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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

経済が成熟した社会で経営を効率化できるのか?

経営者

経営の効率化。

ニュースなどでよく耳にする言葉ですね。この経営の効率化とは、お金、時間、作業など無駄を省くことという意味で使われていると思います。そして、経営を効率化すれば今までよりも利益が増えるというのが一般的な認識でしょう。

でも、本当に経営の効率化で利益が増えるのでしょうか?

大量生産は最も簡単な経営の効率化

製造業にとって最も簡単にできる経営の効率化は大量生産です。規模の経済や経験曲線効果を活かせば、確実に利益を増やせます。

例えば、ある製品の製造に年間1,000万円の固定費だけが発生したとします。販売価格は1個2万円としましょう。

年間生産量を1,000個にすれば、その製品の製造原価は1万円ですから、1個あたり1万円の利益を得られます。1,000個すべて売れる見込みであれば、2,000万円の売上、1,000万円の利益です。

ここで経営の効率化を図り、製品1個あたり利益を5千円増やし、年間1,000個の販売で1,500万円の利益を獲得する計画を立てるとします。単純に考えれば、売価を2万円から2万5千円に値上げするか、製造原価を1万円から5千円に減らすかのどちらかを選びます。しかし、値上げすると販売数量が減ると予測された場合、利益を増やすためには製造原価を5千円減らす選択をしなければなりません。

では、5千円製造原価を減らすためにはどうしたら良いでしょうか?

すぐに思いつくのは、材料を安く仕入れる、賃金を減らすことです。しかし、この製品は固定費が1,000万円しかかかりませんから、材料費や労務費を減らすという選択肢はありません。

そうすると、製品1個あたりの製造原価を減らせないじゃないかと思ってしまいますが、簡単にこれまでの半分の5千円まで引き下げることが可能です。それは、生産量を現在の2倍にするのです。この製品は、固定費が1,000万円しか発生しませんから、これまでの1,000個から2,000個に生産量を増やせば、1個あたりの製造原価が5千円になります。

これにより、この企業の利益は、粗利1万5千円の製品を1,000個販売するので予定通り1,500万円です。

しかし、この例だと、販売しなかった残り1,000個が無駄になってしまいますよね。でも、この在庫は、貸借対照表に資産500万円として計上されるので、利益には一切影響を与えません。これぞ、会計学のマジックです。

経済が成熟化している状況では大量生産はできない

でも、販売しなかった1,000個の在庫は、以降も全く売れなければ廃棄することになります。結局、会計上はいずれ500万円の商品評価損なり廃棄損なりを計上しないといけないので、この製品の製造販売で得られる利益は最終的に1,000万円になります。

モノがない時代には、大量生産して原価を下げ、経営の効率化を図ることはできます。しかし、現代の日本のように経済が成熟した社会では、経営の効率化は難しいのではないでしょうか?むしろ、効率化ではなく、手間も時間もお金もかかるようなことをしていかないと、利益を増やせないのかもしれません。

日本経済新聞社編の「人間発見 私の経営哲学」では、たくさんの経営者の方の体験談が掲載されています。その中にジュンク堂書店の社長の工藤恭孝さんのインタビューもあり、経営の効率化とは真逆のことをしてジュンク堂を発展させてきた経緯が紹介されていました。

1982年に神戸三宮のサンパルビルにオープンしたジュンク堂2号店は、非効率経営と言ってもいいくらい効率を無視した店舗です。中学の同級生の頼みで借りたテナントだったのですが、立地の悪さから倉庫代程度に家賃が安ければ借りると言ってみたところ、先方が承諾したとのこと。

半ば流通センターのようなつもりで三百坪の店を出して、立地が悪いから一般書を置いても仕方がないと専門書中心にしてみたんです。神戸には専門書がそろった書店がない、という声を常々聞いてましたしね。
ヒントになったのが、そのころ欧州旅行に行って体験したアムステルダムの書店です。天井まで届く高い棚にぎっしり本が埋まって独特の空気でした。これだと思いましたね。
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専門書は、一般書と比較して回転率が悪く1年以上売れない本もあります。また、お客さんも値段が高いので購入には慎重になります。そして、お客さんからは「専門書を選ぶのは疲れるからいすが欲しい」と言われたそうです。

いすまで置いて本を読まれたら、ますます専門書が売れなくなりそうです。でも、そういうジュンク堂のやり方に版元も応援するようになり、人文会のような業界団体が団体を組んでやってきて、売り込んでくれるようになったそうです。

現在では、カフェを併設している店舗もあり、お客さんはコーヒーを飲みながら本を選べるようになっています。


徹底して経営を効率化していくと、最後は、どの企業も同じ商品ばかりを売るようになるのではないでしょうか?その選択は、売れるものに特化することなので、とても効率の良い経営戦略のように思えます。

しかし、効率化ばかりを意識していると、個性のない企業になり、利益を減らす結果になるのかもしれませんね。

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