ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

消費拡大のためには若者が働きやすい職場作りが必要

景気が良くなるためには、消費の拡大が必要だと言われています。

材料を買ってきてモノを作る。作ったモノを売り代金を回収する。再び、材料を買ってきてモノを作って売り代金を回収する。

この製造と販売の繰り返しにより、資金の循環が起こります。消費が拡大すれば資金の循環が早まり、企業の生産活動が活発になるとともに新製品の開発にも資金の一部を投下できるようになります。新製品が世に出れば、これまでよりも便利な社会になりますから、企業の発展や経済の発展は豊かな社会作りに貢献します。

消費は企業が作るもの

消費の拡大が世の中を良くするからと言って、消費者にもっとお金を使えと言うのはどうなのでしょうか?

ホンダの創業者の本田宗一郎さんの著書「やりたいことをやれ」を読んでいると、消費者の購買行動よりも企業側が世の中に需要を作り出すことが消費拡大には大切だと気付かされます。

消費者が望むものを作れば売れる。だから企業は市場調査(マーケティング)をして何が売れそうかを探り出そうとします。しかし、市場調査をしても消費者が喜ぶモノを作れるかはわかりません。なぜなら、消費者は創意を持っていないからです。

大衆の智恵は、決して創意などは持っていないのである。大衆は作家ではなく批評家なのである。作家である企業家が、自分でアイデアを考えずに、大衆にそれを求めたら、もう作家ではなくなるのである。
大衆が双手を挙げて絶賛する商品は、大衆のまったく気のつかなかった楽しみを提供する、新しい内容のものでなければならない。大衆に求められるのは、世にあるものの批評だ。
(30ページ)

固定電話がなかった時代に携帯電話を欲しがる人は滅多にいません。企業が固定電話を作って世に送り出すから、消費者はそれを買って使い、持ち運びできる方が便利だと批評するのです。そして、企業は、その消費者の批評を受け止めて携帯電話を作ります。

市場調査が先ではなく開発や生産が先。それは、企業活動が先で消費が後ということです。

自分より若い人の方が立派

いつの世も、「近ごろの若者はだらしない」と言われるものです。そう口にしている人も若い時には、年上の人たちに同じことを言われてきたことでしょう。

しかし、本田さんは、年をとった大人よりも若い人たちの方が偉いと述べています。

私の若い頃もそうだった。何かちょっとまちがいでもしでかそうものなら、すぐに「近ごろの若いもんは……」とくる。
だけど、そのだらしないといわれた若い人たちが、自動車をつくり、飛行機を飛ばし、月までいける時代を築いてきたのではないか。いつの時代でも、年をとったオトナたりよりも若い人たちのほうが偉いんだと私は思う。
(42ページ)

世の中を便利にしているのは、自分よりも若い人々なのです。小学生や中学生の場合は別としても、大人になれば常に自分よりも若い人たちが社会を良くしているのですから感謝しないといけません。自分が子供の時になかったものを作り出しているのは、自分よりも若い世代の人たちだと大人は理解する必要があるでしょう。

需要の創造にはアイデアが必要

消費拡大にとって必要なのは、企業側が新たな需要を創造することです。それは先にも述べましたが、市場調査によってわかるものではありません。

本田さんは、「つねに需要は、アイデアと生産手段によってつくり出すものだ」と考えていました。

戦後、コーモリ傘の需要度は異常な強さだった。たちまち誰も彼もその生産に乗り出し、またたく間に供給が行き渡り、生産過剰になってしまった。メーカーは倒産しはじめた。そこで、ある人が折畳み式の傘を考案した。需要がなくなったはずの傘は、再び飛ぶように売れた。
イデアが需要をつくり出したという一例だが、これは人生に、仕事に、大いに考えさせられるものである。
(51ページ)

雨が降れば傘をさして体が濡れないようにします。だから、誰もが雨に備えて傘を買います。しかし、傘は1本買えばなくしたり壊したりしない限りは、新たに買う必要がありません。コーモリ傘が社会に浸透したら、その時点で売上は頭打ちになります。

折畳み傘を考えて店に並べると飛ぶように売れたのは、従来のコーモリ傘とは違い持ち運びしやすい形状にしたことで新たな需要が掘り起こされたからでしょう。この例を見れば、消費の拡大には企業側が需要を作り出すことが大切だとわかります。

若者が社会を支えている

結局、消費拡大のために大切なのは企業側の努力なのです。消費者にお金を使えと言ったところで、欲しくないものは買いません。

また、いつの時代も画期的なモノが世に送り出されてきたのは、若者たちのアイデアがあったからです。若者がすることにケチをつける大人が増えれば増えるほど、画期的な製品やサービスが生まれにくくなります。大人は、若者たちが需要を生み出してくれなければ生きていくのが厳しくなるのですから、若者たちの行動には寛容であった方が良いのではないでしょうか。

そのように考えると、若い人たちが働きやすい職場作りこそが大人の仕事なのかもしれません。そして、若い人たちが働き甲斐がある職場が増えると、画期的なイデアが世に出て需要が掘り起こされ、消費の拡大につながるのではないかと。

日本人は、とくに自分の会社のためには一生懸命に働くけど、国全体や個人の幸せのことを余り考えない。個人個人が大きな集団や会社の陰にかくれてしまって、本当に赤裸々な人間性を出して、感動しながら仕事をやるということがない。社員がみな自分の幸せを求めて働けば、おのずとその会社は伸びていくはずです。
(92ページ)

やりたいことをやれ

やりたいことをやれ

  • 作者:本田 宗一郎
  • 発売日: 2005/09/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)