ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

コマーシャリズムが蔓延する社会は感染症に弱くなる

日本人は、世界的に見てとても清潔な民族だと言われています。

帰宅した時、トイレの後、食事の前などは、手洗いをすることが習慣となっている人が多いことでしょう。中には、手洗いのたびに石鹸やハンドソープを使っている人もいますね。

身体を清潔にする目的は、感染症などの病気にかからないようにすることにあります。不衛生にしていると、細菌やウイルスに感染し、場合によっては死にいたることもあります。だから、身体を清潔に保つ必要があるのですが、日本人の潔癖は度が過ぎており、逆に感染症に弱くなっています。

肌の老化の原因は洗いすぎ

女性は、男性よりも特に身体を清潔にすることにこだわりを持っています。

しかし、その清潔へのこだわりのせいで、女性の肌は、男性の肌よりも老化するのが早くなっています。体をしっかりと洗剤で洗い、入浴後は、基礎化粧品で保湿をする女性は多いと思いますが、その行為が、そもそもお肌の劣化の原因です。

動物の細胞を劣化させる原因の一つは乾燥です。洗剤で体を洗うと皮膚が乾燥することはわかっていると思います。だから、入浴後は、肌の潤いを保つために乳液やクリームを付けて保湿するのですが、そもそも乳液やクリームに保湿効果はありません。

最初から、洗剤を使わなければ肌は乾燥しないのですから、洗剤を使わなければ良いのです。乾燥した後に保湿すれば問題なしと言って、乳液やクリームを販売するのは、マッチ・ポンプ商法です。いや、乳液やクリームは、皮膚から油分を取り除き、さらに肌を乾燥させますから、マッチ・マッチ商法といった方が正しいでしょう。

洗いすぎが皮膚の健康を損ない、感染に弱くなると警告するのは、医師で医学博士の藤田紘一郎さん。著書の「手を洗いすぎてはいけない」では、タイトル通り、手洗いのしすぎから起こる様々な健康被害について一般向けに分かりやすく解説しています。

ウイルスの侵入を阻止する常在菌

藤田さんは、流水で手を10秒洗えば、手洗いは問題ないと説いています。我々の皮膚、口腔、腸内には、無数の細菌が棲んでいます。その数は100兆個とも言われています。このような人体に棲みついている細菌を常在菌といいます。人間の細胞が37兆個と言われていますから、人体は細胞よりも常在菌の方が圧倒的に多いのです。

彼等は、いったい何のために人体に棲んでいるのでしょうか。それは細菌に聞いてくれとしか言いようがないですが、少なくとも、我々に害を及ぼすものではありません。それどころか、常在菌は体内への外敵の侵入を防いでくれるファイア・ウォールのような働きをしているので、人体にはありがたい存在です。

そんな常在菌を抹殺するのが洗剤です。皮膚を石鹸で洗えば、90%の皮膚常在菌が死んでしまいます。そして、残った10%の皮膚常在菌が増殖して、元の数に戻るには12時間かかると言われています。

これは、ファイア・ウォールをオフにした状態で、12時間インターネットにつないでいるのと同じようなもので、パソコンがコンピュータ・ウイルスに感染する危険が高まります。

同じことが洗剤を使った手洗いにも言えます。皮膚常在菌は脂肪酸を作り出し、皮膚を弱酸性に保ってくれます。タンパク質は酸に弱いので、弱酸性であっても、ウイルスには脅威です。そう、皮膚常在菌を洗剤で洗い流す行為は、ウイルスが侵入しやすい環境を整えているのと同じなのです。

もちろん、口腔内の常在菌や腸内の常在菌も、体内への異物の侵入を防いでくれています。常在菌は、感染症から身を守る非特異的生体防御機構の一部を構成しているんですね。

洗いすぎは免疫力を下げる

感染症から体を守る能力を免疫力といいます。

免疫でよく知られているのは、抗体ですね。抗体は、特定の異物を排除する能力を有していますが、自分の担当外の異物を排除することはできません。このような特定の異物を排除する防御機構を特異的生体防御機構と言います。

特異的生体防御機構は、強力に異物を排除しますが、発動には数日から数週間の時間がかかります。その間に体内で病原体が増殖すれば、人体は耐えられず死にいたることもあります。

一方、皮膚常在菌や胃酸などの非特異的生体防御機構は、侵入者になりふり構わず引導を渡します。触れるものは全て駆逐する。それが非特異的生体防御機構であり、病原体の体内への侵入を水際で食い止めてくれています。

しかし、過度の手洗いは、皮膚常在菌を減らし、皮膚表面を中性にしてしまうので、ウイルスの侵入を水際で止められなくなります。だから、手洗いは流水で10秒が好ましく、石鹸やハンドソープを使うべきではないのです。当たり前ですが、アルコール消毒液を手に付けるのはご法度です。

免疫力はチームワークで成り立つ

疫病から免れる免疫は、抗体だけではないのですが、やたらと抗体ばかりが取り上げられるため、その他の生体防御機構が無視されがちです。

ワクチンを接種すれば、異物を強力に排除する抗体が作られます。だから、ワクチンにばかり意識が行きますが、水際対策に重要な働きをする常在菌やその他の非特異的生体防御機構もチームで異物を排除しているのですから、こちらも無視すべきではありません。

腸内常在菌は、異物を入れることで防御力を強めていきます。だから、日頃から細菌やウイルスをちょっとずつ口や鼻から入れておけば、腸内細菌の防御力が高まり、感染症に強くなるのです。

ノロウイルスO157は、チョイ悪ウイルスやチョイ悪菌でしかないのですが、あまりに潔癖になりすぎて、日頃からこのようなチョイ悪たちと関わらないようにしていると、いざ口から毒性の弱い病原体が入ってきた時にひどい症状が出てしまいます。

抗体だけが、病原体から身を守っているのではありません。免疫は、非特異的生体防御機構と特異的生体防御機構がチームを組んでいるのです。藤田さんは、寄生虫が産生するDiAgを注射すると、アトピー性皮膚炎が治ることを付きとめ、ノーベル賞を受賞できるのではと期待していました。でも、DiAgを投与したネズミには、ウイルス感染やがんになりやすい体質になる副作用が出てしまいました。

免疫はシーソーのようにバランスを取りながら体内で働くのであり、口や鼻など通常の経路から異物を取り込んだ場合と注射で直接血中に異物を入れた場合では、免疫のチームワークに違いが出るのでしょう。

だから、ワクチンを接種すれば問題なしと考えるのではなく、日頃からチョイ悪菌やチョイ悪ウイルスと接しながら、ちょっとずつ免疫を強化していくことが大切だと考えるべきです。

  • 子供を公園の砂場で遊ばせる。
  • たまに動物園に行く。
  • 室内で落とした食べ物は捨てずに食べる。


このようなことを繰り返しながら、免疫力は養われるのであり、生体防御機構は1日にして確立できないのです。

日頃からマスクをしていてはチョイ悪菌を体内に入れることができません。頻繁にアルコール消毒をしていると、皮膚常在菌叢が破壊されます。これらは、体内に病原体を入れないという点では正しいです。しかし、それは、感染症に弱い身体にします。

先進国の人々の健康に関する知識は、だいたいメディアの広告から得たものでしょう。蔓延するコマーシャリズムは、社会全体を感染症に弱くしています。

日常的にチョイ悪菌と関わることが、新興の病原体から身を守ることになるのです。