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近代とは会議によって権力をつかむ時代

日本史において、近世は江戸時代、近代は明治時代以降となります。

江戸時代から明治時代への転換は、外見上は、チョンマゲを結わなくなったこと、武士が帯刀しなくなったことということが挙げられます。では、政治的な違いは何かと聞かれて即答できるでしょうか?

これはなかなか難しい質問ですね。

「日本人として知っておきたい近代史 明治編」の著者である中西輝政さんは、「近代とは、権力を『戦場』における勝利ではなく、あくまで『会議』の中でつかむ時代」だと述べています。

江戸時代から明治時代への転換も会議で行われた

江戸時代から明治時代への転換は、1868年1月の鳥羽伏見の戦いから1869年5月の五稜郭の戦いまでの戊辰戦争(ぼしんせんそう)で、新政府軍が勝利したことによってなされたと思いますが、実は、それ以前から明治時代に入っていました。

日本の近代を告げる一番の「決定的な出来事」として、私は迷うことなく、慶応三年(一八六七)十二月九日の一連の政変劇、すなわち天皇を中心とする新政府の樹立を宣言した「王政復古の大号令」と、徳川慶喜の「辞官納地」(官位の辞任と徳川家の領地の返上を要求すること)を決めた「小御所会議」を挙げたいと思います。(42ページ)

この小御所会議で徳川慶喜の辞官納地が決まったことで、徳川幕府は終わっていたのです。

大政奉還岩倉具視大久保利通の思惑は潰れたかに見えたが

小御所会議が開かれる2ヶ月ほど前に徳川慶喜は、政権を朝廷に返上する大政奉還を行いました。これにより、一旦、武力討幕を計画していた公卿の岩倉具視薩摩藩大久保利通の思惑は潰れることになります。潔く政権を返上した徳川慶喜を討伐する口実が無くなったからです。

一方の徳川慶喜には、政権を朝廷に返上したところで、朝廷にその能力がないだろうから、きっと自分に政治を任せてくるに違いないという思惑がありました。この徳川慶喜の思惑通り、政局は土佐藩などが主導する公議政体論が一時的に台頭してきます。それは、徳川慶喜を中心に諸侯が集まって、政治を行っていくという体制です。

しかし、このような政治体制では、今までの徳川幕府と大した違いはありません。岩倉と大久保は、根本から日本の政治体制を変えてしまおうと思っていたので、何とかして公議政体論を崩さなければなりません。2人は、大政奉還がなされる前に密談を繰り返し、武力討幕と天皇を中心とした政治体制を築くための王政復古についての計画を練っていたのです。

その計画を実行に移したのが、大政奉還から2ヶ月ほどたった1867年12月9日でした。

西郷が指揮する薩摩軍を主力とするクーデター部隊が御所の周囲を固める中、御所に参内した岩倉は、満十五歳の明治天皇の御前で決然と「王政復古」の断行を奏上します。かくて明治天皇は、岩倉が大久保や玉松操らと作成した天皇の詔、「王政復古の大号令」を発布されることになりました。(51ページ)

そして、その夜に小御所会議が開かれたのです。

小御所会議には徳川慶喜は出席しておらず、公議政体論を主張する中心人物は土佐藩山内容堂くらいのものでした。会議の序盤は、山内容堂が優勢に会議を進めていきましたが、途中、致命的な失言をしてしまったため、形勢は岩倉具視が主張する王政復古論に傾き始めました。

しかし、それでも会議はなかなか決着せず、深夜にまで及び、いったん休憩となります。その休憩の時間に別室で控えていた西郷隆盛が、岩倉具視のもとへ行き、「短刀一本あれば片づく」と言ったそうです。自分の身の危険を察知した山内容堂は観念し、休憩後の議論で、徳川慶喜の辞官納地が決定しました。

そして、明治天皇を中心とし、新たに総裁、議定、参与を設置する政治体制が確立します。これにより、幕府組織はもちろんのこと、摂政や関白も合理性を失いました。

過去の政権交代とは異なる明治時代の幕開け

江戸時代以前の政権交代が、このような会議によってなされたことは、あまり例がないのではないでしょうか?

徳川家康が豊臣家を滅ぼしたのは武力でしたし、本能寺の変明智光秀が武力をもって織田信長を倒しています。鎌倉幕府の滅亡も後醍醐天皇足利尊氏の武力によって行われています。平家も源氏の武力によって壇ノ浦で滅ぼされています。

戦争ではありませんが、大化の改新中大兄皇子中臣鎌足蘇我入鹿を暗殺しているので、やはり武力による政権交代ですね。

こうやって日本の歴史を振り返ると、明治維新は、会議によって実現したものであり、それ以後の政治も会議を中心として行われているので、中西さんが言うように近代とは、会議によって権力をつかむ時代だと言えますね。

日本人として知っておきたい近代史(明治篇) (PHP新書)

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