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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

世の中の移り変わりはコントロールできない。だから先見性を養う。

経営者

地球上には、70億人以上の人間が棲んでいます。つまり、人間社会は70億の人口で成り立っていると言えます。人間の住む地域は同じではないので、70億人が一つの社会で生きているのではなく細かい単位の社会を形成しているのですが、それでも一つの社会は多くの人間によって構成されています。

たくさんの人間によって構成された社会を個人の力でコントロールするのは難しいです。だから、多くの人が社会を変えようとするのではなく、社会に順応する生き方を選択することになります。

ビジネスパーソンに要求されるのは先見性

エッソ石油株式会社で副社長を務め、定年退職間近に禅寺で修行するようになった松野宗純さんは、著書の「禅に学ぶ経営のこころ」で、これからのビジネスマンの必須の能力は先見性だと語っています。

世の中の移り変わりは、自分でコントロールできないものである。変わって欲しくないと思ってもガラッと様変わりするし、もっと早く変わって欲しいと願っても、そうなるものでもない。ひたすら受け止めるだけのものである。まず、このことを認識してもらいたい。
そこで、ビジネスマンに必須の能力は「先見性」である。管理職、経営者になろうと考えるほどの人にとって、二十一世紀は「先見性」が最も要求される資質となろう。
(203~204ページ)

先見性は、いつの時代にも重要な能力なのでしょう。特に全世界の人口が70億人を超えた21世紀においては、それがますます重要性を増していくのかもしれません。

歴史を振り返ると、世の中が移り変わる瞬間には、必ずキーパーソンが出てきます。日本だと、中世から近世への時代の移行期には織田信長、近世から近代への移行期には西郷隆盛坂本龍馬が現れ、時代を大きく動かしました。

いや、実のところは、彼らが時代を動かしたのではなく、時代の流れにうまく乗ることができたのが彼らだったのでしょう。そして、彼らが時代の波に乗れたのは、先見性があったからではないでしょうか。

21世紀はスペシャリストの時代

では、21世紀に生きる我々が時代の流れに乗って生きていくためには、どうやって先見性を磨けば良いのでしょうか?

松野さんは、人の働き方は会社大事から職務大事に変化しており、家庭を犠牲にして仕事をするのではなく、家庭と仕事のバランスをとる生き方が増えていくと考えています。実際に20世紀は最初に就職した会社で定年まで働き続けるという人が多かったのですが、21世紀に入ると自らの意思かどうかに関わらず転職する人が増えており、会社への忠誠心は薄れつつあるように思います。

自分が好きな職種、能力が発揮できそうな会社、そういう選び方が増えていくように思うのだ。つまり、自分の生きがいにつなげることができそうな会社である。
(中略)
二十一世紀の社会は、いろいろなタイプの人間を必要とする。あるいは、それ以前に、いろいろなタイプの人間がいるのである。自分らしさが発揮できる場所が、当然、最高に望ましい生き方なのだから、不似合いな方向は避けた方がいいのだ。
どちらかというと、従来は、スペシャリストはマネージメントには不向きだと見られてきた。法学部(出身者)万能主義のような考え方があったのは事実である。
二十一世紀は、このような垣根は完全に取り除かれるであろうとともに、ハイテクが進むにしたがってスペシャリストの地位はもっと上がってくると思う。
(206~207ページ)

21世紀は、個人の価値観が多様化している時代です。だから、かつてなかったような仕事がたくさん増え、現代人は多くの選択肢の中から自分のやりたい仕事を選べるようになっています。

このような時代では、自分の好きなこと、やりたいことに関する能力を磨き、スペシャリストとして働くことが世の中への適応になるのかもしれません。先見性を磨くことは、実は専門能力を身につけることと同義であると言えるでしょう。

ただし、一つのことだけをやっていれば、それで良いのではなく、仕事が多様化しているからこそ、自分の仕事と社会との接点を見つけ、世の中の変化に適応しなければならないはずです。スペシャリストであっても、ゼネラリストの視点は持たなければなりませんね。

共生の原理

20世紀までのビジネス環境は、勝つか負けるかだったのではないでしょうか?

18世紀や19世紀は、西洋諸国が世界中に多くの植民地を抱え、現地の人々から搾取するのが当たり前でした。それは、20世紀の前半まで続きます。やがて、第2次世界大戦が終わると武力による搾取が減っていき、今度は市場の奪い合いの競争に突入しました。


ライバル会社に競争で勝ち市場を独占する、あるいは、少数の大手企業で市場を寡占化する。

その根底にあるのは、企業がモノを売って売って売りまくることで豊かになって行こうとする発想でした。しかし、売ることだけを考えた企業活動は、環境破壊や格差の拡大へとつながっています。

ハイテクの発展とともに、人間関係の進展も必然的に広がっていくのだ。もっともファンダメンタルな事柄であるが、ビジネスマンに限らず二十一世紀に生きる人々は「共生の原理」を体得せざるをえなくなる。
(中略)
企業が物を売って売りまくり、相手を打ち負かす時代は終焉を告げている。市場を共有の資源、財産と考えて、売るだけで済まさず買い入れる、こういう考え方が、当たり前になるだろう。企業活動の中心原理が「共生の原理」となることを、常に頭に入れて仕事をするようになる。
(209ページ)

「禅に学ぶ経営のこころ」は1994年に文庫版が出版されたのですが、これは、1989年に出版された「不執の経営学」を改題したものです。

1989年は、バブル経済真っ只中で、拝金主義がはびこっている時代でした。その頃は、メディアも景気の良い話題ばかりを提供しており、まさにバブル経済をいつまでも続くようにコントロールしているようでした。しかし、マスメディアでさえ世の中の移り変わりをコントロールできず、90年代初頭にバブルは崩壊します。

松野さんは、バブル経済全盛期に21世紀がどのような社会になるのかを見通していたのですから、先見性の能力をお持ちだったのでしょう。

先見性の能力を養うのは難しいことです。

でも、それよりももっと難しいのは世の中の移り変わりをコントロールすることです。そんなことは、一個人ができることではありませんから、多くの人が社会に適応する生き方を選ぶことになるでしょうね。

禅に学ぶ経営のこころ (PHP文庫)

禅に学ぶ経営のこころ (PHP文庫)

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