我々国民の生活に大きな影響を与える政治。
しかし、政治にはよくわからないことが多いですよね。詳しいことを知りたければ、大学に通って勉強すればいいのですが、そんな時間がある社会人はなかなかいません。だから、政治関係の本を読むのが、次善の策ということになります。しかし、そんな暇もないという場合には、ネットで気になることだけ検索して理解するということになるでしょう。
僕は、自分の生活に深くかかわっていることから、政治には興味があります。でも、詳しくはありません。なので、少しでも、政治のことがわかるように三宅久之さんの「ニュースが伝えない政治と官僚」という本を読みました。
出版されたのが2009年の民主党が政権をとった直後なので、古い部分はありますが、それでも、政治に関する基本的な疑問点に答えてくれる内容となっていました。
なぜ予算がなかなか決まらないの?
2013年にアメリカで予算が決まらないということがあり、大きな話題となりました。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?議員たちは、国民の生活のことなんて何も考えていないんじゃないかといった疑問がわいてきましたね。
同じようなことは日本でも起こっています。
国の予算は予算委員会で決定されますが、4月4日までに決まらなかった場合には、暫定予算が組まれます。予算が決まらなければ、行政サービスに支障をきたすことは容易に想像できます。だから、国民のことを考えているのなら、まず、予算を決定して欲しいですよね。
予算委員会で予算がなかなか決まらないのは、それが、国会中継の華だからです。
予算委員会は国家運営にとって重要な場です。しかも、首相が答弁する審議には、ほぼ確実にテレビ中継が行われます。それゆえ、国会議員は、それ以外の場では原稿を棒読みしていたとしても、予算委員会では丁々発止の質疑応答を行い、自分の能力を広く国民にアピールしようとするんですね。
さらに予算委員会は、予算を審議する以外にも、外交や内政など、あらゆる重要事項が審議されます。だから、予算に関係のないこと、例えば、個人のスキャンダルなんかも飛び出してくるんですね。
野党議員が、個人のスキャンダルをネタに閣僚を攻撃。それが原因で審議が長引き、4月4日までに予算が決まらず、暫定予算が組まれれば、その時点で内閣の無能ぶりを世間に知らしめることができます。
そして、野党議員は、「俺の実力はどんなもんだ」と言わんばかりに審議終了後にインタビューを受けているわけですね。
参議院は不要か?
簡単にいうと、衆議院で可決した内容をもう一度慎重にチェックするのが、参議院ということになります。しかし、衆議院で可決、参議院で否決された法案なんかがあっても、最終的には、衆議院の議決が優越する原則があるので、衆議院で可決された内容に決まってしまいます。
予算案、条約承認、首相指名選挙では、参議院で否決されたり、一定期間のうちに議決されなかったり、両院協議会でも結論が出なかった場合には、衆議院の議決が国会の議決とされるのだ。
その他の法案も、参議院で否決されたのちに衆議院にもう一度かけられて、そこで三分の二以上の賛成が得られれば可決されてしまう。(74~75ページ)
参議院無用論がとなえられる背景には、こういった理由があるんですね。昨今、国会議員の数を減らすべきだという意見がありますが、そのやり玉にあげられるのが参議院であることが理解できます。
しかし、参議院をなくしてしまうと、その時の風潮に流されたり、与党が数の論理に頼んで法案を可決したりすることに「待った」をかけることができなくなります。小泉郵政選挙の大勝や民主党の圧勝の時のように風が吹いて、ひとつの偏った方向に動いてしまうことは、大変危険です。
参議院は、「良識の府」といわれ、任期が六年間あることと、衆議院のような、任期途中での解散がないことから、長期的な視野に立った議員活動を行えるということが長所とされている。(中略)
こう考えてみると、参議院は、それなりの存在価値を持つ議院であり、いきなり、なくしたほうがいい、というものではないようだ。(75~76ページ)
僕は、参議院は残しておいた方がいいと思ってます。衆議院だけだと、やっぱり怖い部分がありますからね。参議院の議員数については、何百人も必要ないのかもしれませんが。
議員宿舎はなぜあるのか?
東京の一等地に国会議員用の議員宿舎があります。
近隣の賃貸マンションの家賃の相場が50万円程度とされるようなところでも、国会議員は、10万円未満で住むことができます。だから、マスコミや野党議員が、税金の無駄使いだとか、国会議員を優遇しすぎだとか、よく批判していますよね。
ところで、こんなに国民から批判されている議員宿舎が、なぜあるのでしょうか?
そもそも、議員宿舎が作られた理由は、戦後、東京が見渡す限りの焼け野原となり、都心では市民が焼け跡にバラックを建てて、どうにか雨露をしのいでいるような状況だったので、地方選出議員が住むところを見つけること自体が困難だったためだ。(中略)
戦後まもなくのころの宿舎は、議員一世帯に対して一0畳くらいの部屋と、室内に台所が設置されているだけというシンプルなものだった。議員たちは、そんな部屋に家族と雑魚寝していたのだ。(79~80ページ)
現在は、東京でマンションを探すことは簡単にできます。だから、地方出の議員が住む場所に困るなんてことはありません。議員宿舎は、その役目を終えたと言えそうです。
それなのに未だに議員宿舎があるということは、何か裏の事情があるのかもしれませんね。
ちなみに国会議事堂と議員宿舎を結ぶシャトルバスも運行されているそうですよ。利用者はほとんどいないとのこと。仮に利用者が多かったとしても、国会議員が多数乗っているバスを走らせるのはどうなんでしょうか?万が一、テロリストが襲撃した時、国を動かしている多くの国会議員が犠牲になる危険があるので、好ましくないように思えるのですが。
国会議員のテレビ出演料はいくらなのか?
最近では、国会議員がトーク番組に出演していることがよくあります。中には、バラエティー番組に出演している議員もいますよね。
国会議員のテレビ出演料は、さぞかし高額なんだろうなと思っていましたが、意外と少なく相場は3万円程度とのこと。知名度のある議員や大物政治家は、それよりも高そうな気もしますがどうなんでしょうね。
3万円が高いと感じる人もいるでしょうが、政治や経済の評論家、大学の教授が、その10倍ほどの出演料ということですから、かなり少ないことがわかります。
少額の出演料にもかかわらず、国会議員がテレビに頻繁に出演するのは、その影響力が絶大なことが理由です。視聴率が1%の番組だったとしても、全国放送なら120万人に自分の存在と政治理念をアピールできるのですから、泥臭く街頭演説するよりも有効といえるでしょう。
そういった理由があるから、テレビ局側も国会議員の出演料を安くしているんですね。ちなみに評論家が国会議員になった時も出演料は3万円程度のようです。
他にもいろいろと政治に関する疑問点はあるでしょう。
ちょっとした疑問なら検索して調べれば解決しますし、毎日、新聞を読んだりニュースを見たりしているうちに少しずつ知識はついてきます。
政治の全体像を大雑把につかみたいと思う方は、一般向けに書かれた書籍を1冊読めば、ある程度は理解できますよ。