ウェブ1丁目図書館

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植物油は人間には不要。動物油脂こそ健康的な脂質。

世間の健康常識に動物性よりも植物性の方が健康的といった考え方があります。

肉よりも穀物や野菜の方がヘルシーだとか、バターやラードのような動物油脂よりもカノーラ油(キャノーラ油)やごま油といった植物油の方が健康的だとか、とにかく植物性食品こそが、人間の健康を保つために重要だと。

しかし、この健康常識も、近年、徐々に間違っているのではないかと指摘されています。特に植物油については、動物油脂よりも危険性が高いことを多くの人が知るようになっています。

コレステロール悪玉仮説の間違い

植物油が動物油脂よりも健康的だと考えられてきた背景には、コレステロール悪玉仮説があると、脂質生化学者の奥山治美さんは述べています。

コレステロール悪玉仮説は、約60年前にアメリカから輸入されてきたもので、動脈硬化に伴う脳卒中心筋梗塞、その他多くの病気がコレステロールが詰まるせいにされてきました。しかし、奥山さんは、著書の「本当は危ない植物油」で、この仮説を否定しています。むしろ、コレステロール値を上げる飽和脂肪酸を多く摂取している方が、脳卒中も心疾患も死亡率が下がることが明らかになっています。

植物油が健康に良いとされるのは、植物油に多く含まれるリノール酸コレステロールを下げる働きがあるからです。コレステロールが悪玉とされていた時代では、リノール酸を多く含む植物油が健康的な油脂だと考えることは理解できます。しかし、現在では、コレステロールを下げるほど、不健康になることが明らかになっていますので、リノール酸を多く含む植物油を摂取することに健康上のメリットはほとんどないと言えるでしょう。

コレステロールは生命活動に必要不可欠

そもそもコレステロールは、人間の生命活動に必要不可欠な物質です。

人間の細胞は細胞膜で覆われていますが、この細胞膜の材料となっているのはコレステロールです。また、コレステロールは副腎で作られるステロイドホルモンの材料となりますし、脂溶性ビタミンの材料にもなる大切な物質なのです。

それにも関わらずコレステロール値は低い方が良いとするのは、いかがなものでしょうか?薬でコレステロール値を下げ、薬でステロイドを処方する、何となくおかしい気がしますね。

特に高齢になってきたら、しっかりと動物油脂から飽和脂肪酸を摂取すべきです。

コレステロール血症が長く続くと、年を取ってボケたり寝込んだりしやすいのです。
年を取って物忘れなんかを予防するためには、コレステロールがたっぷり含まれる肉、卵、魚を充分に摂りなさい、ということになるでしょう。
動物性脂肪は、そういう意味で「善玉」だったのです。
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リノール酸は炎症を促進する

また、植物油に多く含まれるリノール酸は、必須脂肪酸ではありますが、摂りすぎると炎症を起こすので控えるべきです。現代の日本人は、1日のリノール酸必要量の10倍の量を摂取しているとされていますから、どんなに減らしても減らし過ぎになる心配はないでしょう。

リノール酸を多く摂取してアラキドン酸が増えると、炎症性のホルモン用物質が過剰に作られ、多くの病気を促進します。これを抑えるα-リノレン酸EPADHAを含む)を増やすと、これらの病気が抑えられます(栄養学的な手法)。この変換を抑える多種の薬が、これらの病気を抑えるうえで有効です。そして、マウスの実験では遺伝子工学的な手法で、マウスの体内でEPADHAを作らせアラキドン酸を減らすと、これらの病気が減ることが示されました。
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α-リノレン酸は、最近、注目されている脂肪酸で、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油、フラックス油に多く含まれています。植物油でも、これらは例外的に健康面に良い働きをすると言えそうです。

なお、α-リノレン酸は1日2グラムを摂取しましょうと言われています。

オリーブ油もパーム油も不要

植物油の中では、オリーブ油も健康に良いとされていますが、奥山さんは、これを否定しています。動物実験で用量依存的に発癌促進作用を示したことを理由として挙げています。

また、パーム油(ヤシ油)についても、発癌促進作用があり、脳卒中ラットの寿命短縮作用や内分泌かく乱作用も認められていることから、食用には適さないと述べています。


では、我々が食事で摂取すべき油脂で、健康に良いものはどれなのでしょうか?

これに関して、奥山さんは魚油が最も優れているとし、順にバター、ラード、牛脂が健康的だと考えています。これらの油脂は、リノール酸の含有量が少なく、特に魚油には炎症性疾患予防に有効なEPADHAが含まれている点が優れているとのこと。

また、バターは、動物実験で安全性がきわめて高いことが確認されています。コレステロールを含み、脳卒中予防の効果も期待できます。

ラードも動物実験での安全性が高く、脳卒中予防効果が期待できます。沖縄県民が世界最長寿だった時期には、多くの豚を食べていたことが知られています。しかし、近年、沖縄にも和食文化が入り込んできて、男性の平均寿命は全都道府県の中で真ん中まで下がりました。

インドでは第二次世界大戦後、羊乳から作ったバターの摂取を減らし、植物油を増やしましたが、心疾患や癌が増えていました(「インドパラドックス」と呼ばれています)。
沖縄県では一九七二年に復帰後、ラード(豚脂)から植物油を増やす方向に変えましたが、長寿ランキングが下がり男性では現在、都道府県の中ごろです。そして、若者の不慮死がその一因となっています。
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不慮死とは、事故、自殺、殺人による死です。

リノール酸摂取量の増加に伴って殺人率が上がっており、疫学的にリノール酸摂取の多い国ほど殺人率が高いとのこと。ただ、これは統計的な結論です。他の原因もあるでしょうから、一概にリノール酸摂取量だけが殺人率に影響を与えているとは言えないでしょう。

健康を前面に出した宣伝は危うい

20世紀までは、植物油が動物油脂よりも健康的だと信じられていました。

しかし、21世紀になってからは、植物油の危険性が明らかになり、動物油脂に多く含まれている飽和脂肪酸コレステロールが健康上のリスクを高めないことがわかってきました。

それでも、いまだにコレステロール飽和脂肪酸は悪だと言われ続けています。

食品メーカーは、それを信じて低コレステロールの植物油やコレステロール値を下げる食品を作り販売しているのですから、いきなりコレステロールが健康に悪影響を与えないと言われても、すぐには生産をやめることはできないでしょう。健康に良いと謳って販売してきたのですから、後から植物油は健康に悪いことが分かりましたとは言えるはずがありません。

最近の食品や飲料のCMは、やたらと健康を強調しています。しかし、科学の進歩により、健康と思われていたものが病気の原因だとわかるときだってあります。

そういったリスクを考えると、食品メーカーや飲料メーカーは、健康を強調した売り方を控えた方が良さそうです。