ウェブ1丁目図書館

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著名人が無名時代に何を考えどう行動したかを知ることは挑戦の助けになる

どんなに有名な人でも、最初は無名です。

偉大な発明をしたり、人を魅了する音楽をつくったりして、有名になった人は、多くの人にその名を知られています。しかし、無名時代にどう過ごしてきたのか、何を考えてきたのかは、知られていないことが多いです。

憧れの有名人のようになりたいと思うなら、その人の今現在の姿だけでなく、無名時代にどのように生きてきたのかを知ることも、自らの成長には大切なことでしょう。

自分の成果をアピールする

京都産業大学タンパク質動態研究所所長で歌人でもある永田和宏さんが、4人の著名人と対談した内容を収録している『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』は、これから何かを目指そうとしている方、現在目標に向かって行動している方が読むと、何かのヒントを得られることでしょう。

iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥さんは、学生時代は柔道やラグビーをするスポーツマンでした。医学部に進学したのは、お父さまのすすめでしたが、スポーツでケガをした人を治療したいとの思いから整形外科医になります。

しかし、ケガをしたスポーツ選手を完治させることは予想していたよりも困難で、治してあげたくても治すことができません。また、お父さまが病気で亡くなったこともあり、研究者の道に進むことを決意しました。アメリカに留学した山中さんは、万能細胞のES細胞を知りました。これが、後にiPS細胞の発見につながります。

iPS細胞の発見は、これからの医療を大きく変える可能性があります。しかし、どんなに優れた成果であっても、人に知ってもらえなければ意味がありません。アメリカの研究所では、プレゼンテーションの大切さを口やかましく言われたそうです。いい実験をすることは大切ですが、成果を発表することも同じだけ大切です。

すばらしい成果は、人に伝えてこそ意味があるのです。

長さの違う物差しを持つ

将棋棋士羽生善治さんは、何かに挑戦する時にミスをしないことよりもミスを重ねて傷を深めないことが大切だと述べています。

ミスをした後は、動揺して冷静さを欠いてしまうものです。それがミスを重ねる原因となります。ミスをした後は一息つくことで、ミスを重ねなくなります。また、ミスをした後は、「その時から見る」こと、すなわち、過去のプランや方針はその時点で崩れているので、いったんリセットすることも大切だと述べています。

ミスをすると、新たな挑戦をしたくなくなるものです。それでも、挑戦をしなければならない場面は訪れます。挑戦をし続けるためには、「様々な種類の物差しを持つ」ことが大切です。

羽生さんは、竹馬と英語学習を例に説明しています。竹馬に乗るのに1週間かかったのなら、1週間という短い物差しを身に着けたことになります。英語学習に3年かかったのなら、3年という長い物差しを身に着けることになります。こうやって長さの異なる物差しを身に着けて行けば、次の挑戦の時に不安にならずに済みます。

別の語学の勉強をしようと思ったら、英語学習の3年の物差しを使って計測できるので、語学の習得に必要な期間を予測可能です。

挑戦をしなければ、物差しを身につけられません。そして、物差しがないと、挑戦が不安になります。だから、どんな小さなことでも挑戦することが、過度に不安にならないためには大切と言えるでしょう。

グレーゾーンを受け入れる

映画監督の是枝裕和さんは、善悪について興味深いことを述べています。

悪を排除して解決できることは大した問題ではありません。善悪とは何かを考えるとき、そこには絶対的な善としての神が必要になります。しかし、神がいないグレーゾーンの世界では、善悪をはっきりさせることはできません。

悪を叩くためには、神の言葉を聞くか自分が神になるかするしかないでしょう。しかし、そんなことはできるものではありません。ここが現実社会の難しいところです。人が神になることができない以上、白黒はっきりと付けられないグレーゾーンの中で、生きていくしかないでしょう。

知識をどう使うか

京都大学の学長で霊長類研究の第一人者である山極壽一さんは、大学教育は、知識の蓄積ではないと述べています。

高校までは、知識の詰込みが勉強でしたが、大学では考え方や知識をどう使うかが大切になります。インターネットが普及した現代では、簡単に情報を見つけることが可能です。このような時代では、知識を身に着けることは大したことではありません。

それよりも、「自分だからこそできることを探してみてほしい」と山極さんは語っています。

また、自分がやっていることを社会一般に向けて伝えることも大切です。研究者は、世間に何をやっているかが見えにくいので、なおさら、社会に向けて情報を発信しなければ、その研究が社会に還元できることを知ってもらえません。

自分が属する狭い世界で論文を書いているだけでなく、本を書くことも研究者には必要です。結果だけを見せるのではなく、その過程で何を考え、どう行動したかを知ってもらうことは、後に続く研究者を育てるために大切なことです。

本でなくとも良いでしょう。今なら、インターネットで情報を発信できます。SNSでもブログでも、社会一般に向けて何をしているのかを発信することで、研究の価値を知ってもらえます。それは、研究者だけでなく、ビジネスパーソンにも言えることです。


ある分野で成果を残している人の名前は知っていても、結果を出すまでの過程を知っている人は少ないです。

結果を出すまでには、様々な失敗があり、困難を克服しているはずです。

その時、いったい何を考え、どう行動したのか。

それを知ることは、自分が同じような場面に遭遇した際の何かの助けになることでしょう。