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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

自己啓発本の前に読むべきは佐藤一斎の言志四緑

最近は自己啓発本が話題となることが多いですね。

いや、自己啓発本自体は、昔から多くの人に読まれていますから、一過性の流行ではなく何十年にも渡って流行し続けていると言えます。もはや、自己啓発は現代人の慢性病です。

僕も、過去に自己啓発本を何冊も読みました。でも、そこから得られたものは少なかったと思います。読んでいる時は、なんか役に立っている感覚があるのですが、読み終わって数日すると以前と何も変わっていない自分に気づくんですよね。

自己啓発本は1冊読めば十分です。そして、その1冊は昔から長く読まれ続けているものが良いでしょう。例えば、佐藤一斎の言志四緑をかいつまんで読むだけでも、巷に氾濫している自己啓発本を読むよりも得るものが多いのではないでしょうか?

短い言葉を日々実行する

教育学を専門とする齋藤孝さんが、言志四緑をわかりやすくまとめた「最強の人生指南書」を出版されています。

佐藤一斎は幕末の儒学者です。佐久間象山横井小楠は彼から学びました。そして、彼らに学んだ吉田松陰坂本龍馬西郷隆盛にも佐藤一斎の考え方は大きな影響を与えています。

現代でも、有名経営者の方が論語を学んで経営に生かしており、佐藤一斎の言志四緑も注目されるようになっています。

齋藤さんの「最強の人生指南書」では、言志四緑に収録されているものから佐藤一斎の言葉を抜粋し、わかりやすく解説しています。覚えやすい言葉が多いので、実生活の中で口ずさむこともできますから、日々実行できる良い自己啓発本はないかと探している方は、この本を読めば十分でしょう。

仕事に役立つ言葉

言志四緑には、現代の仕事にも役立つ言葉がいくつも収録されています。

利は天か公共の物なれば、何ぞ曾て悪有らん。但だ自ら之を専らにすれば、即ち怨みを取るの道たるのみ。
(55ページ)

この言葉は、利益を得ることが悪いことではなく、利益を独占すると他人から恨まれるから良くないという意味です。

たくさん儲けるために努力することは、何となくいやしい感じがします。儲け過ぎると他人から妬まれますし、たくさん税金を払えと言われたりもします。

しかし、佐藤一斎は利益の追求を否定していません。利益を独占するのが良くないと言っているのです。あくどい儲け方をしても、その利益を自ら社会に分配すれば世間から恨まれることはないでしょう。

極端な話、法外な値段で商品を販売して「ぼったくり」だと非難されても、その利益を孤児院に寄付すれば世間から恨まれることはそれほどないはずです。もちろん、その商品を買った人は恨むでしょうが、世間からは称賛されるのではないでしょうか?

でも、儲け方にも注意は必要だと思いますが。


利益に関して佐藤一斎はこんな言葉も残しています。

財を賑わすは租を免ずるに如かず。利を興すは害を除くに如かず。
(42ページ)

この言葉は、「国民のふところを豊かにするには、租税を免じてやるに越したことはない。利益になる仕事を始めるよりは、害になるものを取り除くに越したことはない」という意味です。

売上を伸ばして収益を拡大することも、不採算部門を閉鎖して費用を削減することも、同じように利益の増加に貢献します。でも、優先すべきは、儲けようとするよりも害を減らすことなのです。

でも、これを実行するのはなかなか難しいです。斎藤さんは、だらしない男性と付き合っている女性を例えにしています。企業なら、不採算部門ではあるけども、たまにホームランを打つことがあるから切るに切れないといった感じでしょうか。

しかし、たまに大きな収益を生み出すことだけを見ていると、本当に大切なことが何なのかがわからなくなってしまいます。害を残したまま利だけを増やすことはできません。だから、不採算部門はすぐに切ってしまうべきなのです。ただ、この場合でも、恨みを買わないようにうまく交渉することが大事だと、斎藤さんは述べています。

勉強の心構え

勉強に関しても、佐藤一斎は様々な言葉を残しています。

凡そ教は外よりして入り、工夫は内よりして出づ。内よりして出づるは、必ず諸れを外に験し、外よりして入るは、当に諸れを内に原ぬべし。
(172ページ)

教えは外から入って来るけど、工夫は自分の内から出るものです。そして、自分の内で考えたことは外で試さなければ正しいかどうかがわかりません。また、外から入ってきた知識は、自分でその成否を検討すべきです。

齋藤さんは、この言葉をインプットとアウトプットという表現で説明しています。

ただ、たくさんの情報を頭に入れれば良いというものではありません。アウトプットを前提にインプットすることが大切なのです。

例えば、このブログのデザインは無料のテンプレートを使っています。でも、そのまま使うのではなく、部分的に修正しています。もともとは、文字が小さかったのですが、それでは読みづらいだろうと思い、文字サイズを大きく変更しました。

僕は、ホームページを作る知識を持っていますから文字を大きくする修正は簡単にできます。でも、ホームページ作成の知識が全くない人だと、文字を大きくするだけでも一苦労だと思います。この時、ホームページの作り方を一通り学習するのは非効率です。文字を大きくできれば良いのですから、その部分だけを学習すれば十分です。

要は、目的が何なのかをはっきりさせてから勉強しないと、無駄な情報をたくさん入れてしまって非効率になるということですね。


上と関係する言葉を佐藤一斎は他の所でも述べています。

人の言は須らく容れて之を択ぶべし。拒む可からず。又惑う可からず。
(78ページ)

この言葉の意味は、「他人のいうことは、一応、聴き入れてからよしあしを選択すべきである。始めから、断ってはいけない。また、その言に惑ってはいけない」ということです。

入ってくる情報は、とりあえず入れてしまって、その後で良い情報と悪い情報を分類すべきです。入ってくる情報の一部を遮断するのは良くないですし、かと言って、入ってくる情報全てを鵜呑みにすべきではありません。

齋藤さんは、この言葉を「取捨選択の順番を間違えないように、という教え」だと説明されています。

信念を持つ

人は誰でも、他者からの評価を気にしてしまいます。しかし、人に認められることより信念を持って行動をする方が大切です。

凡そ事を作すには、須らく天に事うるの心有るを要すべし。人に示すの念有るを要せず。
(184ページ)

意味は、「すべて事業をするには、天(神または仏)に仕える心をもつことが必要である。人に示す気持ちがあってはいけない」ということです。

日本は恥の文化と言われるように世間体を気にする風潮があります。他人に迷惑をかけるのは良くありませんが、何をするにしても他人の目が気になるというのも考え物です。そういう意識が強くなると、やがて、人に認められたいという気持ちで仕事をするようになるのではないでしょうか?

しかし、人に認められることを意識した仕事が必ずしも社会にとって良いこととは言えません。国民にとって心地良い言葉を連呼して、選挙に当選する国会議員を見ていれば、それがわかるでしょう。


人に認められなくても天に認められる行動をする。


そういう信念を持ってする行動は、やがて社会から認められるはずです。この佐藤一斎の言葉に対して齋藤さんは以下のように述べています。

少し前までは、友達とのつきあいが濃く、自分自身にもある程度自身があって、人に何と思われようがかまわない、というタイプの人が多かったのですが、いまは、まわりの評価によって自分の心の状態が刻々と変化してしまう、ある意味、場の空気を感じすぎるような繊細さと真面目さを持った若者が増えています。
でもそのような時代だからこそ、自分の心にもう一度「天の感覚」を持って、人ではなく天を相手に生きるという道を目指すことが必要なのではないかと思います。
(186ページ)

最強の人生指南書(祥伝社新書205)

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