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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

先進国での感染症の拡大がなければ壁で囲まれた世界の貧困層は救われないのか?

世界は壁が取り払われることで平らになりつつあります。

トーマス・フリードマンの著書「フラット化する世界(上)」では、情報や物の移動を遮る様々な壁が取り払われることで、数々の発明や革新が生まれていると述べられています。もちろん日本もフラットな世界に入っているので、それらの利益を日本人も享受できています。

しかし、世界を見渡すと、まだフラットになったこちらの世界に入って来れない国や人々が多数います。彼らは、先進国ではありえないことで命を落としますし、先進国の人々と同じくらい長生きすることも非常に困難な状況にあります。

先進国では助かる病気で命を落とす人々

「フラット化する世界(下)」では、いまだフラット化していない世界に住む人々についての記述があります。

壁が取り払われた世界では、ほとんど死ぬことがない病気でも、インド、中国、アフリカ、中南米の中にあるフラット化していない世界では、命を落とす子供たちが今も非常に多く、その数は先進国の10倍に上ります。

発展途上のフラット化していない世界の子供たちがワクチンさえあれば防げる病気によって死ぬ割合は、発展してフラット化した世界の子供の死亡率の一0倍にのぼる。HIV感染が最も激しい南アフリカの一地域では、妊婦の優に三分の一がHIV陽性だと報じられている。エイズ感染だけで、社会全体が立ち行かなくなる。
(264ページ)

HIVは知識があれば感染を防ぐことができるのですが、アフリカの貧しい国々では教職者の多くもエイズに悩まされているため、教えることもできない状況です。

中国やインドは、一部の人々がフラット化した世界とつながりを持っているので、そのうち国が発展して貧しい人々もやがてフラット化したこちら側の世界に入ることができるでしょう。しかし、フラット化した世界とつながりを持つ人がいない国では、そのような期待を持てません。フラットな世界とフラットでない世界との間に循環がないからです。

フラットな世界からの投資がなければ発展できない

フラットな世界と一切かかわりを持たない発展途上国は、いつまで経っても国民の多くは感染症で命を落とし、長生きすることはできません。

彼らがフラットな世界と関係を持つためには、フラットな世界の人々がフラットでない世界の人々に目を向ける以外にないでしょう。しかし、先進国の富裕層がこのような国々の人々に投資することは滅多にありません。なぜなら、暴力、内乱、病気が一般市民をなぶりものにする競争に明け暮れているのですから。

しかし、フラット化した世界の中には、少ないながらも彼らに手を差し伸べようとする人がいます。その例がマイクロソフトビル・ゲイツです。

「アメリカでは、一人の命を救うのに、五、六00万ドルほどかかるそうだ。そしてわれわれの社会は、それだけのものを支払うことができる。アメリカ以外の場所では、命を救うのに一00ドルもかからない。だが、その程度の金を支払おうとする人間がいったい何人いる?
これが時間の問題で、二、三0年して他の人々も追いつくというのなら、世界中がフラット化したと宣言してもいい。だが、事実はそうではない。三0億人が窮境から脱け出すことができず、そこでは教育、医療、資本主義、法の支配、富の蓄積を促進する善循環への移行が、永久に始まらないかもしれない。フラット化されるのは世界の半分だけで、そのまま固まってしまうことを、私は恐れている。」
(265~266ページ)

先進国での感染症の発生が発展途上国を救う

現在、先進国でマラリアにかかって死ぬ人はほとんどいません。

マラリアは蚊を媒介して発症する感染症で、フラット化していない世界では毎年100万人が命を落としています。


なぜ、フラット化していない世界では、これほどマラリアの被害者が多いのでしょうか?

それは、フラットな世界からの投資がないからです。マラリアの新型ワクチンを開発できたとしても、民間の製薬会社は利益が見込めないので投資をしません。だから、いつまで経っても発展途上国の人々は、マラリアに悩まされ続けているのです。

フラット化していない世界の人々が感染症に悩まされる機会を減らすためには、フラット化した世界からの助けが必要です。積極的に発展途上国の人々を救おうとする組織なり人が先進国から現れれば良いのですが、そういった組織や人は、そうそう出てきません。

それなら、フラット化していない世界では、人々は、いつまでも感染症に悩まされ続けなければならないのでしょうか?

そのようなことはありません。

フラット化していない世界から何らかの形で病原菌がフラット化した世界に持ち込まれれば、発展途上国での感染症の予防や治療が進むはずです。

先進国で起こり得るパンデミック

例えば、エボラ出血熱

日本でも、海外渡航者が帰国し高熱を出していたら、エボラ出血熱の感染が疑われ隔離されます。そして、検査が行われ、陰性であれば帰宅できます。

日本国内でエボラ出血熱の感染者が出ていない以上、製薬会社もその特効薬やワクチンの開発に本腰になることはないでしょう。しかし、いったん日本国内にエボラウイルスが持ち込まれれば大騒ぎとなり、政府が感染拡大を防ぐために動き、民間の製薬会社も薬の開発を行うでしょう。また、学校でも児童や生徒に予防法を教え、感染の拡大を防ぐはずです。

こういったことが行われると、いずれはエボラウイルス対策ができるようになります。万が一、感染しても特効薬を使えば命を落とさずに済みます。そして、特効薬が発展途上国にも行きわたるようになれば、エボラ出血熱で命を落とす人が激減するでしょう。


しかし、フラット化した世界にフラット化していない世界から病原菌が持ち込まれると、考えられないスピードで感染者が増加する危険があります。

なぜなら、フラット化した世界では壁がないからです。

情報も物も障害なく速く移動できる世界では、病原菌の移動もあっという間です。企業が作り上げたサプライチェーンに乗っかれば、病原菌が全国に広がるのにそれほど時間を要しないでしょう。それは、アマゾンで注文した商品が翌日に自宅に配達されるのと同じなのです。


フラット化していない世界の人々を救うためには、フラット化した世界で病原菌の大量感染(パンデミック)の危険を追わなければならないのかもしれません。

フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)