ウェブ1丁目図書館

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定年制の廃止は日本の未来を明るくする

個人が入手できる情報は非常に少なく、これから未来はどうなっていくのかを予想するには不十分です。例え、どんなに多くの情報を入手できたとしても、未来をぴったりと言い当てることは不可能です。

でも、多くの人の英知を結集すれば、大雑把にでも、今後、世界がどのように変化していくのかを知ることができるかもしれません。

未来の輪郭をつかむ

ジャーナリストの大野和基さんが、海外の識者にインタビューをした内容が掲載されている『未来を読む』は、世界が今後どのように動いていくのか、その輪郭を大雑把につかむことができます。

もちろん、本書で述べられているような未来が到来するかはわかりません。だったら、読んでも無駄だと思うかもしれませんが、誰もが、何かの行動をする際は、事前に1分後の未来、1日後の未来、1ヶ月後の未来を予想しているのですから、未来がどうなるかを考えずに生きていくことは不可能です。ホモ・サピエンスの悲しき宿命とも言えます。

大野さんが、インタビューをした識者は以下の通りです(敬称略)。

  1. ジャレド・ダイアモンド(進化生物学者
  2. ユヴァル・ノア・ハラリ(ヘブライ大学歴史学部終身雇用教授)
  3. リンダ・グラットン(ロンドン・ビジネススクール教授)
  4. ニック・ボストロム(オックスフォード大学教授)
  5. ダニエル・コーエン(「ル・モンド論説委員
  6. イリアム・J・ペリー(元アメリカ国防長官)
  7. ジョーン・C・ウイリアムズ(カリフォルニア大学労働生活センター初代所長)
  8. ネル・アーヴィン・ペインター(プリンストン大学名誉教授)

人口減少は喜ぶべきこと

現在の日本は少子高齢化が進み、人口減少社会に入っています。

国内では、多くの人が人口減少を悪いことのように考えています。しかし、ダイアモンドさんは、人口減少を喜ぶべきことと述べています。

現在の先進国は、地球が資源をつくるのが追いつけないほどのスピードで、資源を大量消費しています。これは、「持続可能性がないコース」を突き進んでいると言えます。昨今、SDGsという言葉を盛んに聞くようになっていることを考えれば、誰もが、そのことに異論はないかと思います。

このまま、資源を使い続けていれば、資源不足による直接的崩壊、または、資源をめぐる競争が戦争を引き起こす間接的崩壊が起こるとダイアモンドさんは危惧しています。

日本は、資源を輸入に頼っています。人口が多ければ多いほど必要な資源が増えます。資源のない日本にとって、人口減少は福音でしかないのです。

定年制の廃止で労働力を確保

人口が減少すると労働者が少なくなり、経済が悪化するとの懸念があります。

でも、この問題は、定年制の廃止で解決できます。グラットンさんは、人生100年時代になった現代では、60歳は昔の40歳と同じくらいの健康状態を持っていると述べています。60代でも、まだまだ働けるのに定年退職という制度があることで、有能な人材を有効利用できなくなります。ダイアモンドさんも、定年退職制を馬鹿げた制度だと批判しています。

肉体労働ではなく、管理者やアドバイザーとして高齢者を活用できるのですから、定年制の廃止だけで労働力を確保できます。

テクノロジーが仕事を奪う

また、テクノロジーの進歩により、今後は、人々の仕事の場が減っていくことも危惧されています。

AIの発達は、多くの人から職を奪うと予想され、ハラリさんは、それにより「役立たず階級」が大量発生すると述べています。

コーエンさんも、テクノロジーの進歩により、恩恵を受けられる人が少なくなると指摘しています。19世紀後半から20世紀後半までの約100年間は、テクノロジーの恩恵を広く中流階級が享受できました。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、自動車などの機械製品を思い浮かべるとわかりやすね。

しかし、新しいテクノロジーの恩恵は中流階級には行き渡らないでしょう。それどころか、新しいテクノロジーは、人間から仕事を奪っていきます。それにより利益を得るのは、企業を掌握する経営者や投資家です。これからは、テクノロジーが格差を拡大させていくと考えられます。コーエンさんは、また、一生懸命働けば、お金が儲かるように世界は機能していないとも述べています。

移民の受け入れと女性の活用

本書で多くの識者が、日本に対して移民を受け入れるべきだと指摘しています。

人口が減少して労働力が減っていくから大変だと言っているのに移民を受け入れないのは矛盾した発想です。

今、世界は、先進国の物価高により、後進国が先進国に追いつけない状況となってきています。あと何十年待てば、自分たちも先進国と同じ豊かな生活ができるのか、そんな疑問を持つ人たちがすぐに豊かな生活を手にする手段が移住です。先進国に移住すれば、簡単に豊かな生活を手にできるのですから、そう考えるのは当たり前です。

アメリカが人口の割に多くの発明をしているのは、移民を受け入れているからです。海外に移住する人たちは、成功してやろうという野望を持っています。そういう人たちが多く住む国が、新しいものを次々に生み出すのは当然です。

また、昔からずっと言われているのが女性の活用です。海外でも、女性を活用できていない国は多いですが、日本は特に女性が社会進出しにくい国です。女性を活用できない日本で、不利益を受けるのは男性だとグラットンさんは述べています。男性だけが働き生活を守る日本社会は、男性に多大なプレッシャーがかかります。過労死の問題の一因が、女性の社会進出を拒んでいることにあると言えそうです。

人生100年時代では、生涯学習が必要になりますが、それも夫婦が共に働くことで実現しやすくなります。二人とも仕事を持っていれば、収入が途絶えにくいので、どちらかがリ・クリエーション活動に専念し、新たな知識や技術を身につけ仕事に生かすことができます。

子供の時に学校で習った知識だけで、残り80年の人生を生きていくことは困難な時代になっています。常に学び続けるためには、より多くの国民が仕事を持ち、働き続けることが必要になるでしょう。


現在の日本で、少子化対策をすることは益のないことです。それよりも、定年制の廃止、移民の受け入れ、女性の活用に力を入れることを考えるべきです。

未来を予想するのは難しいです。でも、資源が枯渇していく世界での人口増加が、悲劇を生み出すことは容易に想像できます。