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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

有機栽培で育てた野菜や米は腐る

リンゴの無肥料無農薬栽培に成功した木村秋則さんを有名にした書籍に奇跡のリンゴがあります。映画にもなったのでご存知の方も多いことでしょう。

その木村さんですが、今もリンゴの栽培をしています。そして、農業関係者の方に無肥料無農薬栽培の指導をしているようです。リンゴの無肥料無農薬栽培に成功した木村さんのその後の活動は、「リンゴが教えてくれたこと」という著書の中で紹介されています。この本を読むと、人間は、とにかく何かしなければと思い込みすぎているような気がしてなりません。

本来、植物は腐らない

木村さんは、リンゴの栽培の他にも独学で米の勉強もされていたようです。木村さんが住む東北地方は気候的な問題で、二毛作ができない地域です。そのため、米の栽培についての結果は1年に1回しか見ることができません。しかし、それだと答えがわかるのに何十年かかるかわかりません。

そこで、木村さんは、ガラスのコップを使った試験をすることにしました。有機米(新JAS法認定)と自然栽培米をそれぞれ炊き、別々のコップに入れてそのままにしておく実験です。

すると有機米は2週間で腐り、臭いを嗅ぐと、100人いたら100人が吐くような異臭を出し始めたそうです。一方の自然栽培米は、何の変化もなく、最後はアルコール発酵して酢になりました。

多くの人が、有機栽培で育った農作物は安全だと思い込んでいますが、実はそうではないんですね。

さらに木村さんは、キュウリでも同じような実験をしています。無肥料無農薬で育てたキュウリ、有機栽培のキュウリ、スーパーで売っている肥料も農薬も使った一般的なキュウリの3つを用意し、別々のコップの中に入れて観察しました。

予想からすると、一般的なキュウリが最も早く悪くなりそうな気がしますよね。でも、結果は有機栽培のキュウリが最も早く悪くなり、次いで一般的なキュウリが悪くなりました。一般的なキュウリが腐るのが遅かった理由は、スーパーから肥料や農薬をあまり使わないようにしてほしいと農家に注文があったからだそうです。

有機栽培とかオーガニックとか、そういう言葉を聞くと、健康に良さそうな気がしますが、実態はそうではないということですね。むしろ、人間が考え出したことほど、不自然なものはなく、農作物にとっては、ありがた迷惑でしかないのです。

そして、自然栽培のキュウリはどうだったかというと、2週間たっても腐ることはありませんでした。

そんな馬鹿なと思う人がいるかと思いますが、これが事実なのです。そして、疑っている人も植物が腐らないということをすでに知っているはずなのです。秋が過ぎ冬になると、木々が落とした葉が地面にたくさん積もります。

その落ち葉はどういう状態ですか?

腐ってなんかいませんよね。葉は、夏は青々としていましたが、秋になって赤くなり、枝から落ちると茶色くなり、やがて割れてしまいそうなくらいカラカラになりますよね。

なぜ腐るものと腐らないものが出てくるのでしょうか。自然のものは枯れていきます。人がつくったものは腐っていきます。その違いが現れたのです。(103ページ)

そう、自然に育った植物というのは腐ることなく枯れていくのです。

この文章を読んで、毎年秋から冬になると、たくさんの枯葉や枯草を見ているのに、その事実を見逃していた自分が恥ずかしくなりました。腐った落ち葉なんか見たことないのに、誰かが言い出した植物は腐るという言葉を何の疑いもなく常識としてインプットし、今まで生きてきたんですね。

何かをすることよりも観察することの方が大事な時もある

人間は、何か不都合なことが起こったら、それを何とかして解決しないといけないと思っています。頭の中で想像できることをあれこれと試し続け、以前よりも悪くなってしまうなんてことが何度もあったのではないでしょうか?

そもそも、何かをしないといけないと思うことが間違いの始まりなんですよね。放っておけば、そのうち解決することなんてたくさんあるはずです。

木村さんは、土には自浄作用があると述べています。でも、河岸をコンクリートで固めたりしたことで、その自浄作用が失われています。人間が良かれと思ってしたことが、農業に適した風土を破壊していき、現在では、日本の伝統食を作るのにも海外からの輸入に頼らないといけない状況になっています。

木村さんは、土壌改良のために豆をまくことを提案しています。

空き地があったら豆を植えましょう。金にならなくてもいいから、日本を守るために植えましょう。農家の人は土を守るためにです。自然栽培はすぐに結果が出ません。土づくりのために少なくとも三年かかります。時間はかかりますが、豆は土壌改良につながり、ビールのつまみになります。一石二鳥です。(138ページ)

そして、木村さんは、自然のことを理解するためには、観察することが大事だとも述べています。観察にはとても長い時間がかかります。だから、多くの人はあまり観察せずに、自分の頭の中で想像できることをして余計におかしな方向へと進んでしまうのでしょう。

「リンゴが教えてくれたこと」の中で、酪農家の斎藤晶さんの言葉が紹介されています。

放っておけばどう変化していくかを見る。そこに余計な技術を使わないで、ずっと見ているってことが大事なんですよ。それがみんな、高学歴になるとじっとしておれない。その辛抱強さ、耐えられる人が今いないんですよ(154ページ)

観察するということは、果てしない時間がかかるように思えます。でも、真実を知ることに最も大切なことが観察することであり、そして、結果を出すのに最も早い方法なのかもしれません。でも、変に知識があるとそれができなくなり、なんとも言えない強迫観念から何かをやり始め、さらに答えから遠ざかっていくのでしょうね。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

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