ウェブ1丁目図書館

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胡散臭さ満載のネット広告が信頼を得るには時間がかかる

2021年にインターネットのト広告費が、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌のマス4媒体の広告費を追い抜きました。

ネット上の広告は、年々増えており、どのウェブサイトを閲覧しても必ず広告が掲載されています。それは、ネット広告に高い宣伝効果があることの表れと言えそうです。

広告が掲載されていることは構わないのですが、ユーザーの立場としては、嘘くさい広告やどのウェブサイトを閲覧してもストーカーのように同じ広告が表示されるのはどうにかならないかと感じることがあります。一方で、広告主にとっては、不正な方法で広告費をかすめ取るアドフラウドという手法の横行で、不必要に広告費を負担させられることがあります。

情報商材による被害が絶えない

NHKの『クローズアップ現代+』で、ネット広告の闇が放送されたことがあります。NHK取材班の『暴走するネット広告』は、その内容を書籍化したものです。

ネット上では、「儲かるならば何をやってもいい」と言って不正を行うウェブサイト運営者や「利益が上がっているから」と不正を見て見ぬふりをする広告配信事業者やプラットフォームの存在があります。

例えば、情報商材です。ネットを使って楽に稼げるといった内容が数万円以上の価格で販売されることが多い情報商材ですが、その内容は大したことがなく、価格に見合った価値を得られません。中には有益な情報もあるのでしょうが、ゴミをつかまされる可能性が高く、2017年度には、全国の消費生活センターに相談された被害件数が6,000件を超えました。

バイトで雇った人に嘘の体験談を語らせ楽に儲かるように見せるフェイク動画を作成するだけで、10億円を超える売上になるというのですから驚きです。もちろん、そのような情報商材を買ったところでネットで稼げる技術が身につくことはありません。

情報商材に引っ掛からないためには、情報の価値がいくらなのかという相場を知っておく必要があります。例えば、一般向けに誰でも理解できるように書かれている書籍であれば、1,000円以下で購入できるものがほとんどです。単行本になると1,000円から2,000円の範囲で買えます。

一方、専門的な知識がないと理解できない書籍は、3,000円以上になります。専門書と呼ばれているのがそれですね。生化学の本になると、図鑑くらいの大きさで1万円くらいします。もちろん、素人が読んだところで何を書いているか理解できません。

書籍の場合、価格が上がれば上がるほど、読み手に求められる知識のレベルが上がっていきます。例えば、『暴走するネット広告』は880円ですが、誰でも理解できる平易な文章で書かれています。素人が読んでも理解できる内容の書籍は、大体これくらいの価格です。

書籍の価格を知れば、情報の相場が大体わかります。「誰でも簡単に」と謳っていれば、その情報は数百円の価値しかありません。そうすると、「楽して稼げる」といった情報も、当然数百円の価値しかないことがわかります。「楽して稼げる」情報が1万円以上の価格になるのはおかしいのです。

そのような広告を見ても、手を出さないようにしましょう。

広告が表示されたように見せる不正

広告を出稿する広告主も、ネット広告で被害を受けることがあります。

ネット広告には、広告が表示されただけで広告費を支払わなければならないものがあります。このような広告の場合、広告を掲載しているウェブサイト運営者が、不正に閲覧数を水増しすることで多くの広告費を支払わされる被害が発生することがあります。

海賊版サイトの漫画村も、そのような不正により多くの広告費を稼いでいたようです。

海賊版サイトに広告を出す方が悪い」との意見があるでしょうが、広告主が違法なサイトに自社の広告が表示されているとは全く気づかないように不正が行われますから、広告主も被害者です。

不正の手口は、別にまとめサイトを用意するものです。まとめサイトを広告配信事業者の審査に通過させ、広告の掲載を開始します。しかし、まとめサイトだけでは、多くの閲覧数を稼げません。そこで、インラインフレームという手法を使って海賊版サイトのページの一部にまとめサイトを表示します。ページ内に小窓を作るのがインラインフレームです。

当然、ページ内に小窓があると邪魔ですから、さらに別の手法を使って小窓はユーザーには一切見えないようにします。そうすると、海賊版サイトの閲覧数と同じだけ、まとめサイトに掲載した広告の閲覧数も増えるので、広告主は、ユーザーに一切広告を見せる機会がないまま広告費を支払うことになります。しかも、海賊版サイトのユーザー数は非常に多いので、不正にかすめ取られる広告費は巨額になります。

広告枠の相互乗り入れを悪用

そもそも、まとめサイト自体も独自性がないのですから、こういったウェブサイトを広告配信事業者が審査を通過させなければ良いのですが、そう簡単な問題でもなさそうです。

広告配信事業者は多数あります。広告を掲載するウェブサイトの審査が厳しいところもあれば、審査が緩いところもあります。審査が厳しい広告配信事業者であれば、良質なコンテンツを提供するウェブサイトにだけ広告が表示されるので、広告主のブランドイメージが損なわれにくく、広告費を不正にかすめ取られる被害にも遭いにくいです。

広告配信事業者は、自社が配信する広告を自社が審査したウェブサイトの広告枠に表示する以外にも、他の広告配信事業者の広告枠に表示させるようにして広告予算を消化しています。これが、広告主に被害を与える危険性があるのです。

審査の厳しい広告配信事業者が、審査の緩い広告配信事業者と提携していれば、粗悪なまとめサイトの広告枠に広告が表示される可能性があります。現在は、多くの広告配信事業者が提携し、広告枠の相互乗り入れを行っているので、知らず知らずのうちに海賊版サイトに広告が表示されることがあり得ます。

広告の相互乗り入れをやめれば良いのですが、そうすると、真面目に運営しているウェブサイトの収益性が下がってしまいます。広告の相互乗り入れによって、入札単価の高い広告がウェブサイトに表示されやすくなりますから、ページ内にたくさんの広告を配置せずとも、より多くの収益を得ることが可能になります。これは、ユーザーにとっても、不必要に多くの広告を見せられる不快感を取り除ける利点があります。


ウェブサイトを運営するには、それなりの費用がかかります。現在、その費用を賄うために最も利用しやすいのが広告掲載です。しかし、広告掲載が手軽にできることから、「誰でも簡単に稼げる」といった情報商材が出回り、不正な手段で広告費をかすめ取るアドフラウドを行う者たちが出てくるのでしょう。

ネット広告は、発展途上です。消費者の信頼という点では、まだまだテレビCMに追いつけそうにないですね。