ある農夫がフィジー島で休暇中にブタ・インフルエンザに感染しました。
大病院でタミフルや抗生物質が投与されるも、容体は悪化の一方。
生死の境をさまよう彼を救ったのは、義兄でした。ビタミンCがウイルス感染症に効果があることを知っていた義兄は、アメリカのトーマス・レビー博士にメールを送り、ニュージーランドのジョン・アップルトン医師を紹介してもらいます。
アップルトン医師は、農夫が治療を受けている病院にビタミンCを大量に静脈注射で投与するようにすすめますが、病院側はこれを拒否。やがて、農夫は肺がほとんど機能しなくなり、生命維持装置を外すことを病院から提案されました。
ビタミンCのメガドース療法で生還
この話は、薬学博士の生田哲さんの著書「ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く」の中で紹介されていたものです。
さて、農夫はその後どうなったのでしょうか。
答えを先に言うと、無事に退院できました。
家族は、病院の提案を拒否し、あらゆる手段を試みるまであきらめないことを告げます。病院側は、遂に折れ、家族の望むビタミンCのメガドース療法を開始します。メガドースとは、大容量のこと。つまり、メガドース療法は、患者にビタミンCを大量に投与する治療法のことです。
ビタミンCの投与は月曜日から行われ水曜日に回復の兆候が見え始めます。しかし、抗生物質の投与のせいで腎臓が悪化しており、担当医は、これをビタミンCのせいにします。しかし、アップルトン医師がデータをもって抗生物質が腎臓にダメージを与えている可能性を指摘し、ビタミンC療法は継続されます。
農夫の回復は続き、自宅近くの病院に転院することになりました。
しかし、転院先では、ビタミンC療法を中止します。これに対して家族は弁護士を雇い、ビタミンC療法の継続を病院に主張。病院側はビタミンC療法を再開しました。
ところが、投与したビタミンCは1日にわずか1グラムでした。転院前の病院では、1日に100グラムのビタミンCを投与していたので、補完代替療法(CAM)の医師が病院側にビタミンCの投与量を増やすようにすすめ、農夫の意識が戻り、やがて正常に話せるようになりました。
ビタミンCはあらゆるウイルスを不活性化する可能性を持っている
ビタミンCのメガドース療法で農夫が重症のインフルエンザから生還したのは、なぜなのでしょうか。
それは、ビタミンCが、インフルエンザウイルスを不活性化する能力を持っているからです。
ビタミンCは電子を失うと酸化型ビタミンCとなります。その際、ビタミンCは猛毒のヒドロキシラジカルを発生させます。このヒドロキシラジカルが、ウイルスに対する攻撃力を持っているのです。
ヒドロキシラジカルがターゲットにするのは、ウイルスのタンパク質ではなく、DNAやRNAといった核酸です。ヒドロキシラジカルの攻撃を受けたウイルスは、例外なく核酸を切断され不活性化されるのです。
ここで「例外なく」とは「あらゆるウイルスに効果がある」と読み替えることができます。インフルエンザだけでなく、ポリオ、肝炎、カゼ、ヘルペス、狂犬病、ワクシニア、コクサッキ、サイトメガロなどのウイルスが、ビタミンCによって不活性化したことは実証されています。
これについては、佐賀大学名誉教授の村田晃さんの研究が有名で、ウイルスの種類を問わずビタミンCが核酸を切断したことから、あらゆるウイルスにビタミンCが効果的であると理論的には考えられています。
ビタミンCの抗ウイルス作用を否定し続けるインチキ実験の数々
ビタミンCの抗ウイルス作用は、古くは1937年にコロンビア大学のクラウス・ユンゲブルート博士によって明らかにされています。
ユンゲブルート博士は、62匹のサルに希釈したポリオウイルスを脳にゆっくり点滴注入し、感染させました。次に感染したサルに400ミリグラムのビタミンCを点滴したところ、手足に発生するはずのマヒを大幅に抑えることができました。ビタミンC投与群で30%がマヒを免れ、ビタミンCを投与されなかった群では5%しかマヒを免れることはできませんでした。
しかし、2年後の1939年にアルバート・サビン博士が、サルに濃縮したポリオウイルスを注射し、150ミリグラムのビタミンCを投与しても効果が出なかったと主張したのです。ウイルスの量は多く、ビタミンCの量は少なくして実験していたことから、最初から効果が出ないように設計されていたのではないかとの疑惑があります。
ポリオウイルスに関しては、1948年にクレナー博士が60人の患者にメガドース療法を施し、全員が回復しましたが、医師たちからは無視されました。
1978年には、肝炎ウイルスをビタミンCが殺すことを森重医師と村田教授が報告しています。ビタミンCを投与しないか少量だけ投与した患者の肝炎発症率は6.5%でしたが、1日に2~6グラムのビタミンCを投与した患者の肝炎発症率は0.2%です。
これに対して、1981年にノーデル博士は、1日に3,200ミリグラムのビタミンCを摂取した群と偽薬を経口投与した対照群で肝炎発症に差が見られなかったと報告しています。しかし、森重医師と村田教授の治療期間は6ヶ月だったのにノーデル博士は16日しか治療を行いませんでした。
生田さんは、ビタミンCの信用を落とすための科学的な論文では、「投与するビタミンCの量を非常に少なくしたり、期間を著しく短くした実験」が行われていると指摘しています。
さらにポーリング博士が1970年以後に20もの二重盲検法により、ビタミンCがカゼの症状を軽減し回復を早めたことを報告しましたが、チャルマース教授が実施した二重盲検法ではカゼの期間が0.11日短縮されるだけでビタミンCがカゼに効果的であるとの証拠は得られなかったと反論しました。
チャルマース教授は二重盲検法のパイオニアであったことから、この論文は何度も引用され、ビタミンCはカゼに効果がないと主張され続けることになったのです。
ところが、1995年にヘミラ教授が、チャルマース論文がインチキであることを指摘しました。
ポーリング博士は、1日にグラム単位の大容量のビタミンC摂取がカゼに効果的だと述べていました。しかし、チャルマース論文では、1日に25~50ミリグラムという極めて少量のビタミンC摂取ではカゼに効果がないとする報告までメタアナリシスに採用していたのです。
ヘミラ教授たちは、チャルマース論文が採用した論文を再び調査し、メタアナリシスしたところ、1日に1~6グラムのビタミンCを摂取すると、カゼからの回復が0.93日(21%)早まり、症状は3分の1に減少することが明らかになりました。
しかし、チャルマース論文をいまだに信じている医師は多く、ビタミンCがカゼに無効だとの主張は後を絶ちません。
さて、先にビタミンCはあらゆるウイルスを不活性化する可能性があると述べました。
勘の良い人はすでに気づいていると思いますが、ここでは触れません。
手洗い、マスク、アルコール消毒、自宅待機は、ウイルスの感染症を予防するのに効果的ですが、それだけでは心もとない。
いつ感染しても大量摂取できるようにビタミンCは多めに備蓄しておくべきです。
ビタミンCについては、これまでに過剰症の報告がありません。つまり、大量摂取しても安全だということです。ただ、身体のビタミンC要求量を超えて摂取した時には下痢をします。この下痢をする程度のビタミンC摂取量を生田さんは、腸管耐容量と述べています。通常時は数グラムのビタミンC摂取でも下痢をしますが、ウイルス感染時には腸管耐容量が上がります。
カスカート医師は、急性疾患では、腸管耐容量の80~90%のビタミンCを投与しなければ意味がないと述べています。最後にカスカート医師によるビタミンCの1日の腸管耐容量を記しておきます。
- 軽いカゼ=30~60グラム
- 重いカゼ=60~100グラム以上
- ウイルス性肺炎=100~200グラム以上
ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く (講談社+α新書)
- 作者:生田 哲
- 発売日: 2010/04/21
- メディア: 新書