ウェブ1丁目図書館

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生物の体内時計はホルモンと関係がある

我々人間は、時計という便利な道具によって時刻を知ることができます。夏の午後7時は明るく、冬の午後7時は暗いですが、時計を見れば周囲の明るさに関わらず、今が午後7時だとわかります。

もしも、この世から時計がなくなったとしたら、正確な時刻を知ることはできないでしょう。しかし、生物には体内時計があるので、正確な時刻はわからなかったとしても、おおよその時刻を把握することは可能です。

では、生物の体内時計はどのような仕組みになっているのでしょうか。そのカギを握るのはホルモンです。

ホルモン分泌にはピーク時刻がある

ホルモンは、生体内を流れる情報伝達物質です。睡眠と関係するメラトニンや血糖値を下げるインスリンは、その代表であり、他にも様々なホルモンが状況に応じて血液中を流れます。

日本比較内分泌学会の「ホルモンから見た生命現象と進化シリーズⅡ 発生・変態・リズム-時-」では、ホルモンが体内時計と関係していることが解説されています。

ホルモンは、状況に応じて分泌量が増えたり減ったりします。そのため、各ホルモンは、何らかの目的を持って分泌量が調整されていると考えられます。

また、各ホルモンには、分泌のピーク時刻があり、これが体内時計と関係していると考えられています。

松果体から分泌されるメラトニンや下垂体前葉から分泌される成長モルモンは夜間が、分泌のピーク時刻です。副腎皮質から分泌されるコルチゾルは午前7時から8時、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは午後12時から2時がピーク時刻です。

このように各ホルモンには、分泌のピーク時刻があることから、約1日を周期とした概日リズム(サーカディアンリズム)を制御する働きを持っているようです。そして、概日リズムは、地球が約24時間周期で自転し、昼と夜の交代を繰り返していることに対応するために獲得された機能だと考えられています。

概日リズムの5つの性質

概日リズムには、生物種を越えた共通の性質が5つあります。

  1. 自由継続性
  2. 同調性
  3. 位相反応性
  4. 温度補償性
  5. 生得性


自由継続性は、体内時計の時刻合わせができない環境においても、24時間から少しずれた周期でリズムが続いて行くことです。これをフリーランと言います。

同調性は、明暗など体内時計をリセットできる刺激により24時間リズムに同調させる性質です。

位相反応性は、フリーラン状態で同調因子による短時間の刺激を加えると、体内時計の時刻に応じてリズムの位相が前進または後退する性質です。

温度補償性は、温度変化に対して周期が大きくずれない性質です。

生得性は、生まれた時から体内時計を持っていることであり、その後に経験する明暗に応じて獲得されるものではありません。

鳥類の体内時計

体内時計については、様々な生物で研究されています。

その中でも、鳥類は空を飛ぶため、洗練された季節適応能力を有することが知られており、体内時計の研究によく利用されています。

多くの生物は、日長の情報をカレンダーとして利用し季節変化を把握しています。このように日長の変化に対して生物が示す反応を光周性(こうしゅうせい)と言います。渡り鳥の越冬は、光周性の典型ですね。

ウズラやニワトリは、春から夏にかけて産卵しますが、それにも光周性が関わっているようです。

ウズラの生殖腺の発達には、連続した明期は必要ではなく、光感受相と呼ばれる特定の時間帯に光を浴びることが重要だそうです。短日条件では甲状腺ホルモンが不活化しますが、長日条件では活性化します。このことから、春から夏にかけて活性型の甲状腺ホルモンの濃度が上昇し、季節繁殖が制御されていることが、研究で明らかになりました。


ニワトリが朝にコケコッコーと鳴くのもまた、体内時計と関係しています。

ニワトリが、なぜ朝に鳴くのかわかったのは、つい最近のことのようです。

ニワトリは朝以外にも鳴くことがあります。そのため、ニワトリは自身の体内時計に制御されてコケコッコーと鳴くのか、周囲の光や他のニワトリの声という刺激によって制御されているのかは不明でした。

ところが、12時間点灯と12時間消灯の明暗条件下で、点灯前にニワトリが予知的に鳴き始めることがわかり、コケコッコーはニワトリ自身の体内時計によって制御されていることが示されました。また、光の照射や他のニワトリの鳴き声に同調して、コケコッコーと鳴くことがありますが、それも朝付近の時刻でしか生じないことがわかり、ニワトリのコケコッコーは自身の体内時計に制御されていることが明らかになりました。


現代人は、時計が刻む時刻に合わせて、日々の生活を組み立てています。出社時間は午前9時、退社時間は午後6時といったように夏でも冬でも同じリズムで生活をしている人がほとんどでしょう。

もしも、この世から時計がなくなり、体内時計でしか時刻を知ることができない場合も、同じように午前9時に出社、午後6時に退社するのでしょうか。あるいは、暗くなる前に退社するようになり、夏は長時間労働、冬は短時間労働になるのでしょうか。

最近では、生活習慣病になるとホルモンの分泌を抑える薬が処方されますが、このような薬はヒトの概日リズムを壊し、様々な不具合をもたらすのではないかと不安になるのであります。

発生・変態・リズム: 時 (ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ)

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