ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

二酸化炭素が少ない地球上では植物にとっても紫外線は有害

植物は、光合成によって光エネルギーを化学エネルギーに変換しています。

光合成は、二酸化炭素、水、光の3つの要素がなければ行うことができません。だから、植物は、お日様の光をいっぱい浴びると、たくさんの化学エネルギーを得られるので、大きく生長し、繁殖力も増し、多くの子孫を残せます。

ところが、植物は紫外線を浴びると弱ってしまいます。太陽光を浴びて光合成すれば元気に育つはずなのに紫外線を受けると弱ってしまうなんて、矛盾しているような気がしませんか?

太陽光と比較して二酸化炭素が少なすぎる

農学博士の田中修さんは、著書の「植物はすごい」で、約4億年前に植物の祖先たちは、太陽の光にあこがれて海から上陸したと述べています。植物の祖先たちが太陽の光にあこがれたかはわかりませんが、海よりも陸の方が陽射しが強いので、光合成しやすいことは想像できます。

しかし、彼らにとって陸上は、想像していたよりも過酷な環境でした。その理由は、太陽光と比較して大気中の二酸化炭素が少なすぎたからです。

空気中の約80%が窒素、約20%が酸素なので、空気の大部分はこの2つで構成されています。では、光合成に必要な二酸化炭素の濃度はと言うと、たったの0.035%しかないのです。この程度の二酸化炭素しか大気中に含まれていないことが理由で、植物は太陽光の3分の1程度しか光合成に利用できません。

晴天の日、昼間のまぶしい太陽の光の強さは約一〇万ルクスと表されます。電気スタンドで机の上を照らすとだいたい五〇〇ルクスといいますから、日中の太陽はその二〇〇倍もの明るさです。ところが、多くの植物たちが光合成で使いこなせる太陽の光は、二.五万~三万ルクスです。つまり、多くの植物の葉っぱは、昼間のまぶしい太陽光の三分の一以下くらいの強さを使いこなせるに過ぎないのです。
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二酸化炭素(CO₂)の排出量が増えるほど、植物にとっては光合成しやすくなるので好ましいことと言えます。しかし、二酸化炭素濃度が極めて少ない地上では、植物は太陽光を光合成によって化学エネルギーに変換する利点よりも、多くの紫外線を浴びる欠点の方が大きいのです。

活性酸素から身を守る抗酸化物質

美容に関心のある女性なら、ビタミンCやビタミンEが若々しさを保つために大切な栄養素だとご存知でしょう。

これらは、抗酸化物質と呼ばれ、活性酸素の害から健康な細胞を守ってくれる働きをします。紫外線を浴びると活性酸素が発生するので、それが原因で肌にシワやシミができるとされています。だから、外出時はできるだけ陽射しを避けた方が美容にとって好ましいと言われています。

太陽の強い光や紫外線は、植物にとっても有害です。太陽光の3分の1しか光合成に利用できないからと言って、残りの太陽光を体に浴びないということはできませんから、植物たちは常に紫外線によるダメージを受けています。だから、植物の体には、紫外線から身を守るためにビタミンCやEといった抗酸化物質が多く存在しているのです。

植物たちは、活性酸素を消去しなければ、生きていけません。そこで、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質をつくり出し、活性酸素の害を消すという仕組みを発達させました。
私たち人間の場合も、有害な活性酸素は、紫外線に当たったときだけに発生するのではありません。激しい呼吸をしているときにも、多くの活性酸素が発生します。だから、多くの活性酸素に悩まされています。
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もしも、大気中の二酸化炭素の濃度が今よりも多くなれば、植物たちは光エネルギーの多くを化学エネルギーに変換できるようになるので、その分、ビタミンCやEを体にたくさん持つ必要はなくなるかもしれません。

色が濃く美しい花ほどきつい陽射しに耐えている

植物が咲かせる花は、その美しさで人を魅了します。

花弁に色を出す色素はアントシアニンとカロテンで、この二大色素が花を美しく染め上げます。しかし、アントシアニンもカロテンも、花を美しい色に染めることが目的ではなく、有害な紫外線から身を守り、子孫を繁栄させるために備えた防御機能なのです。

植物にとって紫外線は、彼らの存在を脅かす危険なものです。だから、ビタミンCやEといった抗酸化物質だけでは太刀打ちできないので、アントシアニンやカロテンといった抗酸化物質も持つことで、防御機能を強化しています。

花が色濃く咲くほど、アントシアニンとカロテンが一生懸命働いているので、植物は紫外線の攻撃を強く受けていることがわかります。高山植物の多くに色濃い花が咲くのは、紫外線を遮るものがない高地に植わっていることが理由の一つです。

果物の果皮も紫外線から身を守る

植物が果物をつくるのは、子孫を残すためです。

果物の中には、タネが入っています。そのタネが地面に落ちると芽が出て木に生長します。

わざわざ果物の中にタネを入れなくても、枝先にタネを付けて、地面にポトッと落とせば良さそうなものです。でも、それでは様々な不都合があります。

果物に含まれる果汁は栄養となりますから、果皮で覆われてなければ果物は乾燥して大きくなれません。そうするとタネも作れなくなります。だから、果物の中にタネを仕込み、果皮で包み込むことで乾燥を防いでいるのです。

さらに果物は、紫外線からタネを守っています。

果皮が傷つくと黒くなるのは、ポリフェノールが果皮またはその内側に存在するからです。ポリフェノールは、抗酸化作用があり、紫外線の害を防御します。リンゴやトマトの赤い皮、ミカンやカキの黄色い皮、紫色のブドウやブルーベリーの皮などに含まれる色素は、紫外線の害を防ぐ作用のあるアントシアニンやカロテンです。だから、果皮は、実の中に生まれてくる子どもであるタネを紫外線の害から守っています。
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植物は、このように様々な防御機能を持って太陽の強い陽射しや紫外線から身を守っています。

その場で動かず、夏もきつい陽射しを受けている植物は、決して日光浴を楽しんでいるのではないんですね。実は、陽射しにじっと耐え忍んでいるのです。花の色が濃ければ濃いほど、我慢強い植物なのかもしれません。

植物の防御機能を甘く見てはいけない

植物性という言葉を聞くと、何やら人間にとって優しい響きがあります。しかし、それは、メディアによって作り上げられた印象でしかありません。

植物は、その場で動くことができません。当然、外敵に襲われる危険性は、昆虫や動物のように動ける生物よりも高いはずです。だから、植物たちは、自分の体に罠を仕込んで外敵から身を守っています。

人間が葉っぱを食べると、お腹を壊してしまうことがあります。これは、植物が葉を食べられないように仕込んだ毒が含まれているからです。ウルシのように触るだけでかぶれるものもあります。

動かないから優しいのではなく、動かないからどんな罠を仕込んでいるのかわからず危険なのです。

植物が生き残るために備えた機能を甘く見ていると、ひどい目に遭いますよ。

植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)

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