ウェブ1丁目図書館

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物流の土台を支えているのはトラックドライバー

日本の物流を支えているのは、トラックドライバーと言っても過言ではありません。貨物輸送の90%以上をトラックが担っている現状を考えると、トラックドライバーの減少が経済に大きな打撃を与えることは容易に想像できます。

しかし、トラックドライバーの仕事環境は、決して優遇されているとは言えません。腰痛になりながら、長距離運転をしなければならないトラックドライバーもいます。現代日本人の快適な暮らしは、彼らなしでは成り立たない状況にありますが、それがあまり理解されていないのが現状です。

トラックの不思議な行動には意味がある

ライターでトラックドライバーの橋本愛喜さんの著書『トラックドライバーにも言わせて』を読むと、トラックドライバーが過酷な環境で仕事をしていることがわかります。

ほとんどの人が、トラックドライバーの仕事内容をただ大きなトラックを運転するだけと思っており、時に邪魔者扱いしています。車間を開けて走っていると、のろのろ運転して邪魔だと感じるかもしれませんが、これには深い意味があります。

トラックドライバーの仕事は、荷物を安全、無傷、定時に届けることにあります。もしも、車間を開けずに走っていて信号が赤になると、強くブレーキを踏まなければなりません。しかし、それをすると荷崩れを起こす危険があります。だから、トラックは車間を開けて、信号が赤になった時でも、ゆっくりと停車して荷崩れを防ぐようにしているのです。

左後方に視覚がある

トラックドライバーは運転のプロだから、自分がぶつかりそうになっても何とかしてくれると思っている人もいるかもしれません。しかし、荷物を積んだトラックは、急ブレーキできませんから、トラックドライバーが何とかしてくれると思ってはいけません。

また、トラックは、車高の高さと窓の少なさから左後方が死角になります。だから、左後方からトラックに近づくことは大変危険な行為であり、避けなければなりません。停車しているトラックの左後方から徒歩や自転車ですり抜けていくのも危険です。

特に店から右折して車道に出ようとしているトラックは、歩道の左から来る歩行者が全く見えませんから要注意です。もちろん、左から来る自動車も死角になって見えません。右折しようとしているトラックがいる場合には、事故を起こさないために距離をとりましょう。

あと、トラックは左後輪が脱輪しやすいことも知っておいた方が良いです。日本の道路は左側通行なので、水などが隅に流れるように道路の左側が低くなっています。そのため、左側のタイヤにトラックの体重が乗りやすく、さらに右折する時に左後輪を支点とすることから、トラックの左後方に負担がかかりやすくなります。これらが左後輪が脱輪しやすい理由です。

視覚的にも物理的にも、トラックは左後方に弱点を持っているのです。

トラックドライバーにはやらなくても良い仕事が多い

緊張感をもってトラックを運転しなければならないトラックドライバーは、心身が疲れやすい仕事です。それに加えて、本来、やらなくても良い仕事をトラックドライバーはやらなくてはなりません。その代表例が、荷役です。

荷役は、荷物を積み下ろしする仕事です。荷主のもとに行くと、数十個の段ボール箱を1人でトラックに積まなければなりません。いや、荷主が、トラックに積めよと思うのですが、荷役はトラックドライバーの仕事だと考えている荷主が多いのが現状です。荷役は契約にない仕事なのですが、規制緩和の影響もあり、トラックドライバーがサービスとして行っていることが多いです。

また、荷物は指定時間に遅れて届けてはいけないのと同じように指定時間より早く届けてもいけません。大きな工場に荷物を届ける場合には、トラックが順番待ちをしていることがあります。この場合、入り口で順番待ちをすると近所迷惑になることから、トラックドライバーは別の場所で時間が来るのを待たなければなりません。車の通りが少ない道路で長時間停車しているトラックを見たことがあると思いますが、あれは、トラックドライバーが休憩するためではなく、届け先の都合で停車しているのです。

トラックステーションの不足

トラックドライバーは、睡魔とも戦っています。眠気対策として、食べすぎないようにしているトラックドライバーもおり、また、無料通話アプリを使って見知らぬトラックドライバーと会話することもよくある対策のようです。しかし、眠気対策をしても睡魔に勝てない場合は眠るしかないのですが、トラックを駐車できるトラックステーションが全国に約30ヶ所しかなく、トラックドライバーは睡眠をとれる場所を確保するのも難しい状況にあります。なお、トラックステーションの一覧は以下のウェブサイトをご覧ください。

最低でも、47都道府県に1ヶ所くらいはトラックステーションがあっても良さそうなものです。

トラックステーションの不足は、トラックドライバーがトイレ休憩をとりにくくしています。そのため、水分をあまり摂らないトラックドライバーもいるとのこと。足を温めると眠くなるから、足を温めないようにすることもあるそうです。それらが、エコノミークラス症候群を惹き起こす原因となっていることから、トラックドライバーの健康を考えると、トラックステーションのような休憩施設を十分に確保する必要があります。

外国人の受け入れではトラックドライバー不足に対応できない

トラックドライバーの仕事が過酷なのは、トラックドライバーが減っていることとも関係があります。なかなかトラックドライバーのなり手を見つけることができないことから、外国人にトラックドライバーになってもらうことも提案されていますが、非現実的とのこと。

留学ビザは長くても4年3ヶ月。トラックドライバーになるためには、中型免許や大型免許を取得しなければなりませんが、普通免許取得から、中型免許は2年、大型免許は3年経過しないと取得できません。留学ビザがきれるまでに中型免許や大型免許を取得するのは時間的に厳しいのです。

また、日本のトラックドライバーは、荷物を安全に指定時間に届けることが要求されますが、このような技術は一朝一夕で身につくものではありません。橋本さんは、アメリカで暮らしていたことがあり、荷物が指定日に届くことはないと語っています。日本のトラックドライバーは非常に優秀なのです。しかし、日本に住んでいると、荷物が指定日に届くことが当たり前となっていて、その優秀さになかなか気づきません。


トラックドライバーは、まちがいなく日本の経済を支えています。どんなにデジタル化が進み、発注を自動化できても、肝心のトラックドライバーがいなければ、モノは顧客に届きません。日本経済を支える物流という土台を盤石なものにしなければ、どんなにデジタル化に力を入れても無意味でしょう。