ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

目標達成には行動分析学の力を借りて己を知ることが大切

世界で活躍するアスリートやアーチストなどは、子供の頃から将来の夢を強く念じていたと言われています。

例えば、小学校の卒業文集に「メジャーリーガーになる」や「サッカーのワールドカップに出場する」といった将来の目標が書かれていたとメディアで採り上げられることがよくあります。

しかし、一方で、同じように将来の夢を卒業文集に書いたのに夢が実現しなかった人もいます。むしろ、夢破れた人の方が多いのではないでしょうか。そして、夢破れた多くの人は、気持ちだけでは目標を達成するのは難しいと悟ったことでしょう。

「将来の夢を強く念じる」というのは抽象的です。目標達成には、抽象的な思いも大切でしょうが、もっと具体的な行動指針になるものがあった方が良いでしょう。

自己理解が目標に近づくために大切

野球やサッカーが上手くなるためには、一生懸命に練習をしなければなりません。

一流選手は他の人よりも、練習に多くの時間を費やしています。だから、目標を達成しようと思ったら、練習時間を増やさなければなりません。

しかし、一流選手と同じ練習量をこなせるかと聞かれると、これまた多くの人が、「あんなに練習できない」と言うのではないでしょうか。

なぜ、一流選手と同じ練習量をこなせないのか。その答えは、人それぞれです。「根気がないから」と答える人もいれば、「飽きっぽい性格」と答える人もいるはずです。

ところで、「根気がない」とはどういうことでしょうか。

  • 上手くいかないとすぐにやめてしまう
  • 何をやっても長続きしない
  • 他に興味があることが見つかったら、今やっていることをしなくなる

きっと、こんな感じの性格を指した言葉を「根気がない」と表現していると思います。

行動分析学を専門とする島宗理さんの著書「使える行動分析学」では、このように一般的に言う性格は、「行動の集まりにまとめて名前をつけた」要約語と述べられています。

要約語は、日常生活では便利な言葉ですが、具体性に欠ける言葉です。そして、多くの人が、この要約語を使って自分の性格を決めつけているので、なぜ、練習が長続きしないのかを具体的に知ることができません。

「根気がない」から「練習が続かない」と考えると循環論に陥ってしまいます。そもそも、練習が続かない性格を「根気がない」と要約語を使って言い換えているだけですから、これでは何も問題は解決しません。

目標に近づくためには、もっと具体的な方法で自己理解をする必要があります。

自分の行動を理解する

島宗さんは、自己理解を以下のように定義しています。

「人」は、その人の行動が生じる「場」のようなものと考え、「人」よりもその人がする「行動」に焦点をおきます。したがって自己理解も、私たちそれぞれが自分の行動を理解することとなります。(36ページ)

自分の行動を理解すること。これこそが目標に近づくための自己理解なのです。

島宗さんんは、行動分析学を使った「じぶん実験」のやり方を教えてくれています。

じぶん実験の進め方は、大きく以下の順番になります。

  1. 解決したい問題や達成したい目標を選ぶ
  2. 標的行動を決める

解決したい問題や達成したい目標を選ぶ

じぶん実験で取り組むテーマを決めます。

ダイエットでも片付けでも、どのような目標でも構いません。自分の行動が変われば解決する問題や達成する目標を1つ選びます。

標的行動を決める

標的行動とは、変えようとする自分の行動のことです。

ここで行動とは、「死人にはできないこと」と定義されます。例えば、ダイエットを目標とした場合、「食べない」という選択は行動にならないため、標的行動とはなりません。死人は食べませんよね。

同様に片付けの標的行動に「部屋を散らかさない」を選ぶこともできません。死人は部屋に物を投げ捨てたりしないので、散らかすことはありません。

また、標的行動は具体的でなければなりません。「楽しむ」や「急ぐ」などは、具体的に思われがちですが、どのような行動をもって「楽しむ」や「急ぐ」とするのかは、人や状況によって異なります。駆け足が「急ぐ」なのか、タクシーに乗るのが「急ぐ」なのか、その時の状況で「急ぐ」の定義は変わります。

だから、標的行動は、「床に落ちているティッシュを拾ってゴミ箱に入れる」といったように1つ1つの動作まで確認できるような具体的なものでなければなりません。

そして、数値化できることも大切です。標的行動の頻度を記録するためには、回数を数えなければなりません。「ティッシュを1日に何回ゴミ箱に入れたのか」の記録は、自己理解のために欠かせません。

目標値の設定とベースラインの測定

例えば、肥満を解消したいという問題を抱えており10kgのダイエットを決意したとします。そして、ダイエットの方法として、ジョギングを標的行動としたとしましょう。

この場合、ジョギングをどの程度するのか、目標値を決める必要があります。毎日や週に3回といった感じです。走る距離や時間も決めておきましょう。目標を決める際は、希望的観測ではなく実現可能な程度にします。

次にベースラインの測定です。

ジョギングという標的行動が、どれくらいの頻度で自発されたか、その頻度が増えているか減っているか、頻度が安定しているかを明確になるまで測定し続けます。ベースラインの測定は、最低3回は行う必要があるとのこと。

測定したデータは、折れ線グラフにして視覚化することも大切です。


ベースラインを測定し、折れ線グラフを作成して視覚化してみたところ、週3回のジョギングという目標が達成されていないことに気づきました。

ここからが、じぶん実験の本番です。

なぜ、週3回のジョギングをできなかったのでしょうか。

考えられることはたくさんあるでしょう。

  • 走ると疲れる
  • 1回のジョギングでは、ほとんど体重が減らない
  • 残業が多くてジョギングの時間を確保できない


こんなこところでしょうか。


反対にジョギングを積極的にやりたくなる原因もあるはずです。

  • ジョギング後のシャワーが気持ち良い
  • ジョギング後は何を食べてもおいしく感じる
  • ジョギングした日は、ぐっすりと眠れる


このように行動を強める結果を好子、行動を弱める結果を嫌子といいます。

したがって、標的行動を強化するためには、その後の好子の出現を増やすこと、または嫌子の出現を減らすことが重要となります。

何が好子で何が嫌子なのかは、人によって異なりますから、じぶん実験で見つけていかなければなりません。


目標を実現するためには、目標を達成した姿を強く念じなければならない。

これは、必要条件かもしれませんが、十分条件ではないでしょう。念じているだけで目標を達成できるのなら、誰でも、世界で活躍できるアスリートになっているはずです。

きっと、世界で活躍しているアスリートは、じぶん実験を行い、練習を続けるための工夫をしてきたのでしょう。