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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

穀物栽培が引き起こす食糧危機をどう考えるか

米や小麦といった穀物栽培が、人類の危機になると指摘しているのが、医師の夏井睦さん。

著書の「炭水化物が人類を滅ぼす」の中では、糖尿病やメタボリックシンドロームの原因となる炭水化物の有害性を医学的に解説するとともに、人類が主食として穀物を食べ続けることが、地球環境の面から限界に近づいていると述べています。

糖質摂取がもたらす数々の成人病

この本の前半部分では、糖質制限について解説されています。

炭水化物という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、その内容を説明できる人は少ないのではないでしょうか?僕も、炭水化物が何かということを数ヶ月前までは詳しく説明することができませんでした。

「炭水化物って米や麺類のことでしょ」

という感じの認識だったわけです。僕だけでなく、このように答える人は多いはず。でも、これだとぜんぜん答えになっていないんですよね。炭水化物というのは一言で言うと以下のようになります。

炭水化物とは、糖質と食物繊維の総称

つまり、炭水化物と一言で言っても、そこには糖質と食物繊維の2種類が含まれているわけです。食物繊維は、食べ物に含まれる栄養にならないもののことで、食べても排泄されるだけです。

一方の糖質は、砂糖に代表されるブドウ糖グルコース)、果物に多く含まれる果糖(フルクトース)、乳糖(ラクトース)などがあります。米やイモに多く含まれているデンプンも体内に入るとブドウ糖に変わるので糖質です。

糖質を摂取すると血糖値が上昇します、高血糖は体にとって危険な状態であるため、膵臓からインスリンが分泌されて、血糖値を下げようとします。この時、血糖はインスリンによって脂肪に変えられ、体内に蓄えられます。

高血糖の状態が続くのが糖尿病、中性脂肪の値が高いのが高脂血症なわけですが、これらの原因となるのが炭水化物、厳密に言うと糖質なのです。だから、糖尿病の予防には米や小麦など炭水化物が多く含まれた食品の摂取を制限するのが効果的です。もちろん中性脂肪を減らすのにも糖質制限は有効です。

さらに夏井さんの体験では、高血圧も糖質制限で解消されたということです。

夏井さんだけでなく、糖質制限実践者の数々の体験談が、同書には収録されており、同様の成果を上げている人ばかり。医学的に糖質が成人病の大きな要因となっていることが理解できます。

穀物生産がもたらす環境破壊と食糧問題

前半だけを読むと、糖質制限を解説した家庭医学書という感じなのですが、同書はさらに穀物生産の問題点や農耕の起源など、様々な視点から糖質についての解説が行われていきます。

現代、米や小麦といった穀物は、人間の主食となっています。それと同時に豚や牛などの家畜の飼料としても使われています。

人間と家畜が同じように穀物を食べ続けるとどうなるのでしょうか?もしも、穀物栽培に限界が来たとき、人間と家畜で食べ物の取り合いが起こるということです。家畜は人間から飼料を与えられて生きているので、穀物が不足すると、当然のことながら人間を優先することになるので、家畜の数が減っていきます。

家畜が減るということは、われわれ人間も、牛肉や豚肉を食べることができなくなります。牛乳も飲めません。つまり、動物性タンパク質の補給が困難になるということです。

こういう事態になった時、夏井さんはウジ虫をタンパク源として利用するとのこと。現在、ウジ虫を食用として活用する研究も進んでいるということなので、近い将来、スーパーの店頭で目にする機会があるかもしれませんね。

ところで、穀物栽培が限界を迎えるということが本当にあるのでしょうか?

農業というのは、再生可能な産業という見方が主流ですが、実はそうではないのです。穀物を栽培しようとすると乾燥した土地に大量の水を撒く必要がります。水を撒けば撒くほど、塩が上がってくるので、塩害を起こし、ほとんどの作物は栽培不可能となります。すなわち、農業というのは、土壌を破壊する産業なのです。

さらに農業には、大量の水が必要となります。そのため、多量の地下水が汲みあげられますが、そうすると、水不足が起こります。人類の食を確保するための農業が、飲料水の不足をもたらす行為だったということです。

ようするに、現在の穀倉地帯での穀物農業は、環境破壊型農業であり、どこかで必ず限界に達し、破綻するシステムだったのだ。(126ページ)

先ほども述べましたが、穀物は人間だけでなく家畜の飼料となるので、両者の間で競合が起こります。だから、人間と家畜で競合が起こらない食べ物の模索が必要となるわけですが、その結論が、先ほども紹介したウジ虫です。ウジ虫の食べ物と人間の食べ物は競合しません。だから、ウジ虫を養殖することで、タンパク源の確保が可能ということなんですね。

人類の繁栄をもたらした農耕

ここまで、穀物栽培が人類を危機に追い込んでいるということを述べてきましたが、現在の人類の発展もまた穀物栽培のおかげであることは言うまでもありません。

人類がこの世に誕生した時から農耕を行っていたわけではありません。農耕の歴史は1万年ほどですが、それ以前から人類は地球上に存在していたので、農耕以外の手段で食物を得ていたことは容易に想像できます。

夏井さんによると、農耕開始前と開始後の人類の骨格を調べると、農耕開始前の狩猟が中心だった時代の人類の方がたくましい体をしていたということです。しかし、狩猟というのは、獲物をとれるかどうか不確実であったため、農耕開始後と比較すると、世界の人口はかなり少ない状況でした。

爆発的に人口が増えたのは農耕開始後で、さらに農業の技術の進展があるたびに人口の爆発的増加が起こり、現在では世界の人口が70億人にまで膨れ上がっています。今後も人口の爆発的な増加が続くことが予想されますが、人口が増えれば増えるほど、穀物栽培の行きづまりも早くなります。

農業が世界から飢餓を無くすというのは幻想にしかすぎません。それどころか地下水の枯渇とともに穀物栽培は終焉を迎える運命にあります。

その運命を人類はどう乗り越えるのか?

残された時間はもうほとんどないかもしれませんが、考えていかなければならない問題ですね。

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