ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

女性が仕事をすることを制限されたのは江戸時代から

かつての日本では、仕事をするのは男性で、家を守るのが女性と考えられていました。

しかし、現在では、女性が外で仕事をすることは当たり前となっていますし、女性の社会進出を支援しようとする動きも見られます。古い慣習にとらわれず、男女同権とすることは、より暮らしやすい社会を築くために大切なことです。

ところで、「かつての日本」とは、どれくらい前のことなのでしょうか。実は、女性は家を守るものだとする考え方は、江戸時代以降に発達したものであり、戦国時代以前の女性は、もっと自由でした。

古くから女性は働いていた

作家の永井路子さんの著書「歴史をさわがせた女たち 庶民篇」によれば、日本最古の女性の職業は巫女だったそうです。

邪馬台国の女王卑弥呼も巫女でしたから、1800年ほど前には、すでに女性は仕事をしていたことになります。しかし、全ての女性が巫女ではなかったでしょうから、一部の女性にだけ仕事があったのではないかと思われそうです。

でも、巫女に負けず劣らず古い職業として農業があり、しかも多くの人々が従事していたことから、男性だけでなく女性も農作業をしていたと考えられます。それを示す史料として、平安時代に書かれた清少納言枕草子を永井さんは挙げています。

枕草子の中には、「途すがら田植えをしている早乙女たちを見た」と書かれています。女性が家を守るという慣習は、平安時代にはなかったことがうかがえます。

また、鎌倉時代の病草紙という作品には、金貸しをしていた女性の話が掲載されています。金貸しをする女性は、特に珍しいことではなく、平安時代から女性は土地の相続権を持ち、財産権も持っていたので、資産運用をしていたとしても不思議ではありません。

江戸時代の女性も働いていた

江戸時代になると、幕府は儒教の考え方をもって世の中を統治しようとします。儒教には、女性蔑視の考え方がありますから、江戸時代以降、女性の権利が認められなくなっていきました。

しかし、江戸時代でも、働く女性はたくさんいました。

江戸時代中期に出された「紙漉重宝記」は、紙ができるまでの工程をイラスト付きで解説した書物であり、この中で描かれている人間の半分は女性だそうです。生産過程だけを見れば、女性が優位ということですから、紙すきに従事していた人の多くは女性だったようです。

また、幕府は、女性が旅行することを禁じていましたが、半年間も家を空けて旅行に出かけていた女性がいました。酒に酔って夫に介抱される女性もいたようです。彼女たちは、幕府の固苦しい規制を乗り越えて、案外楽しく生活していたみたいですね。

江戸時代に貧窮して遊郭に売られる女性がいたことは事実ですが、それが大多数だったと考えるのは誤りです。永井さんは、最上層と最下層の女性のことは知られていたが、中間層の女性がほとんど注目されなかったことは歴史の盲点だと指摘しています。

これは、女性だけに当てはまることではありません。重大事件は歴史の教科書に掲載されても、平均的な生活をしていた人々についてはほとんど記述されません。庶民たちの生活がわからないものだから、極端に豊かな人や極端に貧しかった人のどちらかしかいなかったような錯覚に陥るのです。

女性の権利が認められなくなったのは明治以降

女性の権利が形式的に認められなくなっていったのは江戸時代ですが、当時の女性たちは、幕府の縛りを上手に乗り越えて旅行などを楽しんでいました。

ただ、彼女たちは、幕府の体制をひっくり返そうという政治的な動きはしておらず、その点で当時の女性には限界があったようです。

戦国時代まで、女性たちは財産権や相続権を持ち、夫の干渉を受けることはありませんでした。江戸時代には、固苦しくはなったものの、庶民の女性たちには、いろいろな楽しみがありました。

それなのに現代の日本で、なぜ、女性の社会進出を支援する必要性が叫ばれるようになったのでしょうか。

女性の権利がまるきり認められなくなったのは、じつは徳川以降であり、日本の女が法的に全く無力だった時代は、そう長いことではないのである。それなのに、女は常に何の権利もなかったように教えられたのはなぜか。それは明治憲法徳川時代の方式をそっくりうけついだからで、わざとそれ以前の女の歴史には眼をつぶってしまったのだ。(94ページ)

江戸時代のような封建制社会では、意外と規則はゆるゆるだったのでしょう。殿さまの命令は絶対でも、規則を破ることが殿さまの怒りに触れなければ、なんてことはなかったのかもしれません。

しかし、明治時代に西洋文明を採り入れ、近代化を目指した日本は、法律が人の行動を縛るようになりました。それは、江戸時代のゆるゆるの規則とは違い、ガッチガチに女性の権利を制限したものとなったのではないでしょうか。

そう考えると、法律で権利を認めるという態度は、よろしくなさそうです。それは、認められていないことはやってはいけないこととなるからです。

まずは、あらゆる権利を認めること。しかし、ある権利を認めることで不都合が生じる場合には、制限する必要が出てきます。その制限も、時代によっては不必要になることもあるでしょう。

女性が仕事をすることは、社会にとって不都合でしょうか。

そんなことはないでしょう。

現代の日本で、女性の権利を男性以上に制限する利点がどこにあるのでしょうか。