ウェブ1丁目図書館

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繁殖を終えたら死ぬのが生物の宿命

生物の死に時はいつなのか?

その答えは繁殖を終えた時です。オスのカマキリが、ことを終えるとメスのカマキリに食べられるというのは、その典型です。でも、繁殖を終えた時が死に時というのは、人間には当てはまらないように思ってしまいます。しかし、人間も他の生物と同じように繁殖を終えたら死ぬ運命にあるのです。

厳密に言えば、繁殖の活動ができなくなった時が生物の死に時ということなのですが。

自然死はプログラムされている

繁殖を終えたら生物は死ぬものと語るのは、医師の中村仁一さんです。中村さんは、老人ホームでたくさんのお年寄りの自然死を実際に見ており、著書の「大往生したけりゃ医療とかかわるな」で、それについて語っています。

自然死とは、一言でいうと餓死です。そして、餓死の実体は次のようなものだそうです。

「飢餓」・・・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される
「脱水」・・・・・意識レベルが下がる
「酸欠状態」・・・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される
炭酸ガス貯溜」・・・・・麻酔作用あり
(49ページ)

このような状態に陥るとどうなるのでしょうか?

それは、夢うつつの気持ちのいい、穏やかな状態になるということです。すなわち、人間が自然死を迎えると何の苦痛もなく息を引き取るのです。

死とはとても苦しいものであり、その苦しみに耐えきれなくなった時に死ぬのだと思っていましたが、自然死だとそのようなことはないのです。これは、きっと繁殖活動をしなくなった生物が、役目を終えたことを理由に機能停止するよう、あらかじめプログラムされているということなのでしょう。

電池が切れたら動かなくなる電化製品と同じであり、違うのは、生物は電池の入れ替えができないだけなのかもしれません。

生活習慣病は治らない

ガン、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病に悩まされている日本人が近年増えています。

その名の通り生活習慣の悪化が原因で招く病気なのですが、中村さんは生活習慣病は治らないと述べています。一方、治る病気とは他人にうつる病気です。肺炎菌や赤痢菌は、体内に侵入すると発病しますが、撃退できれば病気は治ります。

うつらない生活習慣病では、その原因が、ご先祖さんから受け継いだ糖尿病になりやすい素質、高血圧になりやすい体質、それにあまり運動もせずにたらふく食べる食習慣、塩辛いもの好きなどという悪い生活習慣、さらに老化も絡んで、40歳過ぎぐらいから発症してくる病気です。これは、いってみれば内から出る病気です。
(175ページ)

しかし、治らない病気には、必ず専門医がいます。ガンでも糖尿病でもそうですね。そういった専門医の存在が患者からすると治るのではないかという期待を持たせます。でも、専門医でも治せないものは治せないのだから、生活習慣病とはうまく付き合うということが重要になってくるのです。

老化と病気が区別されていない

生活習慣病が病気ではないとなると、体の不調は一体何なのでしょうか?

それは一言でいうと老化です。人間に限らず生物は必ず老います。そして、老化すれば若かった時のように体が思い通りに動かなくなってきます。誰だってわかっていることなのですが、その老化現象に病名がついてしまうと治療できると錯覚してしまうのです。

例えばガン。

国立がん研究センターが掲げた「現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法」には6項目あります。要約すると以下のようになります。

  1. タバコを吸わない。吸っている人に近づかない
  2. お酒はほどほどに
  3. バランスの良い食事
  4. 適度な運動
  5. 適正体重の維持
  6. 肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合は治療する

6番目の肝炎ウイルスの項目以外は、健康な生活を送るために誰もが心がけなければならないとわかっていることです。そして、これらを実践すれば、ガンだけでなくその他の生活習慣病の予防になるとも言われていますね。

しかし、ガンになる最大の危険因子は加齢です。すなわち、ガンは老化現象の一種なのです。もちろん小児ガンなどのように若すぎるガンの発症は老化とは言えません。また、若年性のガンは遺伝だと言われることもありますが、ガンは遺伝子の病気ではあるものの遺伝とは違います。

もしも、ガンが遺伝だというのであれば上記6項目を実践しても無駄ではないでしょうか?いや、無駄なのです。なぜなら、ガンになる主要因は老化なのですから。これも、繁殖を終えたら死ぬというプログラムの一種なのかもしれません。

老化に早期発見早期治療は無意味

生活習慣病が老化だと考えれば、人間ドックや健康診断を受けることにどれほどの意味があるのでしょうか?

良くない検査結果が出たこと、それは、「あなたはこの1年で1歳老いました」というメッセージを受け取るだけではないでしょうか。そう考えれば、生活習慣病の早期発見、早期治療が本当に意味のあることなのか疑問です。

「健診」や「人間ドック」のスローガンは、「早期発見」「早期治療」です。
ただ、この言葉は、早く見つけて手を打ちさえすれば、すべての病気が完治、根治するがごとき錯覚を与えます。
だいたい、「早期発見」「早期治療」は、完治の手立てのある、肺結核で成功を収めた手法です。これを、完治のない生活習慣病に適用しようとすることに、そもそも無理があります。
もっとも、病気と縁が切れるという点では、がんだけは例外に考えてもいいと思います。
ただ、臓器がなくなっているのに、完治といっていいのかという問題は残りますが。
(181~182ページ)

現在、人間ドックを受けると90%以上の確率で異常が見つかります。日本人の9割以上が病人というのはおかしいと思うのですが、正常という診断を出せない理由が人間ドックにはあるのかもしれません。

2011年8月4日にプロサッカー選手の松田直樹さんが34歳の若さで心筋梗塞を起こして亡くなりました。事前の健診では異常がなかったそうです。体に異常がなかったのに突然スポーツ選手が亡くなるのですから、検査で見落としがあったのではないかと、遺族の方は指摘したくなるでしょう。

健康診断の基準を厳しくし、誰もが1個や2個くらい異常が出るようにした方が、検査する側の保身になります。最近も、検査基準を緩くすべきだとか、厳しくすべきだとかいろいろと議論になりました。でも、多くの検査項目が治らない生活習慣病を見つけるものなのですから、果たして基準の見直しが受診者がより健康的な生活を送れるようにすることなのかどうか疑わしいです。


中村さんは、ガンにも老衰死があると述べています。

老衰死ですから患者は苦痛を感じずに息を引き取るのでしょう。でも、一般人や多くの医療関係者は、ガン死は苦痛を伴うものだと思い込んでいます。だから、苦痛を和らげるためにモルヒネという麻薬を使うわけです。

もしかしたら、苦痛を伴うガン治療は、繁殖を終えたら死ぬという生物のプログラムを書き換える行為なのかもしれません。