ウェブ1丁目図書館

ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。なお、当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

為政者は移ろいやすい群衆の声に耳を傾けるべきではない

1789年。

フランスの財政が逼迫し、国民の暮らしがさらに苦しくなり、遂に暴動が起こります。いや、それは暴動ではなく革命でした。バスチーユを市民軍が陥落させたとの情報はフランス全土に広まり、農民たちが貴族を襲撃し始めます。

狩りの最中だったルイ16世は、ことの重大さに気づき直ちにヴェルサイユ宮殿に戻りました。

続きを読む

異なる2つの視点から読むフランス革命

フランス国王ルイ15世の孫にオーストリア女帝マリア・テレジアの末娘が嫁ぐのをストラスブールのパン屋で働く少女マルグリットが、妬ましく見つめるところから物語が始まります。

遠藤周作さんの「王妃 マリー・アントワネット 上巻」の出だしです。

オーストリアからフランスにやって来たのは、マリー・アントワネット。まだ14歳だった彼女は、両国が手を握り、イギリスやプロイセンの脅威を抑える重要な役割を担わされます。人々は彼女を祝福し、彼女もまた群衆に微笑みを返します。しかし、同じ年頃のマルグリットは、彼女に嫉妬し、「早く死んじゃえばいい」と思います。

続きを読む

個人の意思は集団に左右されるか

重大事件のニュースを見ると、なぜ、そんな愚かなことをしたのかと思うことがあります。事件を起こした当人も、もしかしたら逮捕された時にそう思ったかもしれません。

「あの時、思いとどまることができたのに」

事件を起こす前に何度も葛藤があったと思いますが、最終的に犯罪を犯す決断をするのは、何かそうしなければならない気持ちが、その時にはあったはずです。

続きを読む

京都での出会いからイラン旅行へと発展する大人の恋愛小説

祇園祭宵山を一人で観覧する桐生亜希。

彼女は27歳のグラフィックデザイナーです。3日間の小旅行で京都にやって来た亜希は、祇園祭の鉾や山を見学している時、一人の青年を見かけます。青年は、鉾や山に掛けられたペルシャ絨毯を真剣に眺めています。

五木寛之さんの小説「燃える秋」は、このような形で始まります。

続きを読む

若者の欲求が噴き出すような感情と行動を静かに描写した小説

村上龍さんのデビュー作「限りなく透明に近いブルー」を読みました。

この作品は、群像新人賞芥川賞を受賞した作品です。群像新人賞受賞作品として掲載された時の龍さんの年齢は24歳。よく20代前半の若者が、このような作品を書くことができたものだというのが、読後の感想です。

物語の内容は、一言で言うと、20歳前後の若者たちの欲求を描いたといったところでしょうか。

性交渉、薬物、暴力。

体から噴き出すような若者の欲求が、最初から最後まで描写されています。

続きを読む