ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

他人の行動を理解するために自分の価値観を捨てる

人の行動は、傍から見ると、時に不可思議に思えることがあります。

「なぜ、そんな誰にでも失敗するとわかることをするのか」
「なぜ、そんな手間のかかることをするのか」
「なぜ、もっと得する方法があるのにやらないのか」

でも、本人は、その行動をするべき理由があるからしているのでしょう。また、もっと良い方法があっても、その方法を知らないから今の行動をしているということも考えられます。

他人の行動に疑問を持つことは、よくあります。しかし、なぜ、そのような行動をするのか、理由を知ろうとする人は少ないと思います。いや、どうやって、理由を探り出すのか、その方法がわからない人が多いと言った方が良さそうです。

現場で行動観察

他人が、なぜ、その行動をするのか、理由を知りたいのであれば行動観察をしなければなりません。

2005年から行動観察ビジネスをしている松波晴人さんは、ニューヨークのコーネル大学の大学院に留学している2年間に恩師から2つのことを徹底されたと著書の「ビジネスマンのための『行動観察』入門」で述べています。

その2つとは以下のことです。

  1. 必ず現場に行って、人間の行動を観察すること
  2. 根拠のあるソリューション(問題解決法)を提案すること


多くの人は、他人の行動に問題があると感じた時にソリューションを提案しますが、そこに根拠があるかどうか疑わしいことがあります。根拠とは、単なる勘ではなく、科学的にわかっていることを提示することです。しかし、ソリューションを提示する時、しばしば、自分の勘を相手に提案していることがあるように思います。

では、なぜ、根拠のあるソリューションを提案できないのでしょうか。

それは、現場に行って人間の行動を観察していないからです。

ソリューションの提案で多いのは、話を聴いて「こうした方が良いよ」ということだと思います。しかし、話を聴いただけでは、問題の本質がわからないことがあります。だから、実際にその人の行動を観察して、どのあたりに問題があるのかを自分の目で確認することが大切です。

自分の価値観は捨てる

また、他人にソリューションを提案する場合、自分の価値観を基準にすることも多いです。

しかし、自分にとって好ましいことが、他人にとっても好ましいとは限りません。だから、ソリューションの提案の際は、自分の価値観を捨てなければなりません。

前掲書では、あるワーキングマザーの調理中の行動観察の際に調査員が、食材の皮の処理の仕方が不潔ではないかと質問した例が紹介されていました。不潔と感じるのは、その調査員の価値観です。そして、そのような質問の仕方をすると、観察対象者は自分が批判されたように感じてしまい、本音を語りにくくなります。

だから、行動観察の際は、観察対象者の価値観を最大限に尊重し、質問の仕方も中立的でなければなりません。先の例であれば、「なぜ、皮をそのように処理するのですか」と質問するのが理想的です。

他のワーキングマザーの行動観察では、スーパーに買い物に行った際に「なぜ、このスーパーを選んだのか」を質問しました。すると、そのワーキングマザーは、「日曜日は卵が安くなると毎週決まっているから」と答えました。

卵が安売りされているかどうかは、チラシを見ればわかることです。でも、ワーキングマザーにとっては、チラシを見る時間も取れないので、曜日で何が安売りされるか決まっている方が買い物をしやすいのです。もしかしたら、他に卵が安くで買えるスーパーがあったかもしれません。でも、そのワーキングマザーは、チラシを確認して買い物に行く時間的余裕がないから、安売りする商品を曜日で決めているスーパーの方が使い勝手が良かったのです。

このようなことは、やはり、現場で行動観察するからわかることです。頭の中で考えたことをSNSで発信しているオッサンの文章が、なんらの共感も得られないのは、現場を見ていないからなのでしょう。実際に撮った写真1枚を貼っただけのツイートが共有されやすいのは、そこに現場を知るための情報が写っているからではないでしょうか。


他人の行動には、理解しがたいことがあります。しかし、それは、自分がその人の行動をよく観察していないからかもしれません。そして、おかしなことをするなと思った時は、自分の価値観で人の行為を評価している時です。

他人の行動に疑問を持った時は、まず観察し、そして中立的な質問をしてみることです。

価値観は、時に誤解を生み出します。自分の価値観を横に置いて行動観察することで、人から、より多くのことを学べるのではないでしょうか。