ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

国際的なニュースの背景には宗教が関わっている

ニュースを見ても、その背景を知らなければ、メディアが伝えようとしていることがさっぱりわかりません。

日本国内のニュースだと、アナウンサーの言葉を聞いていれば、なんとなく理解できることがあります。でも、国際的なニュースになると、基礎知識がなければ、内容をほとんど理解できません。ただ、南米で暴動が行ったとか、中東でテロが起こったとか、事件の結果を知るだけです。

国際的なニュースを理解するためには、世界史の知識がどうしても必要になります。特に宗教の知識がないと、なぜ、そのような事件が起こったのかを全く理解できません。

ユダヤ教が原点

国際的な紛争を見ていると、イスラム教がよく出てきます。テロが起こると、イスラム過激派の犯行と報じられることが多いので、イスラム教徒を犯罪組織の一員と思い込んでいる人もいることでしょう。

では、キリスト教はどうでしょうか。キリスト教徒がテロを起こす印象は薄いと思います。だから、キリスト教イスラム教は、まったく異なる宗教だと思われがちです。でも、両者は、ユダヤ教から分派した宗教であり、兄弟のような関係にあります。

駿台予備学校世界史講師の茂木誠さんの著書『ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ』は、100個の疑問に答えながら、世界史の視点から国際的なニュースの内容を解説しています。この1冊を読むだけで、世界中で起こっている紛争の根本的な理由を理解できます。

宗教的な視点で見れば、現在、世界中で起こっている紛争は、ユダヤ教の教えから始まったと言えます。ユダヤ教では、人々が救われるためには、律法という神の掟を守らなければならないとされています。

律法の中では、土曜日を安息日と定め、この日に働いてはいけないとされています。また、何を食べてはいけないかも定められています。土曜日に働くと死刑になるのですから、非常に厳しい掟です。

しかし、「土曜日に働いてはいけないなんて、おかしいだろう」という人物が現れます。それが、イエスです。貧しい人は土曜日でも働かないと生きていけません。また、豚肉以外に食べるものがなくなった場合には、豚肉を食べなければなりません。イエスは、そんな人々が罪人として扱われる律法を否定し、神への信仰があれば救われると説きました。

当然、ユダヤ教の指導者は、イエスを面白く思いません。だから、イエス貧困層を集め、ローマに反逆する危険人物だと決めつけて処刑したのです。

エスは神か預言者

ところが、処刑されたイエスは、その後、復活したとの噂が広がり、弟子のペテロやパウロらによって神に祭り上げられます。ここにキリスト教が誕生したのです。

エスを神とするキリスト教。イエスは人の子であり、神ではないとするユダヤ教

両者の対立の最大の理由はここにあります。

後にユダヤ人は、ローマ帝国に対する反乱に失敗し、土地を追われ、流浪の民となります。彼らは、どこでも生活できるように金銀や宝石を蓄え、金融業も行うようになりました。


エスを神と認めないのはユダヤ教だけではありません。イスラム教もまた、イエスを神とは認めていません。

イスラム教もユダヤ教のように律法が存在し、最後の預言者であるムハンマドが伝えた神の言葉『コーラン』の戒律を守ったものだけが救済されると教えています。そして、イエスは神ではなく、多くいた預言者の一人だと考えます。

キリスト教イスラム教がもめる理由が、なんとなくわかってきましたね。

カトリックプロテスタント

キリスト教には、大きくカトリックプロテスタントがあります。

カトリックは、ローマ・カトリック教会を総本山とし、ローマ教皇が教会を守ってきました。ローマ帝国崩壊後、ゲルマン人によってローマ人は征服されましたが、カール大帝は、彼らを服従させるためにローマ教皇の権威を借り、統治権を認めてもらいます。ここに政教分離という概念が登場します。王権は絶対的なものではなく、神の意思に反すると王は破門されました。

カトリックの教えは、蓄財を罪としました。お金が貯まったら、教会から免罪符を買って、お金を教会に寄付しなければ救われないという教えです。このような教えは、人々が働いてお金を稼ごうとする意欲を奪います。

だから、それを否定するルターとカルヴァンが登場し、宗教改革が行われたのです。彼らは、一生懸命働くことが神の意思にかなうことだと説きます。教会で祈るだけでなく、自分の仕事をまじめに頑張ることが奨励されたのです。この教えを信じる新しいキリスト教徒をプロテスタントといいます。

プロテスタントの勤勉さは、資本主義の土台となり、イギリスやドイツなど経済的に発展したキリスト教国はプロテスタントが広まりました。イギリスはアメリカを植民地としていましたが、現在、アメリカが経済大国であるのは、このプロテスタントの教えと深く関係しています。

一方、スペイン、イタリア、ポルトガルなどの南ヨーロッパの国々はカトリックです。経済的に北ヨーロッパの国々よりも発展していないのは、カトリックの教えと関係しています。そして、スペインやポルトガルの植民地となっていた中南米の国々もまた、カトリックの影響を受けているため、北米ほどは経済発展していません。

政教一致と独裁

キリスト教の影響を受けている国で忘れてはならないのがロシアです。

ロシアは、東ローマ帝国の国教であった東方正教会の体制をそのまま受け継いでいます。東ローマ皇帝は、キリストに代わって国を治めていたので、東ローマ帝国は政治権力と宗教が一致した政教一致体制でした。すなわち、皇帝に反抗することは神への反逆を意味していたので、誰も皇帝に逆らうことができなかったのです。

ロシアの政治が独裁になるのは、東ローマ帝国の影響が今も残っているからです。

中国もまた、政教一致独裁国家です。中国はキリスト教の影響は受けていませんが、中国の古代思想では、天が宇宙全体を支配していると考えます。そして、天が最も徳の高い人物を皇帝として選ぶとされています。

ただし、天が皇帝を選ぶと言っても、その声を聞くことはできません。有徳者とは、つまり武力や資金力で人を集めた実力者のことであり、暴力によって時の皇帝を排除し、自らが新たな皇帝となった者なのです。当然、その統治は独裁となります。これも政教一致の例と言えます。

中国では、最も武力に優れている者が政治を担っているので、誰も反抗することができません。だから、民主化が難しいのです。そして、政権交代しようと思ったら、現政権を上回る武力革命によるしかありません。

イスラム教のシーア派スンナ派

中東で起こった事件がニュースで取り上げられると、イスラム教のシーア派スンナ派スンニ派)の対立が報じられることがあります。

シーア派は、ムハンマドの血統を重視する派閥です。一方のスンナ派は、コーランを重視する派閥です。

世襲を好ましくないと考える人は、コーランを重視するスンナ派を支持しそうです。でも、スンナ派は、さらに世俗主義イスラム原理主義に別れ、こちらの対立が深刻になっています。

世俗主義は、時代に合わせて経典の解釈を変える柔軟な発想です。

ところが、イスラム原理主義は、コーランで決められたことは絶対に変更してはならないという考え方なので、コーランができた7世紀の考えを変えようとはしません。だから、現代の西洋文明を受け入れることは許されません。また、イスラム教は平等を重んじる宗教で、寄付や寄進はイスラム教徒の義務となっています。富の不均衡が生じた場合には、その是正が必要と考え、政権打倒の革命も許されます。


世界中で起こっている事件や出来事には、宗教がかかわっていることが多いです。もちろん、宗教だけで説明できないことはたくさんありますが、人々の考え方の根底には、宗教の教えがあるものです。

なぜ、経済格差が生じるのか。
なぜ、テロが起こるのか。

その背景に世界中の人々の宗教観の違いがあることを知っていれば、国際的なニュースの理解が進むはずです。