ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

量子を理解した人々が世の中の仕組みを変えていく

自分が見ている世界と他人が見えている世界は、果たして同じなのか。

こんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。自分が見ている青色は、他人には赤色に見えているかもしれません。自分が見ている四角形は、他人には三角形に見えているかもしれません。

こんなことを考えていると、ある時、量子の世界へと思考が変化する瞬間が訪れます。しかし、それをうまく表現するのは難しく、再び目で見えている世界に引き戻されます。

見えている世界は想像

このブログをスマホで読んでいる方は、目の前に片手で持てる四角い物体がスマホだと見えていることでしょう。パソコンで読んでいる方は、両手で抱えないと持てない大きさの四角い物体が見えていることでしょう。

しかし、目の前にあるスマホやパソコンは、スマホそのものでもなく、パソコンそのものでもありません。何を言っているのかと思うでしょうが、量子の世界に飛び込むとは、そういうことなのです。

素粒子物理学者の松浦壮さんの著書『量子とはなんだろう』では、初学者向きに量子について解説されています。

スマホもパソコンも目に見えていますが、それは、スマホやパソコンに反射した光が目に飛び込み脳に電気信号が送られて作り出された仮想現実です。触れば圧力情報を脳が処理し、スマホやパソコンを知覚します。音や匂いも、耳や鼻でそれらを知覚し、脳で仮想現実が作り出されます。

これら五感で得られた情報間に矛盾が生じないから、我々は、スマホやパソコンが目の前に存在していると理解できるのです。

でも、五感で測定した情報は、脳が作り出した想像図でしかありません。見えているスマホやパソコンも、脳が作り出した想像図であり、それらの本当の姿が見えているかは不明です。しかし、自分が見えているスマホやパソコンは、他人も見えていますから、本当はどのような形をしているかわからなくても、社会生活を送る上で何らの支障もありません。

物質は小さな粒からできている

この世にある物質の最小単位は原子と考えられています。原子は目に見えないほど小さな小さな粒で、それら粒が大量に結合して人間の目で見えるほどの大きさの物質を構成しています。スマホもパソコンも、バラバラに分解していけば、最終的に原子にたどり着きます。

しかし、原子が物質の最小単位かと言えば、そうではありません。原子の周りを回っている電子は、さらに小さいです。電子もまた粒子と考えられますから、結局、物質は分解していけば小さな粒に行き着くことに変わりありません。

では、光は、どうでしょうか。そもそも、光は物質なのでしょうか。光にまで思考が及ぶと、もう何が何だかわからなくなります。光は粒の集合体のようにも思えますが、波のようにも思えます。

果たして、光は、粒子なのでしょうか、波なのでしょうか。

このように思考するのは、我々が五感を通じて測定できる概念でしか物事を捉えていないからです。それを超越した電子や光の概念は、もはや従来の思考では想像することが難しく、ここに「世界は見えている通りである」という幻想が消滅します。

そして、この世のあらゆるものは量子でできているという新しい考え方が登場したのです。

量子をどう表現するか

この世のあらゆるものが量子でできているとしたら、量子をどう表現したら良いでしょうか。

五感で感じられない量子を思い描くためには、新たな感性を身につける必要がありそうです。

量子を表現する方法にはいくつかあり、ハイゼンベルク行列力学シュレディンガー波動力学ファインマン経路積分が代表です。どれも、難しい数学が出てくるので、この辺りで挫折してしまいます。

しかし、自分は量子のことがわからなくても、どこかの誰かが量子を理解し、これまでになかったモノを生み出すに違いありません。量子コンピュータが現在のコンピュータに取って代わる時代がやがて訪れるでしょう。

古典計算は0から9までの数字を使う10進数ですが、量子計算は0と1の2進数で計算します。この2進数で計算することで、計算に要する時間が極端に短縮可能となります。

『量子とはなんだろう』では、「32399」を素因数分解する例が紹介されています。答えは「179×181」ですが、ここにたどり着くためには、古典計算だと、小さい素数から総当たりで計算していくことになります。ところが、量子計算だと、そのような手間を省略し、古典計算よりも短い時間で答えを導き出すことが可能になります。

ネット通販では、IDとパスワードを入力して本人確認を行っていることが多いです。ある人の通販サイトの管理画面をハッキングする場合、古典計算だと、IDとパスワードの組み合わせを考えられるだけ順番に組み合わせていき、答えを見つけ出します。IDとパスワードの桁数が多ければ、答えにたどり着くまでに長い時間がかかります。しかし、量子計算だと、短時間でIDとパスワードの正しい組み合わせにたどり着けるので、これまでのような本人確認の方法だと簡単に不正アクセスできるようになります。

量子コンピュータの普及は、ネット通販での決済方法にも大きな影響を与えそうです。クレジットカードの番号も簡単にばれてしまいますからね。


この世のものは全て量子でできていると言われても、古典物理学を前提にした思考をする多くの現代人にはさっぱりわかりません。しかし、我々も、重力という概念がなかった時代の人たちとは異なる思考をしているはずですから、当時の人々では理解できなかった世界観を持っているに違いありません。

量子コンピュータを誰もが使える時代はいつ訪れるかわかりませんが、ほぼ確実にやって来るはずです。その時には、多くの現代人とは異なる思考をするニュータイプが誕生していることでしょう。