ウェブ1丁目図書館

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失業者を減らすには収入減少を正社員が受け入れる必要がある

経済学では、需要と供給という言葉がよく出てきます。

一般的にはモノやサービスについて需要と供給の関係が論じられますが、雇用に関しても需要と供給の関係で雇用量や失業者数が決まります。したがって、失業率改善においても需要と供給について議論しなければなりませんが、ニュースを見ていても、雇用に関して需要と供給という言葉が出てくる頻度が少ないように思います。

失業が発生する理由

日本経済新社編「やさしい経済学」では、経済学の基本的な内容が解説されており、初学者でも比較的理解しやすい内容となっています。同書では、失業問題についても簡単に触れられており、雇用量が需要と供給によって決まることが説明されています。

人を雇うのは企業であり、働くのは労働者です。そして、企業が労働者を雇いたいというのが労働需要であり、労働者が働きたいというのが労働供給です。労働供給が不足している状況では、企業は多くの賃金を支給して労働者を雇おうとします。しかし、労働供給が多い状況では、企業は少ない賃金の支給で多くの労働者を雇おうとします。

例えば、企業が1億円の人件費負担を容認している状況で20人の労働者を雇った場合、1人当たり賃金は500万円になります。仕事をしたいという人がもっと多く40人いた場合に企業が全員雇用するなら、1人当たり賃金は250万円です。

今、仕事をしたいと思っている全ての人を企業が雇えば失業者はゼロになります。しかし、企業の人件費負担額が一定であれば、労働者を多く雇うほど、1人当たりの賃金支給額が少なくなるので、既存の従業員は賃金低下に対して不満を持ちます。そう、失業が発生する理由はここにあるのです。

総需要を増やす政策で完全雇用を目指す

経済学者のケインズは、労働組合の圧力によって賃金が下落しない性質に注目し、労働意欲はあるけども職を得られない非自発的失業が存在することを指摘して、失業の解明に成功しました。

年収500万円で働いている人は、企業が他の人を雇うことで自分の収入が下がることを嫌います。だから、労働組合を作って経営陣に圧力をかけ、これ以上雇用を増やさないように訴え自分たちの収入を維持しようとします。

このような状況で失業者数を減らすためには、有効需要(総需要)を増やして、新たな仕事を作り出す政策が効果的です。すなわち、国や自治体が公共事業を行えば総需要が増えて人手不足になり、失業者が働く機会を得られるのです。

ケインズマクロ経済学は、有効需要の不足を失業発生の理由とみなす。従って、有効需要を増加させ失業者数を減らすというのが、ケインズ経済学の根幹となる考え方である。具体的には、所得税法人税の減税による消費の喚起、企業投資の刺激策、あるいは公共支出の増額などが、有効需要の増加政策になりうる。
(211~212ページ)

しかし、このような有効需要を増やす政策は、我が国では行き詰ってきています。

公共事業を行えば財政赤字が発生します。そのため国債を発行して凌ぐことになりますが、公共事業を行っても失業率が下落しなくなり、インフレも伴って財政赤字が膨らみました。

バブル崩壊後、我が国はデフレになりましたから、国債の償還が厳しいものとなっています。

インサイダー・アウトサイダー理論

現在、職を持っている人、主として労働組合員をインサイダーと定義します。また、現在失業しており求職中の人をアウトサイダーと定義します。

インサイダーが求めるのは、現在よりも賃金が増えることです。一方、アウトサイダーが求めるのは、賃金が少なくても、とりあえず仕事を得ることです。

雇用問題は、しばしばアウトサイダーの働きたいという気持ちが無視されます。アウトサイダーが、賃金が少なくても働きたいという希望を表明する機会が限られているからです。そして、経営陣と労働組合との労使交渉が、さらにアウトサイダーが仕事を得る機会を少なくします。

賃金は企業とインサイダーの労使交渉だけで決定されるので、アウトサイダーの考えは無視されがちで、賃金は高くなる傾向がある。一方、現在よりも低い賃金が選ばれれば多くのアウトサイダーを新しく雇用することが可能になり、失業者数を減らすことができる。しかし、インサイダーはそこまでの連帯感がないので、賃金は低くならない、従って、企業は新しい人を雇用できず、失業率は下がらないのである。
(213ページ)

インサイダー・アウトサイダー理論は、昨今の非正規雇用が増えている問題にも当てはまるのではないでしょうか。

企業の人件費の負担能力が一定であれば、正社員が現在の地位を維持するためには、できるだけ人を雇わないようにするのが望ましいです。しかし、社会から企業にもっと雇用を増やせという圧力がかかります。そのため、インサイダーが現在の収入をできるだけ減らさずに雇用を増加させるには、正社員よりも低い賃金で働くことを条件とした非正規社員としてアウトサイダーを雇うことになるでしょう。

また、非正規社員を雇用する場合でも、退職者の補充程度になるでしょう。そうすれば、現役のインサイダーの収入を減らさずに雇用できます。

女性の社会進出で男性は賃金下落を受け入れるべき

現代日本では、社会に出て働く女性が増えています。そのため、労働人口は昭和の頃よりも多くなっています。

冒頭でも述べましたが、雇用も需要と供給で決まります。賃金原資が一定と仮定すれば、働きたい人が増えれば、労働者1人当たりの賃金を減らして雇用を増やさなければなりません。しかし、インサイダーが現在の収入を維持しようとすれば、女性が社会で男性と同じ仕事をしても、得られる賃金は少なくなります。

インサイダー(男性)が現在の賃金を維持し、アウトサイダー(女性)が職を得て男性と同じ賃金で働けるようにするにはどうしたら良いでしょうか?

その答えは、ケインズが言う有効需要の創出です。

しかし、公共事業を行っていては、国の借金が増える一方です。公共事業を行わずに有効需要を創出するためには、人口を増やすことです。少子化対策をして子供が増えれば、その子供たちを育てるための仕事が生まれます。食料の生産、衣料品の生産、保育園などのサービス、その他もろもろの需要が発生するので、その需要に応える新たな仕事に女性が就くことで男性も現在の収入を減らさずに済みます。

富は無限か?

こうやって考えると、国が少子化対策を推進する理由がわかりますね。

でも、人口を増やし続けて総需要を増加させ続けることが可能なのでしょうか?

人口増加と総需要が比例するためには、富が無限に存在しなければなりません。有限であっても、限界までまだまだ余裕があれば人口増加で経済発展させれるでしょう。

しかし、富を資源と読み替えればどうでしょうか?

誰もが、資源は有限だとわかっています。限りある資源の有効利用が大切だと理解しています。それなのに人口増加で経済発展を目論むと、どこかで破綻するのはわかりきっています。

少子化対策で景気を良くしようとするよりも、インサイダーがアウトサイダーを受け入れる方が大切ではないでしょうか。