6つに割れた腹筋。いわゆるシックスパックに憧れる男性は多いです。
しかし、中年になると、理想とは真逆のお腹になっているもの。いつのまにこんなに丸くなってしまったのか。付き合いで、飲みに行く頻度が増えたことが原因のようにも思えるし、仕事が忙しくて運動不足になっていることも関係しているような気がします。
「こんなことでは、さらに丸くなってしまうし、それ以上に健康にも良くなさそうだから、ここらで本気出して腹筋を割ってみるか」
そんな心の声が聞こえてきそうな通勤電車の車内。
腹筋には生き方が表れる
パーソナルトレーナーの吉田輝幸さんは、プロのアスリート、アーティスト、パフォーマー、経営者などのトレーニングを指導しています。EXILEのメンバーも、吉田さんのクライアントです。
吉田さんの著書「腹筋を割る技術」では、腹筋には「その人の生き方が表れる」と述べられています。
肉体は、自分に与えられた資本であり、日常生活、仕事、人間関係の中で、必ず使わなければなりません。仕事でも、人間関係でも、より良くしようと思うなら、肉体という資本を磨き上げ、さらなる高みを目指さなければなりません。
すなわち、体を鍛えることは、自分の肉体に意識を向け、資本を充実させることにつながるのです。
また、年を取ると、運動機能に障害が出て、介護や支援が必要なロコモティブシンドロームになる場合がありますが、筋肉を鍛え、筋肉量を増やすことで、ロコモのリスクを下げることが可能です。
運動で高いパフォーマンスを実現するために体幹(コア)の重要性が指摘されるようになっていますが、腹筋はまさにコアの要であることから軽視できません。例え運動をしていなくても、コアがしっかりとしていなければ、デスクワークや家事の時に疲れやすくなるものです。
腹筋が「生き方の表れ」との表現は、決して大げさではないのです。
腹筋はすでに割れている
バキバキに割れた腹筋を目指すぞ。
と、勢い込まなくても、すでにあなたの腹筋は割れています。腹筋は構造上、もともと割れているのです。ただ、流線形のあなたのお腹は、皮下脂肪が邪魔をしてシックスパックが見えないだけです。
だから、脂肪を減らすこと、つまり、食事量を減らせば自然と6つに割れた腹筋が浮き上がってくるのです。
しかし、ただ食事量を減らすと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまいます。筋肉量を減らさず、脂肪をそぎ落とし、腹筋が姿を現すように体型を整えていかなければなりません。
上体起こしだけでは腹筋は割れない
筋肉量を減らさず腹筋を割るには、やはり腹筋を鍛えなければなりません。
よく知られている腹筋のトレーニングは、仰向けに寝転び、上体を上げ下げする上体起こし(シットアップ)です。しかし、多くの人がやっている上体起こしでは、腹筋は割れません。
上体起こしでは、上体を上げていく際に背中を丸めなければなりません。でも、多くの人が背中が伸びた状態になっています。また、上体起こしで鍛えられるのは、腹筋の上側です。下腹部の筋肉も鍛えるためには、反対に足を上げるレッグレイズというトレーニングをする必要があります。
さらに腹筋を効率的に鍛えるためには、背中とおしりの筋肉も鍛える必要があります。お腹側と背中側の筋肉は表裏一体であり、両方を鍛えることで、体幹が強化されるのです。
お腹に脂肪がつく原因は糖質
腹筋を割るためには、食事にも気を付けなければなりません。
食事に気を付けるというと、食事量を減らすことと考えがちですが、そうではありません。腹筋を割るためには、タンパク質を多く摂取する食事に切り替えることが重要となります。
1日に必要なタンパク質量は、体重×1.2gとされています。激しい運動をしている場合は体重×2gのタンパク質が必要です。
体重70kgの人なら、84gのタンパク質を摂らなければなりません。ササミであれば100gあたり24gのタンパク質を補給できますが、肉類でさえ100gあたり15~20g程度のタンパク質しか含まれていないので、体重×1.2gのタンパク質補給は意外と難しいです。
吉田さんは、1日6食に小分けして食事をすることをすすめています。1回の食事でのタンパク質の吸収量には限界があるので、タンパク質は少量を頻回に摂る方が効率的です。
さらに腹筋を割りたいなら、米や小麦など糖質が多く含まれている食品は控えなければなりません。
あなたのお腹が流線形なのは、実は糖質を毎日食べていることが原因です。糖質は体内に入るとエネルギー利用されますが、余れば中性脂肪となって蓄積されます。特に気を付けなければならないのが果物です。果物に含まれる果糖は、吸収されると速やかに中性脂肪に変わるので、腹筋を割りたい方だけでなく、痩せたい方にとってもNG食材です。
「腹筋を割る技術」には、理論的なことの他に腹筋を割るためのトレーニングとストレッチも紹介されています。2週間で腹筋を割る短期決戦プログラムも掲載されていますが、長期的にトレーニングを継続できるようにすることの方が大切です。
計画を立てて、トレーニングを繰り返すこと。でも、計画通りにできなかったからと言って、嘆く必要はありません。吉田さんは、できなかった事実を受け止め、その原因を分析し、次につなげることが大切だと述べています。
また、計画通りにトレーニングをできた時や上体起こしの回数を増やせたときは、自分をほめることも大切です。
腹筋を割る努力は、ただ見栄えをよくするだけではありません。短時間で効率的にトレーニングをすること、それを継続することは、仕事など様々な場面で活きてきます。
アスリートやパフォーマーが本業に集中するために無駄な時間を削っていくのと、忙しいビジネスパーソンがハードワークの中で体づくりをしていくのは本質的には変わらないでしょう。必要なものだけにターゲットを絞って集中して行ない、短い時間で結果を出せれば、モチベーションが上がってまた継続していくことができます。体づくりで得られた達成感や自信は、仕事にも活かされ、好循環が生まれていきます。(195~196ページ)
- 作者:吉田 輝幸
- 発売日: 2014/07/30
- メディア: 新書