ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

人間が見ているものは脳が勝手に想像したもの

人は、自分の眼で見たものを事実だと判断します。

テーブルの上に真っ赤なリンゴが置いてあれば、それを見て「真っ赤なリンゴ」だと判断しますよね。何を当たり前のことをと思うでしょうが、実は、その真っ赤なリンゴはあなたが勝手に想像してそう思っているだけかもしれません。

人間の眼は、実際に目の前に存在しているものをカメラやビデオのレンズと同じように客観的に映していると思うでしょうが、必ずしもそうとは言えません。あなたが見ている目の前の景色は、実はあなたの脳が勝手に作り出した世界なのかもしれません。

実際に盲点を体験してみる

盲点という言葉があります。

景色の一部が視界に入って来ないことを盲点と言ったり、考えが及ばなかったことを盲点だったなんて言い方をしたりしますよね。この盲点は、実際に人間の眼に存在しています。

下の図の右側は黒背景の中央に白い丸があり、左側の白い部分の中央には黒い丸があります。ここでちょっとした実験をします。右目を閉じて左目で右側の白い丸を見てください。そして、画面の10cm程度の距離まで顔を近づけていってください。
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何か変化がありましたか?

きっと、左側の黒い丸が消えて真っ白になったのではないでしょうか。そう、これが盲点なのです。

薬学博士の池谷裕二さんが、著書の「進化しすぎた脳」で盲点についてわかりやすく解説しています。

人間の眼には、外の世界がレンズを通して映される網膜があります。網膜には、視神経が束になって出ていく穴があるのですが、目の構造上、この部分だけは見えなくなっています。つまり、上の図で黒い丸が消えてしまったのは、それが網膜の穴の部分と重なったからなんですね。この穴の部分にあるのが盲点なのです。

見えない部分は脳が勝手に想像している

では、もう1回同じ実験をしてみましょう。

でも、まったく同じでは面白くないので、上の図を左右逆にしてみました。先ほどと同じように右目を閉じて左目で右側の黒い丸を見てください。そして、顔を画面の10cmほどまで近づけます。
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どうなりました?

左側の黒背景の中央にあった白い丸が消えて、左半分が真っ黒になったはずです。なぜ、白い丸が黒くなったのでしょうか?

→反対側の眼が補っている・・・・・?
それもあるけど、でも、今の場合は片方の目を閉じて一方だけで見ても、ほんとは見えてない場所があるのに、気づかないでしょ。なんでかな。いまこれが黒くなったことがヒントだよ。
→勝手に想像して・・・・・。
そう、勝手に想像してるんだ。まわりが黒いから、見えないところもきっと黒だろうと、見えない部分を埋め込んでいるんだ。最初に試したバージョンではまわりが白色だから、白で埋めた。実は、これは盲点だけの問題じゃないんだ。
(142ページ)

人間の眼は欠陥だらけで、実際の景色を見ているとは限りません。例えば、網膜の上にはたくさんの毛細血管があって、その部分は血管が邪魔になって外の景色が見えません。でも、人間の眼は見えているはずの毛細血管が見えず、毛細血管が影になって見えていないはずの外の景色を見ています。

これは、脳が無意識のうちに毛細血管が邪魔をしている部分の景色を作り出して視界の一部を補っているから起こることなのです。

見えていないはずの景色が見えている

人間の脳は、右脳が体の左側を支配し、左脳が体の右側を支配しています。

したがって、右目で見ている景色は左脳がカバーし、左目で見ている景色は右脳がカバーしています。

もしも、交通事故などで右脳の視覚野がダメージを受けた場合、視野の左側が見えなくなってしまいます。だから、右脳の視覚野がダメになった人には右側の景色だけしか見えません。

その人でちょっと実験をしてみよう。「正面を見ていてください」とお願いする。この患者は右側はちゃんと見えるわけ。だから、その右側に赤いライトをパッと出して、「どこが光りましたか」と尋ねると、「ここです」と指すことができる。
逆に、左側に光を出しても、どこが光ったかはもちろん、光ったことにすら気づかない。「いまどこが光りましたか」と訊くと、「わかりません」とか「光ってません」と返事が戻ってくるわけだ。でも強引に「あてずっぽうでもいいからどこが光ったか指してみてください。カンでもいいので」と言うと、驚くべきことに、ちゃんと正しく光った場所をきちんと当てることができる。
(135~136ページ)

このように目が見えていないのに見えているようにふるまう行動を盲視といいます。

不思議ですよね?

どうやら人間の脳は目の情報を処理するのに第一次視覚野だけを使っているわけではないようなのです。おそらく、脳の真ん中あたりにある上丘(じょうきゅう)と呼ばれる場所でも目の情報を処理していると考えられています。

戦争が脳科学を進歩させる

人間の脳って不思議ですよね?

別に人間に限ったことではなく、動物の脳だって不思議です。

このような脳の不思議を解明していく脳科学は平和な時代にはあまり進歩しません。脳科学を急速に進歩させたのは戦争なのです。兵器や武器が改良されると、弾丸や弾道が鋭く正確になっていきます。第一次世界大戦よりも第二次世界大戦第二次世界大戦よりもベトナム戦争の方が兵器が進歩しました。

ライフルを想像してもらえばいいけど、昔のライフルは鈍かった。だからこそ殺傷力が大きかったとも言えるんだ。脳をバーンっと撃たれて、兵士が死ぬ。
だけど、兵器の技術が進んだ結果、ものすごく鋭利で剃刀みたいな、しかもスピードの速い、そういう弾丸を発射できるようになると、脳に弾丸が当たっても「死なない」というケースが出てきたんだ。
(56ページ)

脳に弾丸が当たっても死なない、それは、致命傷にはならないけども、脳の一部が損傷した状態で生き続けなければならない人が増えるということです。そういった人たちの脳のダメージを受けた部分と障害を照らし合わせることで、脳のどの部分が人間のどの機能と関係があるのかが、研究されてわかっていくわけです。

脳科学に限らず科学の進歩には、そういった負の面が多くあります。普段、余暇を楽しむためや何か調べ物をするために使っているインターネットだって、戦争によって発達しました。

世の中が便利になると、その背景には不幸になった人がいるということを忘れてはいけませんね。