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ウェブ1丁目図書館

読書で得ること感じること。ここはウェブ1丁目にある小さな図書館です。本の魅力をブログ形式でお伝えしています。

部下や後輩のスランプを克服させるためには、なるべく教えないこと

スポーツ

職場で、自分の部下や後輩が悩んでいるのに気づいたことはありますか?

仕事のスランプで悩んでいるのなら、何かアドバイスをしてあげたり、相談にのってあげたりするのが、上司や先輩のつとめと思って、優しく声をかけてあげる人も多いことでしょう。

ところが、ヤクルトスワローズ楽天ゴールデンイーグルスなどの球団で監督をされていた野村克也さんによると、指導者があれこれと口を出すことは、必ずしも選手のためにならないということです。部下や後輩の面倒をみることは、頼れる上司や先輩といったイメージがありますが、実は、それが部下や後輩の力を伸ばさなくしている原因なのです。

問題意識を持たせ目標を自ら考えさせることが大切

野村さんの著書「野村再生工場」によると、人間は失敗して自分の間違いに気づくということです。

これは、その通りでしょう。誰だって、自分のやり方が間違っていたと最も気づきやすい瞬間は、失敗した時ですよね。だから、失敗するまでは、なかなか人の話を聞かないものです。どんなに他にいい方法があったとしても、現状に問題がないと思っているのであれば、真剣に聞く耳を持ちません。

傍から見てると、明らかに非効率な仕事をしていると感じる場合があるかもしれませんが、こういう時にすぐに答えを教えると逆効果になってしまいます。だから、まずは、部下や後輩のなかで問題意識が生まれるようなアドバイスをし、本人に疑問が生まれるように仕向けることが大切です。

すると、「どうしたらいいでしょうか」とコーチに訊いてくるようになる。そのときこそがコーチの出番である。今度は絶対に選手を突き放してはいけない。徹底的に教え込むのである。(19ページ)

部下や後輩が、自分から教えを乞いに来るときは、聞き入れ態勢が整っている状態です。この状態になれば、上司や先輩のアドバイスや教えをしっかりと吸収し、その結果、見違えるような成長を見せることがあります。だから、指導者は、すぐに部下や後輩に教えるのではなく、じっと見守ることが必要なんですね。

ただし、部下や後輩が、間違いに気づき、教えを乞う態勢が整ったとしても、すぐに技術的なことは教えず、自ら取り組もうとする意欲を促すことが必要です。一人前の仕事ができるようになるためには、能動的に取り組もうとする意識が植えつけられていることが重要だからです。

そして、彼等に明確な目標を持たせ、それに向かって、考えながら、失敗しながら進んでいくように仕向けるのが、上司や先輩の仕事なのです。

「自分は何のために野球をやっているのか」ということを明確にさせることが必要なのである。でなければ、人間は弱いものだから、そうそう努力などできるものではない。目標を達成するために「足りないものは何か」「何をしなければならないのか」を考え、課題に対して自ら真摯に向き合える者だけが一流になれるのである。(22ページ)

よく観察して気付かせること

仕事でスランプに陥っている部下や後輩が立ち直るためには、彼等の考え方が変わることが大切です。そのためには、今の自分の考え方が間違っていることに気付かなければなりません。

しかし、自分の間違いは自分では、なかなか気づかないものです。だから、指導者が、彼らに間違いを気付かせてあげることが大切なのです。

プロ野球選手の場合、加齢とともにパフォーマンスが落ちてくるのは当たり前なのですが、本人は、それに気づかないことがあり、昔と同じやり方で試合に出て、結果を残せずにいることがあります。

しっかりと努力をしているにもかかわらず、結果が出ないのであれば、それは、努力の方向が間違っているということ。そこにいかに気付かせることができるかが、指導者の役割です。

では、どうやって指導者は、部下や後輩の努力を正しい方向に向かわせることができるのでしょうか?

それは、「観察する」ことです。

選手たちの隠れた才能や長所を発見し、引き出し、チャンスを与え、それを活かす方法を教えてやらなければならない。それは指導者の使命である。
だから私は、この選手の長所はどこなのか、どこを直せば伸びていくのか、先入観や固定観念を排して徹底的に選手を観察する。
そのうえで、よいところがみつかれば、それを引き出し、活かせる場所を与えるわけだ。(131~132ページ)

ホームランバッターが、いつまでも四番を打ち続けることは難しいでしょう。若い時は、レフトスタンドに放り込めたストレートが、年齢を重ねるごとに、レフトフライになり、空振りするようになっていきます。それにもかかわらず、本人が昔のようにレフトスタンドに放り込むことばかりを意識していたのでは、近いうちに引退ということになるかもしれません。

パワーは衰えたとしても、バットにボールを当てる技術が衰えていないのなら、ホームランを封じてヒット狙いに意識を変えれば、現役生活が延びる可能性があります。

でも、本人は、自分のパワーの衰えに気づいていません。だから、それを他人が気付かせてあげる必要があるんですね。そのためには、指導者がしっかりと選手を観察し、彼のパワーの衰えを気付かなければなりません。そうしなければ、本人はいつまで経っても、パワーの衰えに気付くことなく、やがて、引退していくことになるでしょう。


野村さんは、選手を指導する際にもっとも大切なのは愛情だと述べています。

選手を観察するというのは、その選手をもっとよく知りたいということでもある。そして、それは言い換えれば、どれだけ愛情を持って接することができるかが重要だということだ。(136ページ)

部下や後輩をしっかりと観察するためには、愛情を持って接しなければできません。しかし、上司や先輩だって人間なので、人の好き嫌いはあるはずです。だから、誰に対しても同じように愛情を注ぐというのは難しいでしょう。

でも、普段から部下や後輩を観察する癖をつけておけば、知らず知らずのうちに彼等の長所に気づき、好感を持てる場面というのが増えていく可能性があります。

誰でも、人の欠点はすぐに目について、不快に感じるものです。だからと言って、そこで、観察することを止めてしまうと彼らの長所を見逃してしまいます。部下や後輩よりも人生経験が豊富な指導者が、我慢して彼等を観察し続けることが、人を育てるためには重要なのではないでしょうか?

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