ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

大人が化学の本を読んでも実生活に役立たないと思うのは大間違い

錆びてぼろぼろになった鉄は、誰もが見たことがあると思います。

鉄が錆びる理由は、一言で言うと酸素がくっつくからです。これを酸化と言います。

でも、酸素がくっつくことだけが酸化ではありませんし、鉄だけが錆びるわけでもありません。食べ物も酸化しますし、酸素がくっつかなくても酸化が起こることもあります。

電子のやり取り

酸化を理解するためには、化学の知識が必要になります。

「化学なんて勉強するのは面倒だし、知っていても実生活で役に立ちそうな気がしない」

こう思っている大人はとても多いです。でも、化学は日常生活の様々な場面で我々と関係しています。美容に興味がある女性やメタボが気になる男性がダイエットに取り組む際も化学は関わっています。

中学時代や高校時代に化学を勉強していなくても、最近ではわかりやすく解説している書籍がいくつもあります。早稲田大学高等学院化学科教諭の竹田淳一郎さんの著書「大人のための高校化学復習帳」も、これまで化学をあまり勉強してこなかった方が理解しやすい内容となっていますね。


鉄が錆びるのは、酸素が鉄にくっつく酸化が起こったからですが、この酸化を簡単に説明すると「酸素原子を得ること」となります。一方、酸素原子を失うことを還元と言います。ある物質が酸化されると別の物質が還元されるので、酸化と還元は同時に起こります。この反応を酸化還元反応と言います。

しかし、酸化還元反応には酸素が関わっていないこともあります。

例えば、熱した銅Cuを塩素Cl₂に入れると塩化銅CuCl₂になります。この時、銅Cuは酸化されてCu²⁺の陽イオンになり、塩素Clは還元されてCl⁻の陰イオンになったと考えられます。

この反応では、酸素は全く登場しませんが、酸化還元反応が起こっています。一体どういうことでしょうか?


酸化還元反応は、視野を広げると「酸素のやりとり」というよりも「電子のやりとり」なのです。つまり、電子を失うことを「酸化された」と言い、電子を受け取ることを「還元された」と考えるのです。鉄に酸素がくっつく時も、実は鉄は電子を失っていたのですね。

「Cu²⁺」の右上に「+」が付いていますが、これは銅Cuが電子を失ったことを意味します。そして、「+」の左隣の「2」は失った電子の数が2つだということです。一方の「Cl⁻」の「-」は電子を受け取ったことを意味します。ここでは、1つの電子を受け取っていますが、「1」という数字は書かず「-」だけを書いておきます。

銅Cuが失った電子は2つですが、塩素Clが受け取った電子は1つです。これでは、銅Cuが失った電子1つが足りません。でも、塩化銅CuCl₂は1つの銅Cuに2つの塩素Clがくっついているので、銅Cuが失った電子は2つの塩素Clが1つずつ受け取ったことになります。

体内でも酸化還元反応が起こっている

酸化還元反応なんてダイエットと何の関係もないじゃないか。だって、痩せるためには脂肪を燃焼させなければならないのだから」

このような声が、いろんな方向から聞こえてきそうです。

しかし、そもそも人間の体内で脂肪が燃焼することはありません。

人間だけでなく動物は、糖質や脂質など炭素Cと水素Hがくっついた化合物からエネルギーを取り出してアデノシン三リン酸(ATP)に保存します。これら糖質や脂質からエネルギーを取り出す際に体内で酸化還元反応が起こっているのです。

すなわち、糖質や脂質の電子を体内で他の物質に渡していき、最終的にATPにエネルギーが蓄えられるのです。まるで、リレーのバトンを次の走者に渡していくかのごとく、体内で電子の受け渡しが行われているわけです。動物は、脂肪に火をつけて燃やした時に発生するエネルギーを利用して活動をしているのではありません。

自称ダイエットの専門家が、「脂肪を燃焼させる」とか「カロリーコントロールが大事」とか言いだしたら、生体内での酸化還元反応の仕組みを知らないと思って間違いないでしょう。


化学は実生活に役立たないと思いがちですが、ダイエットだけを見ても、実は化学は実生活に深くかかわっているんですね。

「この酵素ドリンクを飲んだら痩せる!」と宣伝している商品があったら、その酵素ドリンクが脂肪からエネルギーを取り出す酸化還元反応にどう関係しているのかを考えましょう。

なお、体の中での酸化還元反応の仕組みを詳しく知りたい方は、生化学の本を読んでください。

大人のための高校化学復習帳 (ブルーバックス)

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