ウェブ1丁目図書館

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5人に対する使命と責任を果たせない会社に共通する5つの言い訳

会社の存在意義は何なのか?

これに対する答えは、人によって様々です。利益の追求、顧客満足従業員満足など、たくさんあります。なぜ、そのように答えるのかについては、その人なりの理由があるでしょう。でも、会社の存在意義について、どのように答えたとしても、会社は社会から受け入れられなければ存続できないことは、共通の認識ではないでしょうか。

会社は、経営者や株主のものではなく、従業員やその家族、顧客、地域社会など、その企業に直接かかわるすべての人々のものだと主張するのが、坂本光司さんです。坂本さんは、「会社経営とは『五人に対する使命と責任』を果たすための活動」だと、著書の「日本でいちばん大切にしたい会社」の中で述べています。

会社が使命と責任を果たさなければならない5人とは

会社が使命と責任を果たさなければならない5人とは、順番に「社員とその家族」、「外注先・下請企業の社員」、「顧客」、「地域社会」、「株主」です。坂本さんが、なぜ、この順番に大事だと述べているのかみていきましょう。

1.社員とその家族

多くの人は、会社はお客さんを第一に考えるべきだと思うことでしょう。

確かにお客さんに支えられてこそ、会社は存続することができます。でも、お客さんが支えてくれる会社というのは、その構成員である従業員を支えてくれていることでもあります。

もしも、会社が従業員を冷遇していたらどうなるでしょうか?おそらく、その会社で働くことに嫌気をさし、その気持ちが接客や取引先の人と接するときに態度に表れ、相手に不快な気持ちを与えるのではないでしょうか。お客さんが満足するサービスの提供、それは、従業員が会社の待遇に満足しているからできるものであり、不満を抱えた従業員では、嫌々仕事をしているという態度が、お客さんに伝わるものです。

私が社員を一番目にあげる理由は、お客様を感動させるような商品を創ったり、サービスを提供したりしなければいけない当の社員が、自分の所属する会社に対する不平や不満・不審の気持ちに満ち満ちているようでは、ニコニコ顔でサービスを提供することなどできるわけないからです。(21ページ)

2.外注先・下請企業の社員

自分の会社の従業員の満足だけを追求するだけでは不十分です。

自分の会社の仕事の一部を担ってくれている外注先や下請企業の従業員に対しても、自社の従業員と同じように接する必要があります。外注先や下請企業に対して、自分たちは発注してやっているんだという態度で接する企業があります。あたかも「客は神」と言わんばかりに買い叩いている企業もあるのではないでしょうか?

でも、坂本さんによれば、外注先や下請企業は、社外社員と同じだということです。だから、自分の会社の従業員と同じように接するのが、当たり前なのです。

もしも、彼らが倒産すれば、自分たちも製品を造れなくなることを理解していれば、傲慢な態度にはならないはずです。

3.顧客

坂本さんが顧客を1番目ではなく3番目にしているのは以下の理由からです。

お客様がいなければ創ればいい。創ることが、会社の本当の使命なのです。
創る人は誰かといえば社員です。自社への不平・不満・不信でいっぱいの社員では、感動とサービスを期待しているお客様に応えることなどできるはずがありません。
社員満足度を高め、外注企業の満足度を高めれば、必然的に顧客満足度も高めることができるのです。(25~26ページ)

顧客の需要に応えるのは誰ですか?それは、自社の従業員や外注先ですよね。もしも、彼らが自社に不満を持っていると、いいものを造ろうとか、質の良いサービスをしようなんて思うはずはありません。従業員や外注先が満足してこそ、顧客満足度は上がっていくのです。

4.地域社会

会社が存続していくためには、社会的存在として認められなければなりません。悪事を働いている会社の商品を買おうなんて思いませんよね。

会社の社会的貢献とは、その地域にとって、なくてはならない存在になることです。そのようになるために企業は、地域社会に対して使命と責任を果たさなければなりません。

現代社会は、物質的に豊かな社会です。だから、昔に比べて現代人は物欲がありません。そのような社会では、お客さんの物欲を満たそうとすることよりも、心に響くような社会的貢献をすることの方が重要になってきます。

「この町のシンボル」「なくてはならない企業」「大切にしたい会社」と思われるためには、地域社会、地域住民に対する使命と責任も積極的に果たさなければならないのです。(27ページ)

5.株主

最後は、株主や出資者の幸せです。なんだかんだといっても、会社の所有者は、資金を提供している株主であり出資者です。だから、彼らの幸せを無視した経営をしている企業は、早晩、立ち行かなくなるでしょう。

株主や出資者の幸せは、物的な面と心的な面の2つがあります。

物的な面とは、現金による見返りですね。配当や株価の上昇ということです。一方の心的な面とは、上記4人に尊敬される企業になって欲しいという願いです。

どんなに好業績で、配当が多く、株価も高かったとしても、良からぬ噂のある企業には、出資をためらうものです。そうなっては、企業も資金調達が難しくなり、下手をすれば倒産ということもあり得ます。

では、具体的にどうすれば、株主や出資者は喜ぶのでしょうか?

その答えは、すでに出ています。自社の従業員、外注先の従業員、顧客、地域社会が満足するように経営することで、自然と株主の幸せは生まれてくるのです。前述の4人が幸せであれば企業の業績が上がり、株主への配当は増え、株価も上がります。また、彼らが満足するということは、その企業が彼らに尊敬されているということですから、株主や出資者の心的な満足度も高まります。

すなわち、株主の幸せとは、先述の4人を満足させた結果もたらされるものなんですね。

業績の悪い企業の5つの言い訳

経営がうまく行かず、業績が悪い中小企業によく見られる言い訳は以下の5つです。

  1. 景気や政策が悪い
  2. 業種・業態が悪い
  3. 規模が小さい
  4. ロケーションが悪い
  5. 大企業・大型店が悪い


上記5つの言い訳の共通点が何だかわかりますか?

これらは、すべて企業外部の環境に対する不満です。つまり、これらの言い訳は、自分たちは悪くなくて、すべて外部環境が悪いんだと言っているのと同じなんですね。

もちろん、中小企業は、外部環境に大きく影響される面はあります。でも、外部環境なんて、自分ではどうすることもできません。だから、自分たちが変わっていく以外に存続していくことなんてできないんですよね。

そして、こういった言い訳をする企業に限って、5人の幸せを無視する傾向にあります。

家族でレストランで食事をした時の領収書を会社の経費にする。業績が悪くなると身内よりも先に従業員を解雇する。こういった公私混同の経営をしていては、社会から受け入れられる企業にはなれないでしょう。

48年間継続して増収増益を達成している寒天メーカー

伊那食品工業株式会社という企業をご存知でしょうか?

伊那食品は、寒天を造っているメーカーです。

現在、寒天を頻繁に食べるという人は少ないのではないでしょうか?僕も、ほとんど食べることはありません。

おそらく、日本全体で寒天の消費量は減っていることでしょう。でも、伊那食品は、昭和33年(1958年)の創業から平成17年(2005年)まで48年間増収増益を達成しています。

これは、伊那食品が従業員の幸せを第一に考えているから達成できたのだと坂本さんは分析しています。

従業員の幸せを第一に考えているから、伊那食品は無理な成長を追うことはしません。景気の良い時には、設備投資に力を入れがちですが、一旦、不景気になると、それは過剰投資に変わってしまいます。景気に踊らされた投資ほど危険なものはありません。それは、一過性のブームについても言えます。

伊那食品は48年間増収増益を達成しましたが、平成18年に減収になったことがあります。これは、テレビ番組で寒天が健康に良いと紹介されたことが理由です。

伊那食品の経営者は、一時的な受注増に対しては、全て断っていました。普通なら、稼ぎ時なので、工場のラインをフル回転してでも受注に応えようとするでしょう。でも、伊那食品では、従業員に過度の負担を強いることになるから、受注を断っていたんですね。

でも、従業員から、お客さんが欲しがっているのだから増産しようと言われて、その通りにしたそうです。ところが、案の定、ブームは一過性のもので、次の年には減収となってしまったのです。

それ以降は、また毎年少しずつ増収増益を続けているようです。


この伊那食品の例から見ても、外部環境に振り回されず、従業員の幸せを第一に考えることが、企業の存続には重要だということがわかりますね。

日本でいちばん大切にしたい会社

日本でいちばん大切にしたい会社

  • 作者:坂本 光司
  • 発売日: 2008/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)