ウェブ1丁目図書館

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働き方改革は男性の労働観を変えることが重要

これまでの日本社会は、長時間労働が当たり前でしたが、政府が働き方改革をすすめたことで、少しずつその傾向が是正されつつあります。

働き方改革は、一億総活躍社会を目標に働く人それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できるようにする取り組みです。各企業でも、働き方改革を行っていますが、それが単に労働時間の短縮だけに終わっている場合があります。

長時間労働の是正は、労働者の健康維持のために大切なことですが、これだけだと政府が意図した働き方へと変えることはできません。

経営戦略としての働き方改革

少子化ジャーナリストの白河桃子さんは、「働き方改革を、ただの時短、労働時間削減、効率化、生産性向上、テレワークやAIなどのIT投資、など矮小化してとらえては失敗する」と著書の『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』で指摘しています。

これからの日本社会は、労働人口が減少していくと言われています。労働人口の減少は、これまでのように多くの労働者を雇い、長時間労働でモノを作ったり、サービスを提供したりすることを困難とさせます。労働人口が減るのですから、企業間での人材獲得が激しくなり、必要とする労働力を確保できなくなって経営が成り立たなくなる事態も今後は出てくる可能性があります。

働き方改革は、単に政府が残業を減らせと言っているから労働時間を短縮するとか、女性を活用しろと言っているから女性従業員を雇用するとかいう問題ではなく、今後、労働人口が減少しても事業を存続させられるように経営戦略として取り組むべき課題なのです。

長時間労働はただの慣習

IT企業のサイボウズは、かつては離職率が高く、ブラック企業と言われても仕方がないような長時間労働を行っていました。辞めた従業員に代わって、新規に従業員を雇うと、採用と教育にコストがかかります。これは無駄だと思った社長が、離職率を減らすため、100人いたら、100通りの働き方ができるように労働条件を改善しました。

当初は、人材獲得が目的だったサイボウズ働き方改革でしたが、社員のライフイベントに合わせて、会社も変化する必要性を感じ、働き方を変えていくべきだと強く実感したとのこと。

現在の日本企業の長時間労働は、高度成長期に培われた成功体験から来ていると指摘するのは、クラシコムの代表取締役の青木耕平さん。長時間労働は、それが利益獲得にとって有効な手段としてではなく、単に慣習として行われているだけではないかと白河さんは、疑問を持っています。

スウェーデン発祥の家具量販店・イケアは、労働時間の長さと活躍は関係ないとし、自分が持てる時間の中で、イケアのために活躍すればいいと考えています。日本企業の場合、労働時間の長さが出世に関わってきますが、時間を基準にした評価では、長時間労働の是正は難しいでしょう。

また、日本の労働者は、利益より売上を重視する傾向にあることも長時間労働を生み出す原因と言えます。WLB社の小室社長は、経営者が利益を出せと言っているのに、部長あたりから、部下へのメッセージが「1カ月でこれだけの売上を出せ」という話に変わってしまうと述べています。そして、売上ノルマを設定し、部下はノルマを達成するために長時間働き、結局、人件費がかかりすぎて利益が出ないという結果になってしまいます。

コスト意識の欠如もまた、長時間労働を生み出していると言えるでしょう。

男性の働き方を変える

働き方改革とセットで議論されるのが、女性の社会進出です。

労働人口の減少に伴い、これからは、女性が仕事をすることに期待が集まっています。だから、女性が働きやすい職場を作ることが重要となってきますが、白河さんは、女性に優しい働き方は失敗すると指摘しています。

女性が働きやすい環境を作るためには、男性の働き方を見直さなければなりません。これまでの日本社会は、女性が育児、男性が長時間労働とワンオペ育児とワンオペ稼ぎ手が当たり前でした。女性が仕事をしようとすると、ワンオペ育児から解放されなければなりません。そのために保育園などに子供を預けられるようにすることは大事です。しかし、夫が長時間労働をしていると、妻が家から出ることができなくなりますから、女性に仕事を持つように言っても、それは無理な話です。

男性の長時間労働を減らすことで、女性がワンオペ育児から解放され、仕事をすることができるのです。

また、女性が出産や育児で離職すると、生涯収入が2億円も減ってしまいます。もしも、夫と離婚したり死別すれば、妻の生活は破綻します。女性にとって出産は、ハイリスクです。少子化対策と言って、子供を産むように増やすように啓蒙することは、女性にリスクを負わせる結果になるだけです。

白河さんは、「望む人が望むときにパートナーを持ったり、子どもを持ったりできること」が大切だと述べています。個人の生き方の選択肢を増やしていくことが重要なのです。

人口増加率とGDPの伸び率に相関関係がないことはわかっています。

子供が増えれば、経済が良くなると思い込んでいるオッサンの考え方を変えることが、働き方改革の要ではないでしょうか。子供を増やせという発想は、長時間労働と同じ発想だということに気づかなければなりません。どちらも、数や量を増やせばどうにかなるという考え方で共通しています。


一億総活躍社会を目指す働き方改革は、女性も仕事をすることを期待していますが、それを実現するためには男性の働き方や労働観を変える必要があるのです。