ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

価格競争を避けるバリュープロポジション

世の中には、いったいどれだけの商品があるのでしょうか。そして、店頭から消えた商品はどれくらいあるのでしょうか。

古くから販売されているベストセラー商品は、多くの消費者に気に入られているから、今もなおたくさんのお店に陳列されています。多くの消費者に支持されているのですから当然です。

一方で、「あれ好きだったのになくなったな」という商品もあれば、「昔から売ってるけど、誰がこんなの買うんだろう」と疑問に思う商品もあります。いつまでもお店に置かれている商品と消えていく商品は、どこに違いがあるのでしょうか?

コモディティ化した商品は消える

商品が店頭から消えていく理由はいくつもありますが、その中でも、コモディティ化によって消えて行った商品は数えきれないほどあるはずです。

コモディティ化とは、簡単に言うと当たり前になるということです。

マーケティング戦略アドバイザーの永井孝尚さんの著書『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』では、コモディティ化の具体例として、腕時計が挙げられています。昔の腕時計は、1日経てば数分ずれていて当たり前でした。そのような状況で、セイコーが開発したクォーツ時計は、1ヶ月で数十秒しかずれない正確さをアピールした腕時計でした。

ずれるのが当たり前の腕時計の世界にずれない腕時計が登場したのですから、それが商品の売りになりました。腕時計をする人は、正確な時間を知りたいわけですから、ずれない腕時計に魅力を感じるのは当然です。

では、今は、どうでしょうか。以前に比べ、腕時計をしている人は少なくなっています。正確な時刻を知る手段は、腕時計だけではなくなったからです。スマホを見れば、腕時計よりも正確な時間を知ることができます。何より、現在の腕時計は電波時計のようにほとんど狂うことがなくなった商品ばかりなので、時間の正確さは売りになりません。正確な時刻がわかる腕時計は、コモディティ化したのです。

コモディティ化し、売れなくなった商品を売り続けている会社はやがて倒産します。あの商品を最近見なくなったなと思ったら、それはコモディティ化が理由かもしれません。

バリュープロポジションはあるのか

コモディティ化した腕時計ですが、永井さんは、最近よく腕時計の広告を目にすることに気づきました。

いったい、なぜ?

と考えたところ、巷には、様々な機能を持った腕時計が存在していることがわかりました。ジョギングをする人用に開発されたジョギング専用腕時計、登山に必要な機能を搭載した登山専用ウォッチ、世界のあらゆる場所で現地時刻に自動修正するGPSソーラー腕時計。

こういった特定のユーザー層に向けて開発された腕時計があったのです。

コモディティ化した商品を消費者はできるだけ安く買いたいと思うことから、価格競争に陥りやすいです。でも、特定のユーザー層が欲しいと望む商品を扱えば、価格競争に陥いる可能性が低くなります。

そう、消費者は、「自分がほしいと望み、かつ、その商品しかない」という状況になった時にはじめて本気でお金を出そうと考えるのです。このような状況を作り出すのがバリュープロポジションという考え方です。

ジョギング専用腕時計も登山専用ウォッチもGPSソーラー腕時計も、消費者が欲しいと望んでおり、かつそのメーカーだけが提供できるところに強みがあります。「誰がこんなものを買うんだ」と思うような商品には、実は、考え抜かれたバリュープロポジションがあったんですね。

プロダクトアウトかマーケットインか

市場に新商品を投入する時には、生産現場で考えたものを作るプロダクトアウトと市場調査に基づいて消費者が望んでいる商品を作るマーケットインがあります。

プロダクトアウトは、商品中心に考えていくため、消費者のニーズを無視した商品が開発されやすいので失敗します。

それなら、マーケットインが良さそうですが、こちらも、消費者の言いなりになっているだけなので、失敗しやすいです。永井さんは、消費者の言いなりになってできたのが、テレビのリモコンだと述べています。滅多に使わないボタンがたくさん付いていますよね。

バリュープロポジションは、プロダクトアウトでもマーケットインでもありません。消費者も気が付かないニーズを捉えることです。

ジョギング専用腕時計は、消費者のニーズを掘り起こして開発された商品と言えるでしょう。どんな腕時計が欲しいかを消費者にアンケートを取っても、ジョギング専用腕時計を思いつかないのではないでしょうか。自社の強みを生かすためには、ターゲットとなる顧客の絞り込みが必要になります。バリュープロポジションは、顧客の絞り込みが重要なのです。

安くて高品質は安さが重視されがち

本書では、他に安くておいしいプリンも紹介されていました。

1個150円のプリンを店長一人で作って販売しているため、各日で200個しか売ることができません。しかも、それでは赤字とのこと。

行列ができるほどの人気で、いつも200個完売します。お客さんも、おいしいから買っていくのでしょうが、そこには「この味で150円は安い」との評価があります。

安くて高品質は、消費者にはありがたいことですが、売る側にとって困ることがあります。当該のプリン店では、安さを売りにしたことで赤字になっています。しかも、買いに来るお客さんは、安さを重視している人ばかりです。

安くて高品質は、最終的には、安さを求める顧客ばかりになってしまうのです。おいしいプリンを食べたいお客さんを集めるためには、やはり、バリュープロポジションを意識した商品開発が必要になるんですね。


本書では、バリュープロポジションだけでなく、ブルーオーシャンランチェスター戦略、イノベーター理論など、マーケティングの基本的な用語が初学者向きに説明されています。分厚いマーケティングの難しい専門書を読むのは苦痛だと思う方は、まず本書を読んでみると良いでしょう。

この1冊を読むだけで、なぜ自社商品が売れないのか、その理由がわかるかもしれませんよ。