ウェブ1丁目図書館

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外部環境が変化しても体液や体温を維持調節して適応する生物のホメオスタシス

日本の風土では、1年を通じて30度ほどの温度変化が見られます。北国だと、もっと大きな温度変化になるでしょう。これだけ外気温に変化があるのに人間の体温は、36度から37度あたりで安定的に維持されています。

また、真水を飲もうが味噌汁を飲もうが、人間の体液の濃度も一定の幅に保たれています。

このように外部環境の変化に適応し生存に最も適した生理状態を維持する機構をホメオスタシス(恒常性)といいます。

体液調節の主役は腎臓

日本比較内分泌学会の「ホルモンから見た生命現象と進化シリーズⅤ ホメオスタシスと適応-恒-」によれば、「ホメオスタシスは、移り変わる環境変化に対して、動的に揺れながら内部環境を生存に適した一定範囲内に保持しようとする状態」と説明されています。

体内で、細胞が正常に機能するためには、体液(細胞内液と細胞外液)が、一定の範囲に保たれていなければなりません。そして、体液調節に重要な働きをしているのが、腎臓です。

腎臓は尿を作るので、老廃物を体外に排泄するための臓器だと思われがちです。確かに老廃物の排泄は、生物が生きていくために重要な行為ですから、それは腎臓の重要な働きです。

しかし、腎臓は、ただ老廃物を捨てるだけでなく、いったん作った原尿から栄養素や水分を再吸収し、体液の濃度を一定に保つ働きをしていることも理解しておかなければなりません。

哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、両生類など、腎臓の形に違いはあれど、体液調節の機能を果たしている点では共通しています。

例えば、魚類だと、淡水魚と海水魚では、生息環境が異なっていますが、どちらの場合も腎臓で体液調節が行われています。

川は海よりもミネラルが少ないため、淡水魚は体液が水で薄まるのを防がなければなりません。そこで、淡水魚の腎臓は、体液を高張に保つために、血液を濾過して薄い濃度の原尿を作ります。そして、原尿からナトリウムと塩素を再吸収し、体液を一定の濃度に保っています。

一方の海水魚は、環境よりも低張な体液を維持するために水分の損失を防がなければなりません。飲み込んだ海水や食物には過剰に塩類が含まれているので、その排出、特にマグネシウムとカルシウムの排出のために腎臓は働いています。

ちなみに淡水と海水を往来する広塩性魚は、淡水中では高張、海水中では低張な体液濃度を維持するようになっています。

内温動物と外温動物

気温の変化に対応する体の仕組みは、どうなっているのでしょうか。

哺乳類や鳥類は、外気温の変化に関係なく、ほぼ一定の体温を維持できることから恒温動物と呼ばれています。これに対して、爬虫類、両生類、魚類は、外気温に応じて体温が変化することから変温動物と呼ばれています。

しかし、恒温動物でも冬眠する哺乳類は体温が常に一定ではないこと、変温動物もまったく体温調節をしないわけではないことから、現在では、内温動物、外温動物という呼称が使われ始めています。

例えば、海に棲むマグロは、外気温に影響を受けることから、従来の呼称だと変温動物とされます。ところが、マグロは、成長とともに体温調節能が向上し、体温を維持できるようになります。

マグロは、体表面と体内部との間にあって深部血合筋を包み込むように発達した奇網を持っています。奇網は、血管が絡み合った構造をしており、動脈の毛細血管と静脈の毛細血管が多数平行に並んでいます。そして、動脈血と静脈血は薄い壁を挟んで反対方向に流れます。

動脈血は外水温の影響を受けるので温度が低いのに対し、静脈血は筋運動によって温められるので温度が高くなっています。そのため、静脈血が動脈血を温める働きをし、また、動脈血が静脈血を冷やす働きもしているので、マグロの体温は常に環境温よりも高く保たれる仕組みとなっています。


内温動物は体温を主に自らの代謝によって作り出した熱から得ている動物、外温動物は体温を主に外界に依存している動物と分類したものであり、両者の違いは、体内で作られる熱量の差となります。

なお、内温動物でも、外部環境や生理状態で体温が大幅に異なる動物を異温動物と呼ぶ場合もあります。

ヒトの体温調節

我々ヒト(人間)は、低温環境では、頭、胸、腹といった体の中心部の体温は37度に保たれていますが、手先は28度、すねは31度と低くなります。一方、高温環境では、ほぼ全身が37度になります。

寒い時には日当たりの良い場所に行って体を温め、暑い時には日陰に行って熱を冷ますといった行動は、ヒトだけでなく多くの動物で見られる体温調節です。これを行動性体温調節といいます。


行動性体温調節に対して、主に自律神経に支配された臓器で体温の維持や調節を行う方法を自律性体温調節といいます。

自律性体温調節での熱を生み出す仕組みには、「ふるえ熱産生」と「非ふるえ熱産生」の2種類があります。ふるえ熱産生は、骨格筋の周期的な収縮による熱産生で、寒い時に体をぶるっと震わせるのが、その例です。一方の非ふるえ熱産生は、骨格筋の収縮によらない熱産生のことです。

非ふるえ熱産生の主役となるのは、肩甲骨間や腎臓周囲などに分布する褐色脂肪組織です。

褐色脂肪組織を構成する褐色脂肪細胞は、ミトコンドリアを多く含んでいます。ミトコンドリアは生体内のエネルギー工場ですが、褐色脂肪細胞内では、脂肪酸から取り出した化学エネルギーをアデノシン三リン酸(ATP)合成を経ずに直接に熱へと変換し、散逸消費する特徴を持っています。


熱を放散する仕組みには、蒸散性熱放散と非蒸散性熱放散があります。

蒸散性熱放散は、簡単に言うと汗をかいて熱を冷ます方法です。汗が体表面で蒸発すると、気化熱によって体熱が奪われ体温が低下します。イヌの場合は、ハッハッハッと浅く早く呼吸をする「あえぎ呼吸」で、口腔内や気道表面の水分を蒸発させて体温を低下させています。

非蒸散性熱放散は、水分の蒸発をともなわない放散方法です。この方法は、血管の収縮と弛緩で熱の放散を調節します。

血管を収縮させると、体表面への体熱の移動が抑制されるので、熱の放散は小さくなります。一方、血管を弛緩させると、血管径が拡張するので、皮膚血流量の増加により体熱の放散が促進されます。


動物には、外部環境に適応するための様々な機能が備わっており、それら機能によりホメオスタシスが維持されています。したがって、少々の外部環境変化では健康を損ねることはありません。

しかし、生活習慣の中で、ホメオスタシスの維持に重要な働きをしている臓器を酷使していると、やがて、その臓器が衰え外部環境の変化に対応できなくなるでしょう。

例えば、体液調節を行っている腎臓は、終末糖化産物(AGEs)によって破壊されますが、このAGEsは高血糖が原因でブドウ糖とタンパク質が結合してできます。また、ブドウ糖代謝産物であるソルビトールも腎臓を傷害します。

ヒトの血液中に含まれるブドウ糖はたったの4グラムでしかありません。茶碗1杯の白米に含まれる糖質は約50グラムで、小腸から吸収される時にはブドウ糖になっています。

腎臓へのダメージを気にしない方は、どうぞ白米を召し上がってください。