ウェブ1丁目図書館

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実践と検証の繰り返しで戦略的思考が身に着く

戦略、作戦、戦術。

一見、どれも同じ意味に思えます。しかし、言葉が3つあるのですから、意味も3つあります。戦術は、技術を磨く、知識を身に着けるといったような個々具体的な努力を意味し、現場レベルでの細かな動き方ややり方の調整のことです。作戦は、戦術よりも視野が広くなり、設定した目標を達成するために効率の良い仕組みを作ることを意味します。

戦術も作戦も、普段の勉強や仕事で、よく行われることなので、多くの人が経験しています。しかし、戦略は、日常生活の中で経験することが少ないのではないでしょうか。

広範囲かつ長期的視野を持つことが戦略には欠かせない

エンジェル投資家の瀧本哲史さんは、「戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることなのだ」と、著書の『戦略がすべて』で述べています。

例えば、野球が上手くなるために素振りをしたり、キャッチボールをするのは戦術レベルの努力です。野球で勝つために送りバントや敬遠などのサインをチームで共有し、試合中にサインにしたがって動くのは作戦レベルです。

作戦は戦術の上位の概念ですが、戦略は作戦よりも上位の概念となります。会社だと、経営陣が考えるのが戦略であり、その下で働く人々は、作戦や戦術面を担当しているのがほとんどです。だから、組織内で働く多くの人は、戦略に関わる機会が少ないです。

戦略は、他人とは全く違う努力やチップの張り方をすることなので、従来のやり方をガラッと変えなければなりません。今まで存在していたルールを変えてしまう新しい発想が戦略には求められます。

どんなに素振りをしても野球がうまくならない、ヒットエンドランなどの作戦を考えても得点に結びつかず、試合に勝てないのであれば、野球のルールそのものを変えて自分のチームに有利なルールを作ってしまうのが戦略です。しかし、野球のルールを変えることは困難です。そこに多くの努力をするのであれば、野球以外に勝てる場所を見つけて努力をした方が結果につながりやすいです。

戦略は、視野を広範囲に持ち、長期的に思考することも意味します。どの土俵なら勝てるかを見極め、しかも、楽勝でできることを、徹底的にやること。それこそが戦略に必要な思考です。

でも、それをなかなかできないのが人というもの。途中で投げ出すことは悪いことと習ってきた人は、別の場所での努力を選ぶことは逃げることと同義と考えがちです。しかし、それも戦略なのですから、決して逃げていることにはなりません。強敵相手に同じ作戦と戦術を繰り出していても、なかなか結果に結びつきません。

戦略には多様性が必要

別の分野で努力するためには、教養が必要です。教養というと、学校の勉強ができることと捉えがちですが、瀧本さんは、「自分の知らない思考様式、学問体系、先端的な知識」を知ることが教養だとしています。

資本主義社会で生き残るためには、イノベーションを作り出すという宿命から逃れることはできません。多くのイノベーションは、他の異なる考え方を組み合わせることによって生まれます。だから、戦略的にイノベーションを生み出すためには、教養を身に着ける必要があります。それは、つまり、多様性であると言えます。

すぐに役に立つ知識や技術を身に着けるなら、実用科学を学ぶのが近道です。しかし、真に革新的なイノベーションは、実用科学だけでなく純粋科学の視点もなければ起こりません。多様な思考を生み出すためには、両者を切り離すことはできないのです。

また、イノベーションを起こすためには、人的ネットワークの多様性も欠かせません。何から何まで自分で知識を得ようとすると、膨大な時間と努力が必要になります。それよりも、他分野に詳しい人とネットワークを築く方が効率的ですし、より高度な知識や技術を利用することができます。

戦略にとって必要な教養とは、多様性に他ならないのです。

努力の方向

戦略を考えることは、努力の方向を決めることでもあります。

これまで身に着けた知識や技術は、今現在自分が属している業界だけでしか役立たないものでしょうか。他の分野でも生かせるかもしれません。バットの素振りを毎日している人なら、野球以外にも、ゴルフでその技術が活かせる可能性があります。ボールを打つ点では、テニスも同じですから、野球以外の打つスポーツを試して、その技術が生かせるかどうかを確認し、野球よりも上達しそうならテニスの上達のために努力をしても良いのではないでしょうか。

視野を広げることで、これまでの努力、そして、これからの努力を良い結果に結びつけやすくなります。

どんなことでもそうですが、やってみないことには何もわかりません。やってみてどうだったか、その成否を検証するプロセスを何度も経験することが重要だと瀧本さんは主張しています。努力が実っているかを知るためには、実践と検証を何度も繰り返す必要があります。そして、その繰り返しこそが、戦略的思考へとつながるのです。