ウェブ1丁目図書館

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サイドビジネスこそ成功させなければならない

日本社会でも、徐々に副業が奨励されるようになってきました。

副業は、本業の片手間でする仕事と考えている人が多そうです。また、本業に余裕が出てきたから、空いている時間でてっとり早くできる仕事が副業というイメージも強そうです。

そして、何より副業はおまけなのだから成功しなくても問題ないと思われがちです。

失敗を許されない仕事は成功しにくい

芸能界を引退した元タレントの島田紳助さんは、タレントとして活躍している時から様々なサイドビジネスを展開していました。

初めてサイドビジネスをやったのは25歳の時だと、著書の「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」の中で述べています。漫才ブームの最中に始めた服屋は大成功。その後も、様々なサイドビジネスを展開し、どれも成功させてきました。

紳助さんは、サイドビジネスを儲けるためのビジネスではなく、人生を豊かにするものと考えています。お金は自分の本業で稼ぎ、そのお金で面白いことをやるから自分も含めてビジネスに関わるみんなが幸せになるのだと。

紳助さんが、これまでビジネスで負けたことがないのは、それが本業ではないからだと述べています。

本業でやる以上は、成功ということ以上に、気になることがあるはずだ。
それはつまり、失敗はできないというプレッシャーだ。
成功を目指すことと、失敗できないというプレッシャーは、よく似ているようで、実際には180度の方向性の違いがある。
失敗したくない気持ちがあると、人間はどうしても周りが気になる。同業者がどんなやり方をしているか、世間では何が売れているか。そういうことが、まず気になってしまうものだ。
(17ページ)

失敗できないプレッシャーは、人をより安全な方向へと進めようとします。しかし、それでは、ありきたりのお店となり、失敗しないけども成功もしないビジネスになります。

そう考えると、副業の気楽さは、商売を成功に導きやすいと言えそうです。

失敗しないサイドビジネスでは意味がない

成功しなくても、失敗しないサイドビジネスであれば十分だと思う方もいるでしょう。

本業であれば、確かに家族を養うために失敗をしない仕事を選ぶことが大切です。しかし、サイドビジネスとして商売を始めるのなら、それでは意味がないと紳助さんは語っています。

従業員をはじめとして、そのお店に関わる人間が、みんな幸せにならなければ、わざわざ本業でもないビジネスに手を染める意味がないと思うのだ。そしてそのためには、少なくとも店で働く人に十分な給料を払ってあげられるくらいには、きちんと利益を出さなければいけない。なんとか食べていけますという程度なら、やらない方がマシだ。つまり、サイド・ビジネスだからこそ、成功させなきゃいけないのだ。
(21ページ)

紳助さんは、サイドビジネスを展開する時、常に仲間と一緒に成功することを重視しています。

商売は、顧客満足度を高めることが成功の鍵だと言われます。それは当然のことです。

茶店でコーヒーを頼んだから、その横にチョコレートをつけるサービスは簡単に顧客満足度を高める方法です。でも、そういうことは他のお店も真似をします。名古屋の喫茶店のモーニングは、コーヒー1杯を頼んだら、トーストやサンドイッチやサラダがたくさん出てきます。一つの喫茶店が、そのようなサービスを始めたら近くの喫茶店も追随しなければ、お客さんが来なくなってしまいます。だから、どの喫茶店でも、モーニングは派手にしなければならなくなります。

しかし、そのやり方には限度があります。だから、顧客満足度という視点での差別化は、とても難しいことなのです。

紳助さんがサイドビジネスで成功するのは、従業員満足度を上げることを重視してきたからだそうです。

従業員満足度が高い職場ほど、そこで働く人たちが良いサービスを提供するものです。従業員が楽しく働く職場づくりが顧客満足度を高めます。そして、何より一緒に仕事をする仲間全員が幸せになるのですから、これこそサイドビジネスをする意義となります。

サイドビジネスだから常識破りができる

紳助さんは、ある日、フォークソングのCDのコマーシャルを見ている時、「これをいったい誰が買いよんねん」と思ったそうです。しかし、毎晩、同じコマーシャルを見ていると、それなりの宣伝費をかけていても利益が出ているはずだと考えるようになりました。

そこで思いついたのが、会員制のフォークソングバーです。このフォークソングバーは見事に当たり、想定していた中高年世代だけでなく若い世代のお客さんまで来るようになりました。ただ、フォークソングバンドの生演奏中は、お客さんが曲に聞き入ってメニューを頼まなくなったことが誤算だったそうです。

またある時は、石垣島の北端に喫茶店を出店することを思いつきます。「なんでそんな端っこやねん。それはあまりにも遠いぞ」と人に言われても、遠いからこそ喫茶店を作る価値があると考え、本当に喫茶店を出しました。

他にも、若い友人にラーメン店を始めさせるとき、麺が美味しいラーメン屋、具が美味しいラーメン屋、スープが美味しいラーメン屋の3つすべてで修業させます。麺、具、スープの3つが美味しければ最高のラーメンができるに違いないと思ったのですが、結果はとんでもなく不味いラーメンができあがったそうです。紳助さんは、その時にラーメンの奥深さを実感します。

紳助さんは、サイドビジネスを展開する時、常識破りなアイデアを出しますが、天現寺にお好み焼き屋を出店した時に後輩芸人がとった行動ほど常識破りなことはないでしょう。

紳助さんと後輩芸人の方は、有名なお好み焼き屋さんの前に出店を計画します。後輩芸人の方は、お好み焼きの素人ですから、お好み焼き屋の経営どころかお好み焼きもろくに焼けません。そこで、その後輩芸人の方は、ライバルのお好み焼き屋さんに行ってノウハウを教えてもらいます。


「すんませんけど、この料理はどうやって作るんですか?」
「一品料理も出してはるけど、原価率はいくらぐらいなんですか?」


普通に考えたら、将来、ライバルになるかもしれない相手にそんな重要なことを教えるはずがありません。そもそもライバル店にそのようなことを聞きに行くことが常識破りです。

ところが、そのお好み焼き屋さんは、親切に質問に答えてくれ、またこの辺りはランチ営業は儲からないという情報も教えてくれました。さらに開店時には、お祝いまでしてくれ、従業員全員で食べに来てくれたりもしたそうです。

このような常識破りな出店の仕方ですが、紳助さんは、秋葉原電気店街が電気屋1軒だけなら買い物に来ないけども、多くの電気店が並んでいるから、たくさんの買い物客が来るのと同じだと考えています。天現寺も、美味しいお好み焼き屋が軒を連ねていれば、多くの人がお好み焼きを食べに行くなら天現寺に行こうと考えるようになります。

そうなれば、既存店にも、より多くの人が来るようになりますから、近隣にライバル店ができることは集客力アップにつながるのです。

お金は何かをするための道具

日本人は、お金の話題を避ける傾向にあります。

お金のことばかり話していると意地汚いと思われがちです。しかし、紳助さんは、お金についてこう述べています。

汗を流して働くことが尊いなら、その汗の結晶であるお金もまた尊いのだ。だからお金は大切にしなきゃいけない。
ただし、汗が労働の目的ではないように、お金もまた人生の目的にはならない。
お金は確かに便利なものだ。だけど便利ということは、つまりそれが手段であって、目的ではないということでもある。
(127~128ページ)

紳助さんにとって、お金は仲間と一緒に幸せになるための道具なのでしょう。

紳助さんはまた「おもろい高校がないように、おもろいスナックもない」と語っています。

世の中には楽しい場所はなく、楽しくする人がいるのです。仲間と一緒に大爆笑するためには、自分たちで何かを考えなければいけません。

その何かが、紳助さんにとってはサイドビジネスなのでしょう。