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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

達成目標と学習目標は違う。結果を求める自分と能力の向上を求める自身。

仕事でもスポーツでも何でも構わないのですが、何か作業をしている時、心の声が聞こえてくることはありませんか?

例えば、ゴルフで50センチのパットを外した時、「おまえは何をやってるんだ。焦るからこんな簡単なパットも入れれないんだ」と自分自身を叱咤する心の声が。その声の張本人は、まぎれもなく自分なのですが、なぜ人は心の声で自分自身を叱咤するのでしょうか?

そして、ゴルフの経験を積めば積むほど、スイングの前に「目の前にバンカーがあるぞ。そんなスイングでは、また、いつものようにその中にボールを打ち込んでしまうぞ」といった失敗を予言するかのような心の声が聞こえるようになります。

この心の声のせいで体が委縮し、自身の本来の能力を発揮できなくなっているのですが、人はなかなかそれに気づきません。

仕事の定義

W・ティモシー・ガルウェイは、心の声のことをセルフ1(自分)と呼び、行動している体のことをセルフ2(自身)と呼んでいます。人は、セルフ2の自由にませている時が、現状での最高の活動を行えるとガルウェイは考え、そのようにテニスのコーチをして選手を育ててきました。

誰もが、セルフ2が持っている能力を十分に発揮できれば、仕事でもスポーツでも現状での最高の表現ができるのですが、それを阻止しているのがセルフ1(自分)なのです。セルフ1は、セルフ2に向かって様々な支持をしてきます。セルフ2は、セルフ1の指示に従おうとすればするほど、本来の能力を発揮しにくくなり、仕事でもスポーツでも満足のいく結果を出せなくなります。

スポーツであれば、プレー中の短い時間だけ集中状態(フロー)に入り、セルフ1の声が聞こえなくなってセルフ2が自由に動けるようになることがあります。何かスポーツをしたことがあれば、誰もがプレーにのめり込む感覚を味わったことがあると思いますが、その状態こそがセルフ2が本来の能力を発揮できている状態なのです。

では、仕事でもスポーツと同じような集中状態を作り出せるのでしょうか?

ガルウェイは、著書の「インナーワーク」の中で、スポーツはコーチのアシストで集中力を持続させやすいし、選手自身が集中を復元することも可能だと述べていますが、それは短時間しか続かないとも指摘しています。そして、仕事は長期間の活動であるので、このような応急処置では根本治療にならないとも述べています。

仕事で要求される集中力は一部のスポーツの、たとえば100メートル競走や重量挙げ、あるいは数分間の体操演技といった状況に必要とされる集中力と異なって、もっと長い時間の持続が要求される。その持続には、今やっている行為の「意味」や「定義」を、もっと深く見つめる必要がある。テニス、ゴルフ、音楽、人間関係、そして仕事もそうだ。
自分が今本質的に何をしているのか、それをセルフ2がどう理解しているかが、長時間の集中では問われてくるのだ。
(146~147ページ)

仕事は、スポーツのような短期的なゲームではありません。長期的に行う仕事では、仕事の定義が必要となりますが、その背景や場面も意味するものでなければ集中力を持続させるのは困難です。

しかし、仕事では上司、顧客、製品、従業員、会社、経営権、目標、公平さ、といった言葉に独特の意味づけがされていて、それは主観的に翻訳されていることが多いことから、現実を限定的にしか捉えられません。そして、結果も限定されたものになってしまうのです。

古い定義を変える

ゴルフでは、プレッシャー、ハンディ、自尊心など、文化社会から押し付けられている価値観のようなものの中でプレーすることを要求される場合が多いです。短いパットを外したからと言って人生に与える影響などないはずですが、なぜかゴルファーは、短いパットを沈められないと自分自身の価値が下がるような強迫観念にかられます。

これを逆手に取ってみよう。地球上のゴルファーが、今与えられている「ゴルフ」の定義は、必ずしもゴルフそのものではなく、文化社会の風習から押しつけられているものに過ぎないのだと、再認識したらどうなるだろう。ゴルファーが自分で新しくゴルフを定義しなおしたとき、同じスポーツをしながら、別の新しいスポーツをすることができる。それによって、これまで押しつけられていた不安や恐怖を根本的に除去できる可能性がある。つまり「概念の手術」だ。
(150ページ)

これまでの古い定義は、社会から押し付けられたものです。ゴルフだと、このコースならパーをとれて当たり前だとか、このグリーンは見た目以上に難しいとか。そういった周囲から受けるプレッシャーに加えて、セルフ1まで同調するものだから、セルフ2はガチガチに固まって本来の力を発揮できなくなってしまいます。

ところが、文化社会からの押しつけを排除し、ゴルファー自らがゴルフを定義しなおせば、不安や恐怖から解放されます。その時、セルフ2は初めて本来の能力を発揮できるようになるのです。

学習の目標

仕事をする時、人はたいてい目標を設定します。

売上アップ、利益率の改善、新規顧客の開拓など、様々な目標が浮かぶと思います。しかし、こういった業務上の目標は達成目標であり、自身の能力を向上させる学習目標とは異なります。

学習目標と達成目標はどこが違うのか、明確にしておこう。何かを達成するとは、外側の世界に目に見える変化を起こさせることだ。学ぶとは、学習する側が―多くの場合は外側世界と相互関連があるのだが―内側の世界に変化を起こすことだ。従って、新しい情報や、古い情報の新しい解釈に基づく「新たな理解」も学習に含まれる、より優れたコミュニケーションの担い手や、問題解決のプロ、あるいは飛行機のパイロット、企業のリーダーになるためのノウハウを習得することは、個人の内側に変化を生じさせる。これらは学習の成果によるものだ。
(163ページ)

仕事上の目標を設定する際、達成目標を掲げてしまうのは、業務上の成果をすぐに得たいためなのでしょう。そして、周囲から無言のプレッシャーを受けるものだから、ますますセルフ1が、今よりも売上を増やさなければならない、顧客を開拓しないといけないとセルフ2を急き立てるのです。こうなると、目の前の達成目標ばかりが気になり、学習目標が疎かになってしまいます。

しかし、本来、人は目標を達成したから喜びを感じるのではなく、学習することに喜びを感じ、その結果として業務上の目標が達成されるのです。また、学習目標は、過去の経験や知っていることの範囲で設定されますが、学習が進むにつれて自分の興味がどこに向いていくか、心を大きく広げて待ち構えることも大切です。そういう心構えでいることが、セルフ2をセルフ1の束縛から解放し、持てる能力を発揮しやすくなるのではないでしょうか。

ゴールは、自分から自分の望む方向へ動くこと(モビリティ)を学習し、外からの力で働かされるのではなく自分の意識を持ち続けて働くことであり、それによって仕事中でも「自由な人間」になることだ。
(366ページ)

インナーワーク―あなたが、仕事が、そして会社が変わる。君は仕事をエンジョイできるか!

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