ウェブ1丁目図書館

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老後に飲食店を始めるより個人M&Aの方が安全に自分の能力を生かせる

中小企業、マイホーム、墓。

この3つには、後継者がいないという共通点があります。

マイホームは、売却かリースバックでどうにかなります。墓も、購入した本人が亡くなる前に処分すれば、後継者問題は解決します。決して、自分自身が墓に入ろうとは考えないこと。

中小企業は、社長の一存で廃業すると従業員の生活が破綻する可能性があります。だから、後継者問題では、上記2つよりも深刻だと言えます。一方で、新たに会社を設立して事業を始める人もいます。もしも、これから起業を考えているなら、一から会社を起ち上げるのではなく、後継者不在の中小企業を買うことを検討すべきです。

起業は失敗する危険性が高い

起業は、まず失敗します。

中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている日本創生投資を創設した三戸政和さんは、著書の『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』で、起業よりも、個人が中小企業を買って事業を行う個人M&Aをすすめています。

日本では、起業して5年後に生存している確率は42%、10年後だと23%にまで下がります。実に4分の3以上の会社が10年以内に消えていくのです。特に誰もがすぐに思いつく飲食店は、起業した直後から廃業予備軍となるほど厳しく、素人が容易に手を出せる業種ではありません。飲食店経営では、立地の選定、資金繰り、店舗作り、商品企画、仕入れ、原価管理、製造管理、採用、人事管理、マーケティングなど、経営学のあらゆる要素が詰め込まれているからです。

また、起業した直後は、何よりも優先して売上をあげなければなりません。起業したばかりの小さな会社が生き残るためには、資金繰りが重要となりますが、売上がない状況では、銀行やベンチャーキャピタルから資金を提供してもらうこともできません。

ゼロからイチを生み出すことは、非常に難しく、すぐにイチを生み出せなかった起業家は、廃業に追い込まれてしまいます。

スタートに成功した会社を買う

会社員の中には、新規事業の立ち上げを経験したことがある方もいると思います。だから、起業しても何とかなるだろうと考えがちですが、会社の中での新規事業の立ち上げと起業は全く異なります。

すでに会社があって、ヒト、モノ、カネが用意されている会社での新規事業の立ち上げと何もないゼロの状態からの起業は、似ているように思えますが、実際は別物です。なぜなら、会社員は、全くのゼロの状態を知らないからです。

だからと言って、会社員の知識が役に立たないわけではありません。大企業で働いている方なら、その知識を生かして中小企業の経営に関われば、これまでよりも多くの利益獲得に貢献できます。

起業の経験はなくとも、すでにある会社を維持・発展させるためのノウハウを持っている会社員は多いです。そのノウハウを生かすためにスタートから10年以上続いている中小企業を買うのです。そうすれば、会社員が苦手とするゼロからイチを生み出す起業は不要となり、会社の維持・発展という得意分野で能力を発揮できます。

自分がやっている仕事は、誰にでもできる当たり前のことのように思うでしょうが、中小企業では、数十年前から同じ仕事を続けているところがたくさんあり、それを大企業が行っている業務内容に変更するだけで利益が改善される可能性があります。パソコンを使っていなかったり、製品ごとの原価率が把握されていなかったりと、中小企業には、たくさんの改善点があります。大企業で勤務している方なら、そのような古い仕組みを変えることは、それほど難しいことではないでしょう。

ゆとりある老後のために

個人が会社を買うことは、老後資金の確保にも役立ちます。

今後、寿命が延びて平均寿命が100歳を超えることが現実化してきています。それなのに60代で仕事を引退したのでは、老後の資金が不足するかもしれません。

40代や50代の会社員なら、すでに組織を運営していくためのノウハウを身に着けているでしょう。そのノウハウを後継者がいなくて廃業を検討している会社のために使うことは、自らの老後資金の確保だけでなく、その会社で働いている従業員の生活も守ることになるのですから、社会的意義も大きいです。

今勤めている会社を定年退職した後、中小企業のオーナーになって10年間経営をし、次の経営者に会社を売る。そうやって経営のバトンを次世代に引き継ぐことで、自分自身の老後資金も確保できるのですから、ただ株を買って値が上がるのを待つだけの投資よりもやりがいがあります。

次の社長が会社の借金に個人保証をしなければならないことが、事業承継を困難にさせていた面がありますが、近年は、無担保無保証で会社を買えるようになってきています。社会的に後継者難で自主廃業せざるを得ない会社が増えつつあることが問題となっており、事業を継続できる環境を整えようとの動きが見られるようになってきたのです。

平成31年税制改正では、「個人版事業承継税制」が創設され、今後、ますます個人M&Aがしやすくなることが期待されます。


モノのリサイクルやリユースが当たり前になりましたが、これからは、会社も同じようにオーナー社長が交代しながら存続する時代になるはずです。

定年退職後は、蕎麦屋をやってのんびりと暮らしたいと考えているのなら、それはやめておきましょう。これまで培ってきた仕事のノウハウは、後継者難の中小企業で存分に生かせます。何より、経験がない蕎麦屋を始めるよりも、個人M&Aの方が成功する可能性が高いのですから、事業に失敗して退職金を失う危険性が低いです。

同じ数百万円の資金を用意するなら、飲食店ではなく個人M&Aに使いましょう。