金メダル、銀メダル、銅メダル。
オリンピックなどのスポーツの大会で、上位3人に贈られるメダルが金、銀、銅です。1番なら金、2番なら銀、3番なら銅と、順位がメダルの色で表されています。
例えば、その競技がレスリングだったとして、この場合、上位3人の選手のことを「三大レスリング選手」と言うようなことはありません。他の事柄でもそうです。日本人が決めた「三大〇〇」には、1番、2番、3番と優劣を付けているものは少ないですね。
「三」は調和の数字
作家の井沢元彦さんの著書「逆説の日本史 別巻3 ニッポン[三大]紀行」では、「三」は調和を表す数字だと述べられています。
古代から「三」という数字は、一種の調和を表わす「霊数」であるとされてきた。
なぜ、「三」がそうなるのかといえば、「一」では他に何もないから「調和」にはならない。そもそも「調和」とは「一つの物を他と比べてみた場合、互いの性質が衝突しないで新しい美しさ(よさ)を見せること(『新明解国語辞典』三省堂刊)」だから「複数のもの」がないと成立しないのである。
しかし、「二」もまずい。
なぜなら、二では「白と黒」「善と悪」のように、対立が基本になってしまうからだ。
だから「三」が調和の基本数になったのである。
(262~263ページ)
日本人は、古くから「和をもって貴しとなす」ことを良しとする風潮があります。
そのため、日本の「三大」では、3つのものに順番を付けることはしないのでしょう。それは、争いを招く原因になりますからね。
日本三大河
日本の「三大」は数多くあります。日本三大夜景、日本三大島など。日本三景や日本三名園も「大」はつきませんが「三大」と意味は同じです。
日本の川にも「三大」があり、それは、日本三大河と呼ばれています。
利根川、筑後川、吉野川がその日本三大河です。日本最長の信濃川は入っていませんし、北海道の石狩川も入っていません。
利根川は坂東太郎、筑後川は筑紫二郎、吉野川は四国三郎と呼ばれ、それぞれ本州、九州、四国を代表する河川を表しているのだろうと井沢さんは述べています。そして、北海道の石狩川が三大河に入っていないのは北海道が明治以降に正式に日本の領域に入ったからであり、信濃川が入っていないのは近代以降太平洋側が偏重されたからだと指摘しています。
日本三大河。
これらは、全て暴れ川です。
利根川はかつて東京湾に注いでいましたが、江戸幕府が水害対策のために利根川から多くの水路を江戸に引きました。この支線が今日では堀と呼ばれています。
筑後川も、1953年に史上最大級の大洪水をもたらした暴れ川です。
吉野川も筑後川ほどではないですが、暴れ川として知られています。
日本三大河は、日本三大暴れ川だったんですね。
日本三大珍味
「美味」とは言わないところがミソです。味の好みは色々ですから、三大美味を作ると争いが起こりそうです。
カラスミは、ボラの卵を塩で漬けて乾燥させたものです。メンタイコのようではありますが、カラスミの方が高級で安く手に入れることはできません。
コノワタは、ナマコの腸の塩漬けです。
ウニは、越前ウニを指しています。生ウニではなく加工されたウニです。
カラスミも、コノワタも、ウニも、どれも加工されている点で共通しています。そして、それぞれの加工には手間がかかっています。
カラスミは、ボラの新鮮な卵を1週間塩漬けして取り出し、汚れを落としてから再び漬け込みます。さらに水で塩抜きして重しで形を整え、20日程度自然乾燥させます。
コノワタは、100グラム作るのにアオナマコを20~40匹も使います。アオナマコ1匹から取り出す腸は少量で、海に戻すと腸は再生します。アオナマコを殺さないように腸を取り出すのはまさに職人技です。
越前ウニは、バフンウニの精巣と卵巣を水洗いした後、塩を混ぜて味を調えたものです。
どんなに味が良くても、手間をかけて作られた食品でなければ三大珍味にはならないのでしょうね。
よく好きな食べ物を訊ねる人がいます。それに答えた人が好きな食べ物を3つ列挙すると、さらにその中から最も好きな食べ物は何かを聞こうとします。
しかし、それを聞くのは野暮というもの。「三大〇〇」は優劣をつけないものなのですから。