ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

心理学が自然回復力をサポートしてくれる

人の心はわかりにくいもの。自分自身の気持ちも、時に理解できないことがあります。

だから、心理学という学問があるのでしょう。大学の教授が日々研究している分野であることから、人の心はそう簡単に理解できないのかもしれません。でも、現時点で人の心についてわかっていることもありますから、それを生活の中で取り入れていけば、より良い人生を送れる可能性があります。

いやなことがあったり、ストレスを感じたときには、自分の心の状態がどうなっているのか、また、どうやれば心を落ち着けることができるのかを知っておくことは、心身の健康を保つために良いことだと思います。

心理学の力

心理学を専門とする渋谷昌三さんの著書『3分でわかる心理学』は、副題に「知ってるだけでトクをする!」とあるように日常生活の様々な場面で使える心理学の知識が紹介されています。

同書には、心理学にできることを以下のように述べています。

私たちは誰でもダメージから立ち直る力、健やかに生きていける力をもっています。人が本来もっている自然回復力、自己治癒力をサポートすること、新たな気づきのための手助けをすること、それが心理学にできることです。(14ページ)

誰だって、つらい経験をするものです。でも、その苦痛から立ち直る力を人は持っています。心理学は、この立ち直る力をサポートしてくれる学問なんですね。そして、新たな気づきのための手助けもしてくれるということですから、何かアイディアを出そうと思っているときにも役立てることができます。

難しい仕組みはわからなくても、心理学の研究で今わかっていることを日常生活で試してみる価値がありそうです。

自己暗示で目標達成

自己啓発書には、自分がなりたい姿を想像し続ければ、理想の自分になれると書かれています。なんか嘘くさい感じですが、心理学の見地から、それは正しいようです。


自分はプロ野球選手になる。
自分は東大に合格する。
自分はきれいになる。


このように自己暗示をかけていくことで、思い描いた自分になれることは心理学の実験で証明されており、ピグマリオン効果と呼ばれています。

さらに環境を整えることも大切で、環境が才能の発揮に影響を与えているという説を「才能閾値説」といいます。良い環境条件を整えていけば、ある一定限度を超えると才能が開花します。例えば、将来、社長になりたい人は、実績を積み上げ、信頼される人になり、資金計画を立てたりして、環境を整えていくことで、目標を達成しやすくなります。

自己暗示だけでなく、環境を整える努力をすることが、なりたい自分になるためには重要なんですね。

部下のやる気を失わせる上司の行動

何回も電気ショックを与えられた犬は、次第に抵抗しなくなり、やがて、ひもを外されても逃げようとしなくなります。

これは、人も同じで、努力しても認めてもらえない状況が続くと、やがて努力をしなくなってしまいます。これを学習性無力感といいます。例えば、部下が新たな事業計画の案を作成しても、上司が常に却下していれば、やがて部下は良い事業計画を作ろうと努力しなくなります。

一度や二度ならともかく、ずっと否定され続けていると、後ろ向きの心境になってしまいます。だから、否定ばかりする上司の下では、部下が育ちにくいのです。

また、部下の側は、転職するなどして環境を変えることも大切です。でも、転職はなかなかできないでしょうから、環境を変えられない場合には、自分の力を感じられる体験をしましょう。自分の力が感じられることを自己効力感といい、これを何らかの方法で確認できれば、無力感から抜け出せます。

働きたくないのは人間の本能

人は、生きていくための最低限の欲求さえ満たされれば働こうとしないものです。

ところが、先進国では、働くことこそ人間本来の姿であり、仕事にやりがいを感じることこそが、人間らしい生き方だと考える傾向があります。そして、働かない人がいると、「けしからん」と怒り出し、何とかして働かせようとします。

でも、働きたくないのは人間の本能であることから、労働を強いるのは、人間の本来の姿を否定する行為と言えそうです。

かと言って、誰も働かなくなると、社会は回りません。特に先進国では、高度に貨幣経済が発達しているので、お金を稼がなければ生きていくことができません。

貧しい時代であれば、働かなければ食べ物を得ることができませんでした。でも、現代の日本では、食べ物を得る程度であれば、短時間の労働で十分です。もともと原始時代には、空腹を感じれば、木の実をとって食べれば良いだけでしたから、大した時間は働いていませんでした。

このように考えると、1日の大部分を労働に割いている働き方は、人間本来の姿とは、かけ離れたものなのかもしれません。しかし、食費を稼ぐ程度の労働では、現代社会は回っていきません。だから、働き方改革が必要になります。仕事にやりがいや楽しさを求めるのは、怠惰な人間の本能を否定するのではなく、むしろ、仕事を労働とは感じさせない工夫と言えそうです。


心理学は、犯罪捜査に使われるテクニックのように思う人がいるでしょうが、実は、身近な出来事にどう対処するかを助けてくれる小技を我々に教えてくれます。

日々の小さなストレスの積み重ねが、ある時、人を無気力にさせてしまいます。でも、小さなストレスに対処する小技を知っておけば、無気力にならないようにできるかもしれません。

自分自身の心の状態を考えることがない人こそ、心理学に触れることで、多くのことを発見できるのではないでしょうか。