ウェブ1丁目図書館

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まちづくりこそ利益重視

地域の活性化というと、B級グルメのイベントを開催したり、ゆるキャラを作ったりといったことがすぐに思いつきます。

そして、こういった取り組みをする場合、補助金をもらうこともよくあります。

しかし、このような発想は、短期的には人が集まって大成功したかのように見えますが、その後、地域に人が集まって来ることはなく一過性の効果しかなかったりします。一時的に盛り上がれば良いという意見もあるでしょうが、地域を活性化したいと考えている人は継続的に人が地域に集まってくる仕組みを作りたいと思っているはずです。

不動産オーナーが地域活性のカギを握る

まちビジネス投資家の木下斉さんは、高校時代に株式会社商店街ネットワークを設立し、学生起業家として脚光を集め、2000年には流行語となった「IT革命」の受賞者になっています。

しかし、この取り組みはうまくいかず挫折することになります。それでも、経営学を学び、再び地域活性化の仕事をするようになります。

まちづくりというと、官主導で行われるものだと思われがちです。でも、まちづくりがうまくいくためには、民間主導、特に不動産オーナーを基本に据えて考えることが大切だと、木下さんは、著書の『稼ぐまちが地方を変える』で述べています。

アメリカの不動産オーナーは、積極的に地域に投資をしています。それは、自分が所有する不動産の価値を高めるためです。不動産オーナーは、多くの財産を持っていますが、不動産投資に失敗した時には多額の損害を被ります。だから、不動産の価値を高めることを真剣に考えます。地域に投資することは、不動産の価値を高めることにつながりますから、不動産オーナーは、まちづくりに真剣に取り組む動機を持っています。

まちづくりを考える場合、「誰が得をするのか」という視点が抜けてしまうことが多いです。そのため、まちづくりにつながらない一時的なイベントを行って終わりというものばかりとなっています。

まとめてコスト削減

不動産オーナーが資産価値を高めるためには、その地域に魅力がなければなりません。特に汚いまちだと、資産価値が上がるどころか下がってしまうことがあります。

熊本市の飲食店街では、毎日、大量の生ゴミが出ており、それを店の前に置いてゴミ回収業者が回収するようになっていました。しかし、これだと路上の各所にゴミの山ができ、そこにさらなるゴミが捨てられたり、カラスが食い散らしたりして、まちが汚くなっていました。

また、建物のオーナーが、個々にゴミ回収業者と契約していたので、ゴミ処理の費用が高くついていました。

そこで、木下さんは、不動産オーナーをまとめ、ゴミ回収業者との契約を1本化し、コストダウンを図ります。その効果は、年間170万円というのですからバカになりません。

このように削減したコストをすべて不動産オーナーに分配すると一過性の効果に終わってしまいます。だから、その3分の1を地域に再投資するための基金として積み立て、継続的にまちへの投資が行えるようにしています。

裏切らない仲間と組む

まちづくりを始めようと思っても、それに賛同する人を見つけるのは難しいものです。

成功しそうな事業であれば賛同者を得やすいですが、失敗しそうだと思うと関わろうとしません。そういう人と組んでも、うまくいかないことは目に見えていますから、まちづくりを真剣に行いたいなら組むべきではありません。それよりも、少数の信頼できる仲間と一緒にまちづくりに取り組んだ方が、うまくいく可能性が高くなります。苦しい時に助けあえる仲間、裏切らない仲間とだけやることが極めて重要だと木下さんは述べています。

また、事業の立ち上げで失敗しないコツは、全てにおいて営業を優先することだとも指摘しています。

空き店舗の改装工事を行ってからテナントを募集するのではなく、まずテナントを募集し、その事業形態や払える家賃から逆算して改装予算を割り出すのが良い方法とのこと。

これまでの地域活性化の取り組みは、人を呼び寄せることばかり意識し、利益がどれだけ出せるのかを考えていないことが多く、それが一過性のイベントで終わる原因でした。地域活性化を継続的に行うためには、利益を上げ続け、次に再投資する必要があります。補助金をもらって何かイベントをするという発想から抜け出さないと、地域の魅力づくりは難しいでしょう。


地域活性化やまちづくりは、官主導で行ったり、補助金を使って行ったりするものだと思いがちです。

しかし、成功するまちづくりは、補助金を獲得することではなく、地域の魅力が上がらないと損する人たちを巻き込んで事業を行うことです。そこに官も民もありません。