ウェブ1丁目図書館

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地球以外に生命がいると信じる人々が新技術を生み出す

いったい、誰が地球を飛び出して宇宙に行くことを考えたのでしょうか。例え、そのようなことを思いついても、どうやったら人が宇宙に行けるのか、具体的方法を思いつくことは難しかったに違いありません。

誰かが、「よし宇宙に行くぞ」と号令しても、技術が伴わなければ実現不可能です。その不可能と思われた宇宙に飛び出すことを人類はすでにやってのけています。そして、宇宙に行くことができるようになったら、今度は地球以外に生命がいるのかどうかを探査し始めました。

果たして、地球以外に生命が存在するのでしょうか?

アポロの月着陸に関わった技術者たち

NASAの中核研究機関であるJPLで、火星探査ロボットの開発をリードしている小野雅裕さんの著書『宇宙に命はあるのか』では、人類が宇宙に飛び出すまでと、飛び出してから現在にいたるまでの経緯がドラマチックに解説されています。

話は、今から150年ほど前までさかのぼります。作家のジュール・ベルヌがSFの傑作を量産していた頃まで。人類が宇宙を目指し始めたのは、この時だったのかもしれません。

その後、ゴダードが、人類が宇宙に行くためにはロケットしかないと気付きましたが、その技術は19世紀には時代遅れとみなされていました。ロケットは600年前の廃れた技術であり、当時の最先端は大砲の技術だったからです。そのような状況で、ロケットこそが宇宙に行くために必要な技術だと気付いたことで、ゴダードは、ロケットの父と呼ばれるようになりました。

そして、時は過ぎ、1969年にアポロ11号が月に着陸しました。

月に行くことを宣言したケネディー大統領は偉大です。しかし、大統領の一言で、アポロ11号が月に着陸できたわけではありません。アポロ11号を打ち上げるために関わった40万人の技術者の努力の結晶が、月着陸を実現させたのです。

ロケットの打ち上げは、巨大ロケットの先に宇宙船を乗せる方法と宇宙船をバラバラにして打ち上げて地球軌道上で組み立てる方法の2種類が検討されていました。

しかし、ジョン・ハウボルトは、指令船と月着陸船を同時に打ち上げて一緒に月に行き、月着陸船だけが月面に着陸して、指令船は月軌道上で待機する第3の方法を提案します。帰りは月着陸船が月軌道上で指令船と合体しなければなりませんが、失敗すればパイロットは地球に戻って来れません。この第3の方法はリスクがありすぎるとして反対意見が多かったのですが、何度も再考するうちに最善の方法だと考える技術者が増え採用されました。現在では、この第3の方法、すなわち月軌道ランデブー・モードが常識となっています。

アポロ11号は、手動だけで動いたわけではありません。アポロ誘導コンピューターを搭載し、パイロットをサポートしていました。このアポロ誘導コンピューターのデータは、宇宙に飛び立ったら絶対に壊れてはいけません。そこで、ROMは、どのような強い衝撃が加わっても、絶対にデータが消えないように女工たちが、0と1の列を1針1針、手縫いで縫って作ったそうです。

また、マーガレット・ハミルトンのチームは、人間がミスを犯したときにコンピュータがチェックして人間の指示を拒否する仕組みを作りました。これが初めてのアプリケーション・ソフトウェアで、アポロ11号の月面着陸の際にも活躍しました。

地球外生命体はいるのか?

アポロ11号の月面着陸以降も、人類はロケット開発に邁進します。

いったい何のために宇宙を目指すのか。

そこには、様々な目的がありますが、地球以外にも生命があるのではないかとの期待が、技術者をさらなるロケット開発に駆り立てました。

そもそも、地球上で生命はどうやって誕生したのでしょうか。考えられる説には以下の4つがあります。

  1. 偶然、地球上でただ一度だけ生命が誕生した
  2. 様々な種類の生命が誕生したが、生存競争に勝ち残った1つの系統だけが生き残った
  3. 何かしらの物理的・化学的メカニズムが働いた
  4. 宇宙からやって来た


上の説の中では、1番目の偶然誕生したが最も可能性が高いでしょう。ある原子とある原子が偶然重なり合って化学反応が起こり、自らの力で動いたり子孫を残したりする生命体になったのだと。

ぺこぱが時を戻し、もう一度、生命誕生の瞬間に立ち会ったとしても、生命が誕生するかどうかはわかりません。なぜなら、生命が誕生する確率は、天文学的な確率であり、再現はほぼ不可能だからです。我々の先祖は、たった1回のチャンスに宝くじよりもはるかに当選確率が低い当たりを引き当てたのです。

仮にロケットを打ち上げて、地球と全く同じ環境の星を人類が見つけたとしても、そこに生命体は存在しないでしょう。生命の誕生は、現在の環境とは関係なく、たった1回のチャンスで大当たりを引き当てたかどうかで決まるからです。

それなら、ロケットの打ち上げは無駄なのでしょうか。

そのようなことはありません。アポロ11号の打ち上げによって、今では当たり前のようにコンピュータやアプリを誰もが使う時代になったのですから。このような技術の誕生は、常識を疑うところから始まるのです。

しかし、常識を疑った瞬間に新技術が生まれるのではありません。常識の壁は、分厚く、とても高いので、突き破ることも乗り越えることも困難です。生命が一瞬のチャンスをものにして誕生したのとは異なり、ある瞬間のひらめきがすぐに常識を覆すのではありません。

ドラマでよくあるような、誰かの感動的な一言で反対していた人の心が急に動く、などということは現実には有り得ない。常識という名の巨大な岩に突然羽が生えて飛び去ることはない。長い時間かけて忍耐強く押し続け、ゆっくり、ゆっくり動かすしかないのである。(140ページ)

常識に従い、論理的に物事を考えることは大切なことです。

でも、常識ではあり得ないことを愚直に続けることで、これまでになかった技術が生まれます。大穴を狙い続ける人がいなければ革新はないのかもしれません。

地球以外に生命は存在しないという常識に立ち向かう人々が、例え地球外生命体を見つけられなかったとしても、今は想像できない何かを生み出すことでしょう。