ウェブ1丁目図書館

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劣化しないためには学び続けるしかない

日本経済に活力がなくなったと言われるようになってから、随分と長い時間が経過しています。GDPは伸びているのに景気が良くなった実感を感じられないとの意見もよく聞きます。

モノやサービスを造ったり売ったりする主体は企業ですから、日本経済に活力がなくなったのは、日本企業に元気がなくなったからと言えそうです。では、なぜ日本企業に元気がなくなってきたのでしょうか。

識者によって様々な理由が提示されていますが、その中で組織の劣化が挙げられることがあります。

特定の価値観を持ったオッサン

組織が劣化する要因の1つに組織を率いているリーダーの劣化があります。

イノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発を専門とする山口周さんは、著書の「劣化するオッサン社会の処方箋」の中で、以下の特徴を持った人物像をオッサンと定義しています。

  1. 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
  2. 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
  3. 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
  4. よそ者や異質なものに不寛容で、排他的


上記4つは、日本人にありがちな特徴のように思えます。そうすると、日本の組織は、常に劣化する運命にあるのでしょうか。

必ずしもそうとは言えません。上記に当てはまらない人もいるからです。そういう人は一流と考えられますが、日本で多いのは、上記4つの価値観を持った二流、三流のオッサンなので、組織は長く続くほど劣化していきます。

山口さんによれば、一流は一流を見抜くことができますが、二流や三流が一流を見抜くことはできないとのこと。そのため、経営トップに一流が就いている時には組織は元気ですが、ある時に二流にバトンを渡してしまうと、後は組織が衰退していくだけとなります。オッサンの4要件を満たしたリーダーでは、組織が発展しにくいことは容易に想像できるでしょう。

教養と実学の狭間で

経営トップにオッサンが就くようになって、現代の日本企業に元気がなくなったのなら、なぜ、オッサンが経営トップになってしまったのでしょうか。

結論を一言で述べると、時代の流れとなります。山口さんの言葉では、「大きなモノガタリ」となります。

戦後、優れた若い経営者が企業を引っ張り、高度成長へとつながっていきました。この時代の人々は教養の習得に価値を置いており、学生は教養書を読むことに力を注いでいました。

しかし、教養世代は1970年代に絶滅します。

一方、1990年代以降に社会人となった世代は、バブル崩壊の影響を受けたこともあり、仕事に直結する知識や技術、すなわち実学の習得に励むようになります。様々な資格取得に時間を使い、即戦力となれるように努力する人が多い世代と言えます。

では、教養世代と実学世代の間の世代はどうでしょうか。

この世代は、20代や30代といった若い時にバブルを経験しています。バブルという大きなモノガタリの中では、教養を身に着けることに時間を費やすより、時代の波に乗った方が大きな利益を得られます。とりあえず、大学を出て就職すれば、それなりの収入を得られた時代だったので、教養世代や実学世代よりも、何か知識や技術を身に着けようとする人が少なかったのです。

この世代を山口さんは、知的真空世代と呼びます。現代の日本企業に元気がないのは、知的真空世代の中でオッサンの4要件を満たした人が経営トップに就いているからだと言えそうです。

人生100年時代では学び続けることが大切

しかし、バブルを経験した人が経営トップに就いたからと言っても、全ての企業に元気が失われているわけではありません。日本企業の中にも元気な企業はあります。

人生100年時代では、25年ずつ4ステージに人生を区切り、その中でセカンドステージに多くの経験を積むことが大切だと山口さんは述べます。セカンドステージでの仕事の経験は、人材育成にとても重要なことです。だから、企業は若手に仕事を任せなければなりません。

また、働く側も、常に学び続けることが大切です。

汎用性の高いスキルや知識などの人的資本、信用や評判といった社会資本の両方を厚くすることで、様々な職場で働きやすくなります。これこそが、劣化したオッサンにならない秘訣です。

最初に就職した会社の仕事しかできないとなると、その会社でずっと働き続けなければなりません。もしも、経営トップが違法な行為を行おうとしている場合、職を失うことを恐れて意見を言えなくなります。そして、会社を辞める決断もできなくなります。

そうすると、自分もオッサンの4要件を満たして生きていかなければならなくなります。


自分が劣化したオッサンにならないためには、「謙虚な気持ちで新しいモノゴトを積極的に学び続ける」ことが大切だと、山口さんは主張します。

はっきり言って、いつも同じことをして、気楽に生きていきたいというのが本音です。学び続けることは面倒だし、疲れますし、お金も時間もかかります。

しかし、変動が激しい現代社会では、なかなか気楽に生きていくことはできません。人生100年時代では、どのステージでも、学び続けることを要求されます。