ウェブ1丁目図書館

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使わない学歴は滞留在庫と同じ

以前ほどではありませんが、日本は学歴社会と言われています。

一流大学卒業者が、職場で出世しやすい構造は、程度の差はあれ昔も今も同じです。もちろん、高学歴の人は相対的に優秀である場合が多いので、出世した優秀な人の学歴を調べてみると高学歴だったということはあるでしょう。

しかし、新入社員として採用された時から、高学歴だと出世コースが約束されていることは好ましいとは言えません。

学歴は資産

ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんは、仕事において学歴は無用だと述べています。「盛田昭夫語録」にも、そのことが掲載されています。

現在のように経営環境が不安定な時代には、企業は激しい過当競争にさらされています。そのような経営環境で企業が生き抜いていくためには、外部環境の変化に対応していく力が必要です。しかし、学歴は、教育を受けた場所をあらわすものであって、将来やってくる不安定な経営環境に順応する力を保証するものではありません。

「その人が、どの大学で、何を勉強してきたかは、あくまでもその人が身につけたひとつの資産であって、その資産をどのように使いこなして、どれだけ社会に貢献するかは、それ以後の本人の努力によるものであり、その度合いと実績とによって、その人の評価がきめられるべきである」
(107ページ)

学校で優秀な成績を修めた人が、社会でも俊才であるとは限りません。

学校で身につけた教養は、その人の資産になります。しかし、資産は使われてこそ役立つものであり、資産を使う場がなければ何の意味もありません。

会社は遊園地でもなければ学校でもない

盛田さんは、「楽しい職場」という言葉に疑問を持っています。

仕事が楽しいということは、労働者にとってやりがいになります。その仕事が楽しくて楽しくて一生続けたいと思うことは、とても素晴らしいことだと思います。しかし、「楽しい職場」と「楽しい仕事」は同じではありません。

「会社は楽しいところではない、根本的なところを間違わないでもらいたい。会社というのは働きに来るところだ。働いてお金を儲けて、それで楽しく会社外で暮らしてもらいたいのである。遊園地みたいなところである必要はない」
(115ページ)

和気あいあいとした職場を理想と思っている人は多いでしょう。つまらない職場よりも楽しい職場の方が良いと誰もが考えるに違いありません。

しかし、職場は仕事をする場所なので、遊びと同じ楽しさをそこに要求するものではありません。そこを理解していない経営者は、仕事も遊びもみんなで仲良くすることを良しとし、社内で平日と休日の垣根がなくなっていきます。

それが、休日出勤やサービス残業を生み出している原因なのではないでしょうか?

仕事は仕事、遊びは遊びと割り切ること。楽しい職場作りが楽しい仕事に繋がるわけではありません。仕事の楽しさとは、みんなで仲良くすることではなく達成感によって生まれるものなのです。


また、盛田さんは、職場は学校ではないとも述べています。

新入社員が入ってくると、多くの会社が新入社員研修を行います。しかし、会社は利益を追求する集団であり教育をする組織ではありません。教育は授業料を払って受けるものであり、給料をもらいながら授業を受けるものではないのです。

「本日から社員になった。明日からはひとつ自分自身で考えながら仕事をしてくれ。先輩から教えを受けようと思ってはならない。なぜなら会社は学校ではない。先輩が仕事を教えるという義務はないし、責任もない。先輩の教えを受けることを期待してはならない。仕事のやり方について上司の指導を受けるという期待は絶対に捨ててもらいたい」
(118ページ)

会社が利益を上げるためには、即戦力の人材を雇わなければなりません。特に経営環境が不安定な現代では、社員教育を行っている時間はないのです。今教えていることが、明日には何の役にも立たなくなることだってあるのですから、教える方だって変わっていく必要があります。

和気あいあいとした職場で、先輩や上司が後輩に仕事を教えている。

そんな会社は、今後、生き残っていけないかもしれません。

滞留在庫は評価を引き下げる

先ほども述べましたが、学歴はその人の資産となります。しかし、資産とは、将来の収益獲得に貢献するものですから、学歴が会社の収益獲得に役立たないのであれば、学歴をその人の評価基準とすべきではありません。

企業が取り扱っている商品が長期間売れない状況が続けば、それを滞留在庫とみなします。

滞留在庫は、将来の販売可能性が極めて低いので評価を切り下げて損失計上しなければなりません。これは、学歴にも当てはまることです。どんなに高学歴だったとしても、その学歴が会社の収益獲得に貢献しないのであれば評価を切り下げる必要があります。

学歴に必要以上に多くの給料が払われているのなら減らさなければなりませんし、能力以上の役職に就いている場合には降格しなければなりません。場合によっては解雇ということもあるでしょう。


学歴は一種の超過収益力であり、その人の「のれん」として評価すべきものです。長期的に会社の収益獲得に貢献してくれることが期待できますが、その超過収益力が失われた時、土地や機械設備などの固定資産と同じように減損処理しなければなりません。

しかし、多くの会社がリストラに後ろ向きですし、解雇に対して申し訳ないという気持ちになります。

そうなるのは、「楽しい職場」作りに力を入れていたからであり、従業員が仕事のやりがいや達成感を味わえるように企業がしてこなかったからではないでしょうか?だから、解雇を退学と同じような意味でしか捉えられず、後ろめたさや憐れみを感じるのだと思います。

人間の努力を失わせるおかしな変動相場制

現在の為替相場は変動相場制です。

以前は、為替相場が固定されていましたが、昭和48年に国際通貨全てが変動相場制に移行しました。盛田さんは、変動相場制によって各国の競争力が均衡化されると予測していました。しかし、現在の変動相場制は、製造業者が作っている製品の価格を自分たちでコントロールできない不合理な状態を生み出しています。

それは、いわゆる「マネー商人」が誕生したからです。

通貨の変動により生じた利ザヤを狙って、ただ利益追求のために通貨の売買が横行し、通貨の持つ価値とは違った相場が生まれるようになったのだ。労働という努力の結果もたらされるべき利益が、為替の操作により、巨額の利益が瞬時に生み出されるのである。
(161~162ページ)

もはや、為替相場の変動は、貿易よりもマネーゲームによって起こっていると言っても過言ではないでしょう。中央銀行が為替介入して相場を動かすことだってあります。

このような状況に虚しさを感じる人もいるでしょう。特にメーカーで働く高学歴の人ほど、やるせない気持ちになるのではないでしょうか?


売買を仲介する金融機関が手数料収入を得て、最も儲かる仕組み。

その仕事に学歴は必要ないのですが、高学歴の人ほど、金融機関への就職を希望します。

使わない学歴は単なる滞留在庫です。いずれ減損処理される日が来るでしょう。