ウェブ1丁目図書館

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プラットフォームを社会に役立つものにするにはユーザーの態度が重要

グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、楽天食べログ、ウーバー、エアビーアンドビー、ツイッター、ヤフー、マイクロソフト

これらの共通点を探すと、元気なIT企業が運営しているサービスあるいはその企業だと、すぐに思うことでしょう。確かにその通りです。でも、展開している事業が異なっているものもありますから、IT企業というくくりだと、ざっくりしすぎているように感じます。

もっと端的に共通点を示せば、プラットフォームとなります。これらのサービスや企業は、プラットフォームを事業の中心とし拡大しています。それは、つまり、我々現代人の生活は、これらプラットフォームにより質的に向上していることを表しているのです。

プラットフォームは拡大するほど利便性が増す

そもそも、プラットフォームとは何なのでしょうか。

一言で言うと、「土台」や「基盤」となります。

ただ、土台や基盤と言われても、あまりよくわかりません。複数のプラットフォームの事業にかかわってきた尾原和啓さんは、著書の『ザ・プラットフォーム』で、プラットフォームを「個人や企業などのプレイヤーが参加することではじめて価値を持ち、また参加者が増えれば増えるほど価値が増幅する、主にIT企業が展開するインターネットサービス」と定義しています。

この定義は、とてもわかりやすいですね。フェイスブックツイッターを例にすると、ユーザーが1人だけしかおらず、ただ独り言を文字にしているだけなら誰も利用しようとはしません。しかし、おもしろい発信をするユーザーが現れると、そのユーザーが発信する情報を知りたくて閲覧者の数が増えます。閲覧者が増えれば、さらに情報を発信する人も増えていくので、プラットフォームのユーザー数がどんどん増えていきます。

これを尾原さんは、収穫逓増(しゅうかくていぞう)と述べています。

プラットフォームは、ただ場所を提供しているだけと言えます。しかし、場所を提供しているだけでは、収穫逓増は起こりません。利用者数がどんどん増えていくためには、プラットフォームの運営者が、内部向けと外部向けに価値観を共有することが重要となります。その共有価値観にもとづいてサービスをつくればつくるほど、ユーザーの欲求や意図が集まり、プラットフォームの巨大化が可能となるのです。そして、プラットフォームが巨大化するほど、ユーザーの利便性が向上していきます。

シェアリングエコノミーの発展

プラットフォームの運営は、インターネットと非常に相性が良いです。

その例がシェアリングエコノミーです。シェア、つまり、複数の人と何かを共有するサービスを展開するプラットフォームで、すぐに思いつくのはレンタカーです。このレンタカーを発展させたものがカーシェアで、今では、インターネットで利用したい日時を申し込めば誰でも手軽に自動車を借りることができます。

また、シェアハウスもシェアリングエコノミーの一つですが、その発展型とも言えるのが、エアビーアンドビーが展開するいわゆる民泊です。民泊は、居住者が旅行者に1泊や2泊といった形で部屋を提供し、その見返りとして宿泊代を受け取ります。民泊もまた、インターネットで旅行先に近い場所で宿泊できる家を探し予約できます。

尾原さんは、シェアリングエコノミーが世界を変えると考えています。人が何か物を所有するとき、固定費が発生する場合があります。家も自動車も固定費がかかりますね。この固定費を誰かと共有できれば、自分の負担は少なくなります。そう、シェアリングエコノミーは、モノだけでなく固定費をも共有することが可能なのです。

だから、カーシェアのようなサービスが可能となり、ウーバーのように自動車の所有者が隙間時間に運転手となって乗客を目的地に運ぶこともできるようになったのです。

世界最大のプラットフォームは国家ですが、国家だって一種のシェアリングサービスを展開していると言えるでしょう。水道や道路などのインフラを個人が整えることは経済的に不可能です、しかし、国民が増え、固定費を少しずつ共有することで、大規模にインフラを整備することが可能となりました。

ビジネスモデルの重力

プラットフォームは、参加者が増えれば増えるほど利便性が増していきます。その点で、プラットフォームの巨大化は好ましいことと言えます。

しかし、プラットフォームには、ビジネスモデルの重力が働くと、尾原さんは指摘します。

ビジネスモデルの重力とは、プラットフォームがユーザーにとって悪い方に傾くことです。早い話が、プラットフォームの利益追求により、利便性が失われていくのがビジネスモデルの重力です。

食べログが、ユーザーの評価を操作し、チェーン店の評価を下げていたことが問題となりましたが、これはビジネスモデルの重力が働いた結果でしょう。

グーグルは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を共有価値観としていますが、今では、ユーザーが検索する時に入力したキーワードを削除した検索結果を返すことがあり、情報にアクセスしにくい状況を作っています。これもビジネスモデルの重力が働いた結果と言えそうです。

ビジネスモデルの重力は、必ず働くものだと尾原さんは述べています。だから、プラットフォームが悪い方にかたむいたとき、ユーザーが正しく指摘し、プラットフォームの運営者に伝えなければサービスの存続が危うくなります。サービス中止は、運営者にもユーザーにも良いことではありません。

しかし、どんなにユーザーが指摘しても、その声を聞こうとしないプラットフォームはあるものです。その場合は、別のプラットフォームに乗り換えれば良いのですが、特定のプラットフォームによりサービスが独占状態になっていると、乗り換えは不可能です。

プラットフォームの巨大化はユーザーの利便性を向上させます。しかし、独占によりユーザーの利便性が損なわれることもあります。巨大化と独占排除という相反する目的を同時達成することが、これからのプラットフォーム運営と利用の課題となっていきそうです。

日本型プラットフォームの優位性

現在のプラットフォームは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど海外企業が運営するものが主流となっています。

だから、日本のIT企業は遅れていると言われることがありますが、プラットフォーム運営に関しては、日本の方が優れている面があります。

海外のプラットフォームの戦略は、優勝劣敗、多産多死型です。多くのサービスが生まれますが、消えていくサービスもたくさんあります。その中で、生き残った者だけが利益を得る構造となっているのが、海外のプラットフォームです。

一方の日本のプラットフォームは、例えば、ドコモが展開していたサービス「iモード」が健全な保護主義を採用し、最初にリスクをとってプラットフォームに参加したコンテンツプロバイダーが損をしない配慮がなされていました。

また、ショッピングサイトでも、海外のものは商品のスペックや価格を記載した簡素なものが多く、ユーザーが最安値を調べて購入する傾向がありますが、楽天の場合は、出店しているショップが個性的な商品ページを作り、ウインドウショッピングを楽しめるようにしています。

iモードにしても、楽天にしても、海外のプラットフォームと比較して、サプライヤー(供給者)が価格競争に巻き込まれない仕組みとなっています。日本のプラットフォームは、海外と比べると、多産少死型や少産少死型という特徴を持っているように思えます。

ちなみに人類の社会は発展していくにつれて、多産多死から多産少死、そして、少産少死に向かいます。この人類の歴史をプラットフォームに当てはめると、実は、日本の方が進んでいると見ることができます。


プラットフォームは、人々の生活を向上させます。しかし、プラットフォームには、ビジネスモデルの重力が働くので、ユーザーが見過ごしていると使い勝手が悪いサービスばかりになる危険性もあります。

プラットフォームは、アプリをユーザーにダウンロードさせようとしますが、これはユーザーを囲い込んで利益を最大化しようとする戦略に思えてなりません。


ブラウザでできることはブラウザでする。
ユーザーはFirefoxを使う。


ユーザーが、プラットフォームの市場独占を許さない態度も、価値あるプラットフォームの誕生と存続のために大切なことです。