ウェブ1丁目図書館

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生物進化は突然変異ではなく用不用の法則によって起こる。

過去から現在に至るまで、生物は進化を遂げてきました。

数万年以上前にこの世に発生してから、現在まで生き残っている種の多くは姿かたちを変えながら進化しています。

現在、生物進化の常識となっていると言ってもいい考え方に突然変異と自然淘汰があります。しかし、この考え方に疑問を持っている人もおり、歯科を専門とする西原克成さんもその一人です。

用不用の法則と獲得形質遺伝の法則

突然変異と自然淘汰によって生物が進化するという考え方の基礎を作ったのは、進化論で有名なダーウィンです。

ダーウィン種の起源を出版する前から、生物進化には別の考え方がありました。それは、ラマルクが唱えた用不用の法則です。西原さんの著書「生物は重力が進化させた」に簡単な解説が掲載されているので引用します。

すべての動物において、ある器官の頻繁で持続的な使用は(発達の限界を超えないかぎり)、この器官を少しずつ強化・発達させるとともに大きくし、これに比例した威力を付与する。他方、しかじかの器官をまったく使用しないと、この器官はいつのまにか弱まって役に立たなくなり、しだいにその力を減じてついには消滅する。(19ページ)

簡単に言うと、体の中でよく使う部位は発達し、使わない部位はやがて失われてしまうということです。

水の上を泳ぐ水鳥の水かきは頻繁に使うことで発達しましたが、モグラの眼はあまり使われることがないから退化しました。これらが用不用の法則の具体例です。


ラマルクが唱えた説には、他に獲得形質遺伝の法則があります。

ある種族が久しい以前より身をおいてきた状況の影響により、すなわちある器官の優先的な使用の影響およびある部位の恒常的な不使用の影響により、自然が個体に獲得させたあるいは失わせたあらゆるものは、獲得させた変化が雌雄に共通であるか、新しい個体を生み出したものに共通であるかぎり、自然は生殖によって新しく生まれた個体にこれを付与する。(19~20ページ)

こちらも簡単に説明しておくと、用不用の法則によって発達した器官や消失した器官は次世代に受け継がれるということになります。

用不用の法則が忘れられた説となったのは、この獲得形質遺伝の法則が否定されたためです。獲得形質遺伝の法則とセットで用不用の法則まで否定され、それが現在にまでいたっていると西原さんは述べています。

自然淘汰を強調したワイスマン

ラマルクの獲得形質遺伝の法則を否定し、ダーウィンの進化論の中の自然淘汰を強調したのがワイスマンでした。

彼は、後天的に獲得した形質は遺伝しないと主張し、そしてある実験を行いました。その実験は、ネズミを22代にわたり、総計1,600匹の尾を切り続けるというもの。もしも、ラマルクの獲得形質遺伝の法則が正しければ、尾を切り続けていると、やがて、最初から尾が生えていないネズミが生まれてくるはずなのですが、そのようなことは起こりませんでした。

これにより獲得形質遺伝の法則は否定され、用不用の法則までもが否定されるにいたったのです。


しかし、この実験は非常におかしいです。

ネズミは、尾を必要ないと判断して失ったのではなく人為的に失わされたのですから。これはネズミに対する単なる傷害事件でしかありません。人間の腕や足を切り続けて代重ねをしていけば、やがて生まれた時から腕や足がない赤ちゃんが生まれるでしょうか?

もちろん、障害を持って生まれてきた方の中には、腕や足が生まれながらにしてないことがあります。でも、そのような特別な事情がない状況では、腕や足を切り続けても、生まれた時からそれらを持たない赤ちゃんが生まれるとは思わないですよね。

用不用の法則は、その種が自ら新しい能力を得るか使わなくなった器官を退化させることなので、ワイスマンの批判は当たりません。しかし、今日では、ワイスマンの実験結果により、用不用の法則は忘れられた説となっています。

獲得形質は遺伝で受け継がれるのではない

西原さんも、ラマルクの獲得形質遺伝の法則については、「獲得形質が次の世代に遺伝するか」という問いかけをするかぎり、やはりまちがっていると述べています。

それなら、用不用の法則も正しくないのではないかと思うところですが、そもそも、獲得形質を遺伝のみでしか次世代に伝えることができないという考え方に問題があります。


親が子に獲得形質を伝える方法は、遺伝ではなく、親の行動様式を子に伝えるだけです。ただ、それだけで後天的に得た能力が子に受け継がれるのです。

西原さんは、ウーパールーパー(アホロートル)を使って実験をしました。

ウーパールーパーは、首のあたりに外に飛び出した大きな鰓(エラ)を持っています。彼らは水棲の生物なのですが、西原さんはこれを人為的に陸棲の生物にしてみたのです。

陸棲にする方法は二つある。徐々に水を減らすか、陸にあげて常時シャワーを浴びせておけばよい。すると外鰓がどんどん縮んでくるのである(123~124ページ)

同書には、実験前と実験後の写真が掲載されていますが、確かに陸にあげて育てたウーパールーパーは、鰓が縮んでしまい、ほとんどなくなっています。


この実験から何が言えるのでしょうか?

それは、行動様式を変えれば形や器官が変わってしまうということです。

突然変異した亜種が他者を淘汰するのか?

現在、多くの人に受け入れられているダーウィンの進化論は、ワイスマンが唱えたネオ・ダーウィニズムです。実は、ダーウィンは、ラマルクの用不用説と獲得形質の遺伝も認めていたのですが、ワイスマンによって新たな生物進化の考え方が定着してしまったのです。

そもそも、突然変異した亜種が従来種よりも優位となり自然淘汰が起こるのでしょうか?

西原さんが、サザエやアワビなどを養殖している漁師に話をうかがったところ、突然変異で種が変わると信じている人は少なかったそうです。

養殖するとき、孵化は水槽でおこなうので、生まれた時の初期条件は天然の荒波とはまったく違う。稚魚、稚貝にまで育ててから自然の海に戻すわけであるが、三年、四年と経っても天然物とは違って一目でわかるから、いくら海で育てても天然物のように高く売ることができないそうである。
生まれてからある一定期間のうちに、波による力の作用をまったく受けないと、たとえばサザエだったら角の生えない角なしサザエになってしまうのである。そして、これを五代くらい続けていると、荒海にもどして産卵させても角の生やし方を忘れた個体が出てくる。亜種が生まれつつあるのである。(31~32ページ)

これは、突然変異や自然淘汰とは全く違いますね。

自らが環境に適応するために体を変化させていったととらえる方が妥当です。


西原さんは、医学では治らない病気が増えているのは、人の体が連続的に変化していることを念頭に置いていないから、病気の原因がわからないのだと指摘しています。

何でもかんでも、治せない病気を遺伝やストレスが原因だという医者はいかがなものか。それ以前に今ある常識に疑問を持ったり、なぜ、それが常識となったのかという背景を今一度考え直す必要があるでしょう。

それは、医療にかかわる方だけでなく、全ての人に当てはまることなのです。