に虎之助の昔の恋人で自殺した以乃の遺書もありました。その遺書を読んだ虎之助は、他2名の刺客を斬った後、原八郎五郎のもとへ戻ります。



その後、原八郎五郎は信安から懲罰を申し渡されました。そして、児玉虎之助は、恩田木工に暇乞いし、浪人の身となります。


児玉虎之助が、以乃の遺書を読み、原八郎五郎を裏切った理由は何だったのか?

物語の中で、たびたび描写される回想場面をじっくりと読むと、児玉虎之助の気持ちの変化を理解することができますよ。

賊将 (新潮文庫)

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