ウェブ1丁目図書館

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聞いたことはあっても何をしているのかわからない公認会計士の仕事内容と魅力

仕業には、様々なものがあります。

弁護士であれば裁判や法律の専門家、税理士であれば税の専門家、不動産鑑定士であれば不動産の評価の専門家。仕業は、その名称から仕事の内容がなんとなくイメージできます。

でも、仕業の中でも、公認会計士がどのような仕事をしているのか理解している人は少ないのではないでしょうか。なんか、カッコよさげで社会的地位が高そうな名称ですが、他の仕業と比較すると、あまり聞くことがありませんし、そもそもお世話になる機会もなさそうです。公認会計士はいったい何をしている人なのでしょうか。

公認会計士の独占業務は会計監査

公認会計士がどんな仕事をしているのかよくわからないのは、公認会計士業界から発信される情報が少ないからでしょう。そんな中、日本公認会計士協会京滋会編著『公認会計士の歩き方』では、10人の公認会計士を紹介しながら、公認会計士がどのような仕事をしているのかを一般向けに説明してくれています。なぜ、公認会計士を目指そうと思ったのか、公認会計士としてどのような仕事を経験してきたのか、インタビュー形式で紹介されており、読みやすい構成となっています。公認会計士に興味があるけど、その業務内容がイメージできないという方は、本書を手に取ると良いでしょう。

公認会計士の本業は、独占業務である会計監査です。会計監査は、簡単にいうと、企業が作成する財務諸表が適正であるかをチェックし保証することです。財務諸表は一般的に決算書と呼ばれていますが、この財務諸表の内容を見て、銀行は融資をし、投資家は株式や社債を買うかを決めます。

もしも、財務諸表に誤りがあった場合、銀行も投資家も、その企業の実態とは異なる内容をもとにお金を貸したり株を買ったりすることになります。本当は非常に業績が悪いのに業績が良いように装った財務諸表を信じて、お金を貸したり株を買ったりした場合、倒産により貸付金や投資を回収できなくなる危険があります。そのようなことがないように公認会計士が財務諸表を監査し、その内容が融資や投資の意思決定に問題がないことを保証しているのです。公認会計士の保証内容は監査報告書という形で公表され、企業が作成する有価証券報告書などに添付されます。

このような会計監査の内容から、会社の経営者や経理担当者以外の人が、公認会計士と仕事をする機会はほとんどなく、それゆえ、その仕事内容がどのようなものかをイメージするのが難しい状況にあるのでしょう。

経営者と話ができる

本書のインタビュー内容でよく目にしたのが、公認会計士になると経営者と話をする機会に恵まれるといったものです。

公認会計士になって数十年の経験を積んで経営者と会話ができるというのではなく、公認会計士として働き始めて間もない時期に経営者と接する機会があるのです。公認会計士が監査をするのは、主に上場会社です。上場会社はどこも大企業ばかりですから、公認会計士になると、大企業の経営者の話を直に聴くことができます。その経験が、公認会計士の仕事に役立っていると述べている方が多いのが印象的でした。社会に出たばかりの20代の若造相手に対等に話をしてくれる大企業の社長なんて、そうそういませんから、確かに貴重な体験です。

また、社長でも、経験したことがある会社は1社か2社というのが多数派であるのに対し、公認会計士は、監査業務を通してたくさんの会社の経営に関する情報に触れる機会があることもメリットとして語られています。何度も転職しなくとも、公認会計士業務を通じて、多くの会社の情報を知ることができるのは魅力的です。

監査法人勤務から様々な仕事へ

公認会計士試験に合格すると、3年間の実務経験を積み公認会計士登録できるようになります。その3年間の実務経験を積む場となっているのが監査法人です。試験合格者のほとんどは、監査法人に入所します。

監査法人で定年まで勤める公認会計士も多くいますが、監査法人をやめて別の仕事をする公認会計士も多くいます。本書では、監査一筋の公認会計士の他にも、スタートアップ、新規上場、事業再生、M&A、事業承継、資金調達などの仕事に関わったり、教授、経営者、税理士として活躍している公認会計士が紹介されており、仕事の幅広さと具体的な業務内容がイメージしやすくなっています。

公認会計士の本業は会計監査ですが、その土台となるのは会計の知識です。会計には様々な種類がありますが、企業会計の場合、企業の活動を貨幣額により、記録、集計、報告する一連の手続きと定義できます。公認会計士は、この企業会計を熟知する、いわば企業のお金のプロであり、それゆえ、企業のお金に関する仕事も監査以外のキャリアとして形成しやすくなっています。

仕業としてのセーフティーネット

仕業全般に言えることですが、公認会計士になることそれ自体が一種のセーフティーネットとなります。

会計監査という独占業務があるからこそ、他の仕事に挑戦しやすいと語る方もいます。仕事に失敗しても、また会計監査に戻れるという安心感が、仕事の幅を広げる機会を与えてくれるということですね。他の商売と違って、登録費用と開業費用で数十万円程度あれば仕事が始められるのも、仕業の恵まれているところだと語る方もいます。もちろん、難易度の高い試験に合格しなければなりませんが、それが参入障壁となっているため、公認会計士になった後に自分が興味がある仕事に挑戦しやすくなるのもメリットの一つでしょう。

また、監査法人は、女性が活躍しやすい職場でもあります。育児休暇も取りやすく、女性としてやりたいことは全てできたと語る方もおり、監査法人で活躍する女性もたくさんいます。妊娠、出産、子育てで積み上げてきたキャリアを諦めなければならない女性は今も多くいますが、監査法人の場合、他の職場と比較して女性がキャリアを形成しやすい環境が整っています。


本書に登場する公認会計士の方のインタビューに目を通していると、皆さん、楽しそうに仕事しているようで、読んでいるこちらまでわくわくした気分になります。

今、公認会計士になるために勉強をがんばっている方が本書を読むと、試験合格後の自分をイメージしやすくなり、さらに勉強に実が入るはずです。進路に迷っている方も本書を読めば、公認会計士に興味がわいてくることでしょう。

もちろん仕事をしている方が本書を読むことも有益です。NISA(少額投資非課税制度)が2024年に新しくなり、多くの人が投資に興味を持つようになっていますが、公認会計士が、自分の資産形成にかかわっていることを理解できるはずです。

本書を手に取り、公認会計士の仕事に興味がわいてきた方は、簿記検定の勉強を始めてはいかがでしょうか。