ウェブ1丁目図書館

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独自路線を行くテレビ東京は気になる存在

現在、最も影響力のあるメディアはテレビでしょう。

視聴率が10%でも、1,200万人もの日本人が番組を見ている計算ですから、社会に与える影響は他のメディアと比較になりません。インターネットが台頭したと言っても、まだまだテレビほどの影響力はなさそうです。

しかし、テレビ局ならどこでも、それなりの視聴率が取れるわけではありません。弱小テレビ局だと、視聴率が3%ということも珍しくなく、どの番組もいつ終了してもおかしくありません。そんな弱小テレビ局の代表と思われがちなのが、テレビ東京です。

テレ東でも18.1%の視聴率を取れる

テレビ東京報道局報道番組センターのチーフ・プロデューサーである大久保直和さんの著書「テレ東のつくり方」では、弱小テレビ局が、どうやって番組を制作し生き残ってきたかが紹介されています。

テレビ東京の番組は、どれも視聴率が他局よりも低めです。いったい誰が見ているのかと思うような番組が多いのですが、一度見始めると、つい見入ってしまうのがテレビ東京の番組の特徴と言えます。

常に低視聴率の番組ばかりを流していると思われがちなテレビ東京ですが、1991年1月17日に湾岸戦争が勃発した際、なんと18.1%もの高視聴率を取りました。WBSのようなしっかりとした報道番組を流しているテレビ東京なので、やっぱり報道には強いなと思う方もいるかもしれませんが、実は湾岸戦争が起こった時、テレビ東京ではムーミンを放送していたのです。

他局が戦争の映像を流している中でのムーミン。高視聴率を取ったとは言え、「テレ東らしい」と半ば嘲笑とも思える声が聞こえてきました。しかし、ここからが、「テレ東伝説」の誕生だと大久保さんは述べています。

カネもヒトも足りない弱小組織テレビ東京が、逆境をバネに番組作りをする伝統は、この時から始まったようです。

イラク戦争の裏側に密着

湾岸戦争から12年後の2003年3月。今度は、イラク戦争が勃発しました。

この頃、大久保さんは「ガイアの夜明け」という番組を担当していました。ガイアの夜明けは、経済番組であって報道番組ではありません。そのため、ただイラク戦争を正面から扱うわけにはいきません。

そこで、大久保さんが提案したのが、「有事のドル買い」です。

世界的な事件や事故が発生した時、資金の安全な避難先として選ばれるのが米ドルです。天安門事件の際も、一時10円ものドル高が進んだこともあり、資金を米ドルに交換していた金融機関や投資家が多かったことが想像できます。

では、イラク戦争の場合はどうなるのか?

アメリカが戦争の当事者であっても有事のドル買いが起こるのかをガイアの夜明けで扱うことにしたのです。

有事のドル買いが起こるかどうかを検証するための準備は着々と進んでいきます。伝説の為替ディーラーへの取材の申込み、金融機関への密着取材と、開戦したら、どのように彼らが動き、そして為替相場がドル高に動くのかを注視する体制が整います。

そして、ついに開戦となった時、米ドルは激しく動き始め、1ドル=120円を挟んで2円の幅での上下動を繰り返します。金融機関には、顧客からの注文が殺到し、LAのヘッジファンドは、有事のドル買いに動き5,000万円の利益を得ました。

しかし、イラク戦争では、かつてほどの有事のドル買いとはなりませんでした。戦争の当事者であるアメリカの財政が悪化すると見られたからです。

イラク戦争の裏側で有事のドル買いが起こるかどうかを検証するなんて、独自路線を行くテレビ東京らしいじゃないですか。

時代を先取りし過ぎて失敗

テレビ東京の長寿番組となったガイアの夜明けは、カンブリア宮殿と未来世紀ジパングとならび経済3番組のひとつとして今も人気です。

しかし、過去にはリーマンショック後のデフレに便乗して激安を扱いすぎたため、視聴率が低迷することもありました。

また、時代を先取りし過ぎて視聴率が取れないこともありました。今では有名なゾゾタウンをガイアの夜明けでは2011年1月25日に放送しましたが、広く関心を持たれることはありませんでした。目の付け所は良かったのですが、先を行き過ぎていると視聴者の興味を引くのが難しいようです。


テレビ東京の番組は、どれも個性的です。他局でおもしろそうな番組がやっていないと、チャンネルをついテレビ東京に変えてしまいます。テレビの電源を付けて最初にテレビ東京にチャンネルを合わせることはないのですが、どこか気になるテレビ局です。

人気が出た番組が、他局に真似されるのもテレビ東京の特徴ではないでしょうか。

世界のどこかに住む日本人を取材する番組を放送すると、他局でも同じような番組が放送されるようになりました。名医が登場する健康番組を放送すれば、やはり、他局も同様の番組を放送し始めます。

しかも、同様の番組を他局が同じ曜日にぶつけてくるのですから、テレビ東京はたまったものではありません。しかし、テレビ東京もしたたかなもので、他局と真っ向勝負しようとはせず、曜日を変更して番組の存続を図ります。テレビ東京の中に入って確認したわけではないので、曜日変更の理由はわかりませんけどね。

結局、生き残るのは、他局の番組ではなくテレビ東京の番組なのも、おもしろいところです。

テレビ東京の番組は、10年を超える長寿番組になることが多いです。番組が長く続くのは、スタッフの番組への愛着の強さはもちろんあるでしょうが、常に逆境で仕事に取り組まなければならない組織の風土も関係があるのかもしれませんね。

テレ東のつくり方 日経プレミアシリーズ

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