ウェブ1丁目図書館

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現代日本の素地は紀元前の世界で出来上がっていた

地球上に人類が誕生したのは700万年前。

遥か昔に生きていた人類がどのような生活をしていたのかは、化石から想像することしかできません。でも、時代が下るにつれて、人類の生活がどのようなものであったのかが具体的にわかるようになってきます。人類が文字により記録を残すことを覚えたからです。

今から5000年ほど前になると、文字による記録が見られるようになり、現代人が当時の人々の暮らしをより具体的に想像できるようになりました。そして、紀元前500年頃からは、人類の文化が飛躍的に発展し、この時の文化が現代の日本人にも大きな影響を与えることになります。

ほぼ同時期に誕生した仏教と儒教

現代日本人に大きな影響を与えているのは、仏教と儒教の考え方です。宗教なんて信じていないという人でも、知らず知らずのうちに仏教と儒教の影響を受けているものです。

ライフネット生命保険株式会社の創業者である出口治明さんの著書『人類5000年史Ⅰ』では、今から5000年前から紀元前1年までの人類の歴史が解説されています。内容は、世界史の教科書のような感じで、淡々と世界中の歴史が解説されています。少々、退屈に感じる部分もありますが、紀元前の世界がどのようなものだったのかをざっくり理解するには良い本です。

紀元前500年頃、インドでは仏教、中国では儒教が誕生しました。

仏教は、ゴータマ・シッダッタが、人間の苦悩の解決の道を説いたもので、8つの正しい道を実践し、煩悩を捨て去ることで苦悩を取り払えるとする教えです。ゴータマ・シッダッタは、出家して悟りを啓き仏陀となります。

儒教は、孔子の教えで、祖先崇拝と身分秩序を肯定し仁による政治を目指すものです。春秋戦国時代の中国では、孔子の教えは容れられることはありませんでしたが、指導者たちは彼の話を聞く度量は持っており、やがて、諸子百家という思想・文化の黄金時代をもたらす素地となりました。

現代日本では、仏教と儒教の教えが融合し、祖先崇拝の手段として墓参りや法要といった習慣が根付いています。目上の人を敬うのも、儒教の教えです。日本では、まだ弥生時代だったころに現代日本人の思想に影響を与える宗教が、インドと中国ですでに誕生していたんですね。

韓非子孟子

現代の日本だけでなく世界中の国々にあるのが法律です。

紀元前の中国では、厳格な法治主義が採用されていました。法家では、韓非子が有名で、徳治主義儒家を批判します。

一方の儒家では、孟子性善説を説き、徳治主義を徹底しましたが、為政者には聞き入れられませんでした。ただ、孟子は、有徳の士に位を譲る禅譲、徳のない君子を武力で追放する放伐という2つの革命思想を認め、後世の中国の政治家に大きな影響を与えています。天罰も孟子の教えの延長線上にあります。

また、性善説性悪説などないとする考え方をする人もいますが、そのような思想も孟子と同時代に登場した荘子によって発展します。荘子は、寓話や警句を多用し、人為を遠ざけてありのままの世界を受け入れることを主張した世界最初の実存主義者です。自然科学こそすべてだとする考えを持つ人に近いですね。

秦の時代の言論統制

中国の秦の時代には、中央政府が誕生しました。

秦は、法による統治を行った点で現代の法治国家と似ています。度量衡や貨幣の統一を行った点でも、現代の多くの国と共通しています。しかし、秦の時代には、焚書坑儒と呼ばれる法家を軸とした思想統制が行われた点で、現代の民主主義国家とは性格を異にしています。諸子百家の思想の自由運動は認められなくなり、儒家の経典も灰となってしまいました。

秦は、人類史上初の中央集権国家です。今も多くの国々が中央政府を持っていることから、秦の時代の政治が受け継がれていると言えます。ただ、思想統制を行っている国はあるものの、民主主義国家では思想信条の自由を認めている点で秦とは異なっています。


現代の日本人の思想や国家の制度は、日本の文明が大して発展していなかった時代に中国やインドで発達したものです。墓参りや法要といった祖先崇拝の思想も、円という貨幣の流通も、日本人が幼児ともいえる時代にすでに大陸で誕生していたのです。

世界の歴史から日本を見ると、日本人の文化や政治の歩みは、日本の幼児期、いや胎児期にすでに決定されていたのかもしれません。